昨年、安井友梨(やすい・ゆり/40)選手はシーズン開幕直前に左足指基節骨骨折という重傷を負った。しかし、試合には強行出場を続け、『IFBBアーノルドクラシックヨーロッパ』のフィットモデル35歳以上級、一般172㎝超級、そしてオーバーオールで優勝。さらには『IFBBフィットモデルワールドカップ』でも一般172㎝超級で勝利。完治を待たずしてシーズンを完走し、2つの国際大会で優勝した。そして迎えた今シーズン。9月1日に仙台で開催された、『JBBFオールジャパン フィットモデル チャンピオンシップス』。傷が癒え、心の笑顔を取り戻した安井選手の姿がそこにはあった。
「万全の状態でステージに上がれるだけで、すごく幸せです。今日は『優勝』とか『勝ち』とか『負け』とかいったものは関係なく、この幸せの気持ちをみなさんに届けたいという気持ちでステージに立ちました」
ビキニフィットネスのチャンピオンとして広く認知されている安井選手であるが、この「フィットモデル」というカテゴリーは、彼女の中では「ビキニフィットネス」とは異なる意味を持っている。「フィットモデル」は、チャンピオンとしての使命を背負って「出なければいけない」ものではなく、あくまで「出たいから出る」競技。この、「出たいから出る」という気持ちで臨んだからこそ、昨年は世界チャンピオンになれたのではないかと分析する。
「フィットモデルという競技が大好きだから、世界一になれたのかなと思います。この世界一になるまでに、私は10年かかりました。ここまで応援してくださった方々への感謝の気持ちを込めて、一歩一歩、ステージを踏んでいました」
新たなシーズンを迎えるにあたっては、コスチュームを新調したという。しかしこの日、ステージに登場した彼女が身に着けていたのは、昨年アーノルドクラシックとフィットモデルワールドカップの舞台で着用した赤のドレスだった。
「世界一になったときのステージを日本のみなさまに、まずお見せしたかったんです。みなさまに感謝の気持ちを届けてからでないと、2024年のシーズンはスタートできないと思っていました」
オールジャパンフィットモデル選手権は今年で163㎝超級4連覇、各クラスの優勝者で争うオーバーオール(無差別級)では3連覇を達成。競技を牽引し続けてきた絶対女王は、軽やかで優雅な足取りで12月に東京で開催される世界選手権まで駆け抜ける。
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピンク講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
文:藤本かずまさ 撮影:中島康介