「3年で結果が出なければ、競技をやめようと思ってました」。そう話すのは今年で競技歴3年目の山本颯(やまもと・はやて/33)さんだ。競技を続けるかやめるかの分岐点となる年だが、広島で開催された『JBBF中四国選手権大会』メンズフィジーク172cm 以下級で、見事優勝に輝いた。
昨年7位だった中四国大会からの飛躍、そして「思い入れが強い」と話していた地元・徳島で行われる徳島大会(2024年7月28日開催)でも優勝した山本さん。彼の身体の強みは、部の厚み中腕の大さがありながら、ウエストラインが締まっているためアウトラインが美しいところだ。
平日は郵便局の局長として勤務し、勤務後の夜に24時間ジムへ。毎日のように通うため、トレーニングウェアに着替えてジムへ行くのは“第2の出勤”のようなものだ。トレーニングにのめり込んだきっかけは、ダンペルプレスがまったく出来なかったから。
「上がるだろうと思っていた14kg のダンベルが全然上がらなくて、めちゃくちゃ悔しかったんですよね」と、当時を思い出す山本さん。その悔しさをバネに、ひたすらダンベルプレスとベンチプレスをやり込んだ。胸の種目をメインにトレーニングし続けた結果、盛り上がるような育ち方をした大胸筋。また、副産物として腕にもしっかり筋肉がついた。同じジムにいたフィジーク選手に誘われ、競技の道に入ったのはトレーニングを始めて3年目のこと。
競技をやるからには3年以内に結果を出すことを目標に、日々筋トレに励んだ。身体を作るために大切にしていたのは、「重量から逃げないこと。自分が扱える重量をどんどん伸ばし、高重量をぶん回すことを意識して、ひたすら取り組んできました」と話す。しかし、考えなしでトレーニングしているわけではなく、感覚を大事にしているそうだ。
「感覚派なので、筋肉に負荷がかかっているか抜けているか、ものすごく意識しています。言語化が苦手なんでうまく説明できないんですが、ちょっとした手首の角度で腕に刺激が入っているとか抜けたとかが分かるので、トレーニング中はずっと負荷が抜けないようにしています」
ただ、これも最初からできたわけではないそうで、細かな部位にまで狙いを定められるようになるまで時間はかかったという。「わからないから考えるのをやめるのではなく、意識の訓練」が重要なのだ。今年からは身体のメンテナンスも取り入れるようになり、「減量期でも疲労が溜まっておらず、去年よりジムも行けていますし、コンディションもサイズ感も少しずつ上がっている感覚がある」と山本さん。
現時点で残す大会はオールジャパン選手権のみ。「来シーズンに向けて、脚の強化・肩のサイズアップ・より腕の丸みをつける、を目指しています」と話すように、すでに気持ちは未来に向いている。「3年で結果が出なければ競技をやめる」。そう話していた山本さんの競技への道は、これからも続く。
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピンク講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
文・撮影:小笠拡子