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EZバーvsストレートバー | 上腕二頭筋に最適なバーベルはどっち?

上腕二頭筋のワークアウトが好きだという人は多い。中でも特に人気なのはバイセップスカールだ。 この種目はバーベルを使って行われることが多いのだが、ストレートバーを用いる人もいれば、W字にわん曲したEZバーを用いる人もいる。実際のところ、どちらがより効率よく上腕二頭筋を刺激し、筋発達を促してくれるのだろうか。今回はストレートバーとEZカールバーの特徴や使い分けについて解説していきたい。

<本記事の内容>
バーベルカールのやり方について
二頭筋をより収縮させるには?
バーベルカールはEZバー?ストレートバー?
二頭筋トレーニングの組み方について

 

バーベルカール

上腕二頭筋の構造

上腕二頭筋は文字どおり2つの筋肉で構成されている。ひとつは長頭で、肩甲骨関節上結節と呼ばれる肩甲骨上部に始点を持ち、上腕骨骨頭をまたいで橈骨に終点している。もうひとつの短頭は、肩甲骨上部の烏口突起から始まり、長頭と同じ腱を共有して橈骨に終点している。

終点部の腱は肘関節をまたいでいるため、肘の曲げ伸ばしによって上腕二頭筋の長頭と短頭は収縮したり伸びたりする。そのため、バイセップスカールの動作はまさに上腕二頭筋を刺激する種目なのだ。

カールの動き

カール動作を細かく見てみよう。
①スタート地点では伸びていた肘関節が、動作の開始とともに少しずつ屈曲していく。
②肘の屈曲に伴って前腕が肩方向に引き上げられ、上腕二頭筋が収縮する。こうして肘が完全に屈曲すると、上腕二頭筋は完全に収縮する。
③上腕二頭筋が収縮することで、いわゆる力こぶが作られる。
④上腕二頭筋の完全収縮地点から、少しずつ肘関節を伸ばしてスタート地点に戻る。前腕の位置が完全にスタート地点まで戻ると、上腕二頭筋は伸展された状態になる。
カールの動作はこの①~④を連続して行ってセットを完了させる。

上腕二頭筋を収縮させるもうひとつの動作

先に解説したカールの動作は上腕二頭筋を収縮・伸展させるものだが、もうひとつ、上腕二頭筋を収縮させる動きがある。それは手首を外旋させることだ。例えば次のような動作を行ってみるとわかりやすいはずだ。
①両腕を体の横にまっすぐ伸ばし、腕と床が水平になるようにする。このとき、手のひらは下に向けておく。
②腕を真横にまっすぐ伸ばしたまま、手首をひねって手のひらを上に向ける。これが手首の外旋である。
③手首を外旋させることで上腕二頭筋は収縮する。つまり、肘を伸ばしたままでも手首の外旋動作によって上腕二頭筋を収縮させることができるのだ。

カールで比較するストレートバーとEZバーの違い

EZバーでカールを行うと、手首はわずかに回内するので、手のひらがやや内側に向いた状態での動作になる。その理由は、EZバーの形状がW字になっているからだ。一方、ストレートバーでカールを行うと、フィニッシュでは手のひらは完全に上(手前)を向く。ストレートバーとEZバーとでは、バーを握ったときの状態が異なることをまずは確認しておこう。

EZバーを理解しよう

EZバーの長所と短所

W字の形状をしたEZバーは、バイセップスカールの際に手首や肘関節への負担を軽減するために考案されたものだ。関節への負担が少なければケガのリスクも減り、効率よく上腕二頭筋を刺激することができる。

また、EZバーはナローグリップにも対応していて、いずれの手幅で握った場合でも、約45度の角度に手のひらを回内させた状態で動作を行うことができる。

EZバーでのカールは上腕二頭筋を効率よく刺激することができるのだが、実はストレートバーを使ったカールのほうが上腕二頭筋の発達効果は高い。というのも、ストレートバーでは手首が外旋するので、それが上腕二頭筋により強い収縮感をもたらすからだ。

手首の外旋+カール動作によって上腕二頭筋は強い刺激を受け、肥大のための反応を起こすわけである。

それに対して、EZバーは手首を外旋させないので、上腕二頭筋を収縮させるのはカール動作だけということになる。

そうなると、EZバーよりもストレートバーを選択したほうがよさそうだが、実はそうとも言い切れない。人によっては、ストレートバーでカール動作を行うと手首や肘、肩関節などに痛みが起きたりするからだ。そのような人がEZバーに持ち替えてカール動作を行うと、痛みを避けながらバイセップスカールで追い込むことができるようになる。

確かにEZバーのほうがやや効果は下がるかもしれないが、ケガをしたり、痛みを我慢しながら行うよりははるかに効果的だ。また、リハビリ中の人にとってもEZバーを使った動作は安全なのである。

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EZバーカールの基本動作

EZバーでのバイセップスカールは次のような手順で行う。これは上腕二頭筋の長頭と短頭を均等に刺激するやり方だ。
①EZバーを両手で握り、まっすぐに立つ。W字の外側の部分を握る。手首はわずかに回内しているはずだ(45度程度)。
②肘を体側につけて脇を締める。動作中、肘はできるだけ体側に固定しておく。
③ゆっくりと肘を曲げながらバーを肩方向に引き上げて、上腕二頭筋を収縮させる。
④上腕二頭筋が完全に収縮するまでバーを引き上げ、トップポジションの状態を2秒ほど保つ。
⑤その後、ゆっくりと肘を伸ばしながらバーを下ろしてスタートポジションに戻る。
⑥上体を前後に揺するなどして反動をつけないようにしよう。
⑦手首は常にまっすぐに伸ばした状態を保つようにする。

【EZバーカールのバリエーション1】
EZバーカールの基本動作を理解したら、クロースグリップでもやってみよう。基本的な動作は同じで、クロースグリップではW字の内側のわん曲部分を握って動作を行う。クロースグリップでのカールは上腕二頭筋の長頭をより強く刺激するので、ピークを強調するのに効果的だ。

【EZバーカールのバリエーション2】
肩幅より広くバーを握るワイドグリップで行えば、上腕二頭筋の短頭を強く刺激することができる。

【EZバーカールのバリエーション3】
バイセップスカールはケーブルを使って行うこともできる。プーリーを低い位置にセットし、ケーブルにEZバーのアタッチメントを取り付けて行えば、EZバーケーブルカールを行うことができる。ケーブルを使うメリットは、スタートからトップポジションまで一定の負荷がかかり続けるという点だ。従来のバイセップスカールに飽きてしまったら、ケーブルを使ったやり方に切り替えてみると新鮮な刺激が得られるはずだ。

ストレートバーを理解しよう

ストレートバーの長所と短所

ストレートバーで行うバイセップスカールは、肘の屈曲によるカール動作に加えて、手のひらが真上に向くことで上腕二頭筋の収縮がより強く得られる点に最大の長所がある。ただし、ストレートバーでカールを行うと、トップポジションに近い可動域で手首にトルクがかかり、関節への負担となって違和感をもたらす場合がある。人によってはこれが痛みとなって感じられることもあるが、逆に何の痛みも違和感もないという人もいる。

痛みがあるのにストレートバーでのカールを無理に続けてしまうと、最悪、腱の断裂を招くことにもなるので十分に注意しよう。

基本のストレートバーカール

①真っすぐに立つ。アンダーグリップで、肩幅程度の手幅でストレートバーを握る。スタートポジションでは手のひらは前方を向いている。
②脇を締め、肘を体側に固定する。
③上腕は終始固定し、バーベルを肩に向けてカールさせながら上腕二頭筋を収縮させる。
④上腕二頭筋が完全に収縮するまで肘を曲げ、トップポジションの状態を2秒ほど保つ。
⑤その後、ゆっくりと肘を伸ばしてスタートポジションに戻る。
⑥上体を前後に揺すって弾みを付けないこと。
⑦手首は常にまっすぐに伸ばした状態を保ち、手前に屈曲させたり、背屈させないこと。

ストレートバーカールのバリエーション

EZバーカールと同じように、以下の3つのバリエーションで行ってみよう。
●クロースグリップ
●ワイドグリップ
●ケーブルマシン

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筋電図実験では効果に差はない?

EZバーとストレートバーの違いが理解できたところで、ではどちらのほうが自分に適しているのだろうか。原則としては痛みがないやり方を選ぶのが無難であるため、多くの人にとってはEZバーを選んだほうが間違いはないだろう。もちろん、どちらも痛みがないというのであれば、より効果的なストレートバーでのカールを積極的に行うといい。それでも、刺激をマンネリ化させないためにも定期的にバーを使い分けるのが賢明だ。

ここでEMGを使った実験を紹介するので参考にしてほしい。この実験では、上腕二頭筋とその深部にある上腕筋にEMGを取り付け、ストレートバーとEZバーを使ってカールを行った場合の筋電図の違いが確認された。

実験の結果、ストレートバーとEZバーとでは、上腕二頭筋と上腕筋への刺激度に若干の差が見られたものの、得られる筋発達の程度はほとんど同じであると推測された。そのため、どちらを選択するかは、その人にとって心地よく使えるか否かで判断すればいいのではないかということだ。

バイセップスカールで痛みが起きる原因

バイセップスカールで痛みが起きる場合、以下の事柄が原因になっていることが多いので確認してみよう。

①実力以上の高重量を使いすぎている

ウエイトトレーニングを続けていれば誰だって高重量に挑戦したくなる。高重量を扱うことで筋力の伸びや筋量アップが得られ、それこそがトレーニングの醍醐味であると認識している人は多いのだ。ただし、それが痛みやケガを引き起こしているとしたらどうだろうか。高重量にこだわりすぎた結果、取り返しのつかないケガを負ってしまえばトレーニングの継続に赤ランプが点灯してしまう。

高重量を用いるだけがトレーニングではない。正しいフォームで行うことの重要性をしっかり理解し、それが維持できる範囲での重量を選択していこう。

適切な重量を扱っている限り、手首や肘などを痛めるリスクは限りなく低くなるはずだ。しかも、正しいフォームを維持できていれば、対象筋を的確に刺激できるので筋発達につなげることができる。

②無意識のうちに手首を曲げている

バイセップスカールでは手首はまっすぐ保ったほうがいいのだが、多くの人が無意識のうちに手首を曲げてしまっている。特にトレーニング歴が浅い人、あるいは実力以上の高重量を扱っている人などは手首を手前に曲げてしまっていることが多く、それが腱に大きな負担をかけて痛みの原因になることもある。このことによる痛みは手首だけにとどまらず、肘関節の違和感につながることもあるので十分に注意しよう。

③バーを強く握りすぎている

バーを強く握りにしめた状態でバイセップスカールを行うと、手首への負担が増してしまう。というのも、強く握りしめた状態は手のひらの屈曲筋を過剰に刺激することになるからだ。また、バーを強く握りしめることは肘関節の痛みを招くこともある。

④特定の器具に執着しすぎている

EZバーやストレートバー、あるいはその他の器具やマシンを選択できる環境にあるのに、ひとつのやり方に固執してバイセップスカールを行っている人もいるようだ。

ひとつの種目にこだわってしまうと、毎回決まった刺激が上腕二頭筋や上腕筋にかかることになるため、それが痛みを引き起こす原因になることもある。

種目にバリエーションを持たせることは筋発達を促すために大切なことだが、同時に、特定の箇所に刺激が集中してしまうのを避けるのにも役立つのである。特にバイセップスカールの場合、特定のバーに執着してしまうと手首や肘関節の一点に負担がかかりやすくなる。そういったことからも、できるだけバリエーションを持たせて、定期的に種目を変えることを勧めたい。

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上腕二頭筋のワークアウトについて

上腕二頭筋は、様々な部位のワークアウトで間接的な刺激を受けている。つまり、上腕二頭筋をダイレクトに刺激しなくても、大筋群を補助する筋肉として絶えず働いているのである。

上腕二頭筋のワークアウトでは、そういった点を考慮してトレーニング頻度や量を決めていく必要がある。そうすることでオーバートレーニングやケガを回避することができるのだ。

例えば背中のためのロウイング系種目をはじめ、多くの多関節種目で上腕二頭筋は補助筋として働いている。実際、背中や胸のワークアウトで計画的に使用重量を増やすことに成功している人は、知らず知らずのうちに上腕二頭筋の筋力が向上し、筋肥大も起きているはずだ。

ならば、多関節種目をやっていれば上腕二頭筋の種目は不要ということだろうか。そうではない。上腕二頭筋だけをアイソレートして刺激するような種目もまた、完成度の高い上腕を作り上げるためには必要なのである。

特にどの部位も形良く、バランスを取りながら発達させることが求められるボディビルダーの場合は、必ずと言っていいほど上腕二頭筋のワークアウトはスケジュールに組み込まれている。

大筋群の発達と腕の発達は比例していることが多い。つまり、上腕二頭筋のワークアウトは見栄えのためだけでなく、大筋群の発達を促すためにも不可欠だと理解しておいてほしい。

まとめ

同じバイセップスカールでも、ストレートバーかEZバーかで強調される要素は異なる。より強い収縮感が得たいならストレートバーがおすすめだ。EZカールバーは手首関節への負担が少ないため、可動域を広げることができ、それによって強い刺激を生み出すことができる。

どちらのほうが優れているというわけではないので、どちらに重点を置きたいかは人それぞれだろう。結局のところ、自分にとってやりやすいかどうかで決めればいいのである。

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文:Sarah L Chadwell, NASM-CPT 翻訳:ゴンズプロダクション

Sarah Chadwell
プロのライター、フィットネスライフ提唱者、パーソナルトレーナー、グループワークアウト・インストラクター、ナチュラルトレーニー、ボディビルダー、ビキニアスリート、フィギュアアスリート

@参考文献
Marcolin, Giuseppe et al. “Differences in electromyographic activity of biceps brachii and brachioradialis while performing three variants of curl.” PeerJ vol. 6 e5165. 13 Jul. 2018, doi:10.7717/peerj.5165

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佐藤奈々子選手
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