「3年って節目かな、と自分の中で思っていたんです。今年がその3年目でした。このような結果をいただけたことは、本当に驚きと同時にありがたく思っています」
9月21日(日)、兵庫県・神戸芸術劇場で開催された『オールジャパンフィットモデル・ウェルネスチャンピオンシップス』(以下、オールジャパン)。「フィットモデル163cm以下級」で優勝に輝いた関裕美(せき・ひろみ/28)選手は、冒頭のように話す。普段は家業の鉄工所で勤務。事務作業だけでなく工場作業もよくあるので、顔や手にペンキがつくことは日常茶飯事だ。競技を始めたのは3年前、初年度からオールジャパンに出場するトップ選手の一人だが、同大会では初優勝である。
1週間という短期間が「救い」となった
この日の1週間前、9月14日(日)は、岩手県で『オールジャパンフィットネスチャンピオンシップス』が開催されていた。この大会に関選手は「ビキニフィットネス」カテゴリーで出場。しかし、結果は振るわなかった。
フィットモデルのオールジャパンまで1週間。この短さが、関選手にとってはある意味「救い」となった。
「多分1週間後に大会がなかったら、そのまま落ち込んでいたと思います。エントリー表も出ているし欠場はしたくなかった。また、15日の月曜日にドレスが届くタイトなスケジュールだったので、ビキニからフィットモデルに気持ちを切り替えました」
いつもは大会1週間前でもトレーニング強度を下げないそうだが、今回は強度を下げてポージングの時間をしっかりと設けた。「上を狙いにいこうとせずに、仕上がった状態でステージに立つ」ことを第一に置いたという。
気持ちの切り替えが功を奏したのか、体重は1kg落ちたそう。「多分、疲労が抜けたんだと思います」と分析する。
「昨年のフィットモデルでは4位、1週間前のビキニでも予選落ち。守りに入るというより、挑戦者としてリラックスした気持ちで臨めたのが大きかったですね」と、関選手は笑顔を見せた。
実家での優勝祝いご飯は「カップラーメンでした(笑)」
とはいえ、1週間前の大会が少しトラウマになっていたことは間違いない。「審査員のコールで呼ばれないことの怖さ」が正直あった。
「今までの大会は楽しいって思っていたんですけど、初めて『呼ばれなかったらどうしよう』という恐怖が芽生えましたね。だからこそ、今回の優勝はうれしさと同時にホッとしました」
うれしさがグンと込み上げてきたのは大会後、実家に帰ってからだったという。両親から「努力が報われて良かったね」という言葉が、うれしさのスイッチを押した。特に父親が非常に喜んでいて、「娘が日本一になった」と自慢しているそうだ。
優勝後の食事も実家で食べたそうだが、内容は「カップラーメンとご飯、冷凍餃子でした(笑)」と関選手。大会帰りの車の中で、「カップラーメンと一緒にご飯が食べたいから、お米を炊いておいてほしい」と連絡を入れたほど。優勝祝いに豪華な食事もいいが、こういう食事も美味しいし幸せを感じるご褒美だ。

優勝後、実家に帰って食べたもの
関選手が考えていた「3年目」という節目に頑張ってこれたのは、周りのサポートがあったからこそ。特に、家族の応援とサポートは心強かった。
「大会1カ月前ぐらいから、トレーニングやポージング練習のために先に帰らせてもらったりする日が増えていました。大会時期によって競技を優先させてくれる理解と応援がなければ、やり遂げられなかったと思います」
ステージに立つときは1人だが、それまでの道のりには応援して支えてくれる人たちがいる。関選手の優勝の背景には、表舞台には出てこない人たちの想いもきっとあるのだろう。
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピンク講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
取材・文:小笠拡子 撮影:中島康介
おがさ・ひろこ
ボディビルにハマり、毎年筋肉鑑賞への課金が止まらない地方在住のフリーランスライター。IRONMAN・月刊ボディビルディング・Woman’s SHAPEなどで執筆・編集活動を行う。毎月コツコツ筋肉鑑賞貯金をして、大会観戦を楽しんでいる。
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