高級歓楽街とフィットネス。2つの世界の頂点を制した異色の女王・小林彩乃(こばやし・あやの/38)さん。
昨年の『JBBFオールジャパンビキニフィットネス163㎝以下級』では見事優勝に輝き、日本一のビキニフィットネス選手として、また六本木クラブのホステスとして活動を続けている。
「華奢な体型が好まれる」という夜の世界で、肉体改造に取り組んだ理由とは?また、ホステスとボディメイクを両立し日本一にまで駆け上がった小林さんのストーリーを覗く。
リード文:FITNESSLOVE編集部 本文:にしかわ花 撮影:中原義史
[初出:月刊ボディビルディング2026年8月号]
【写真】元六本木クラブNo.1ホステスでビキニフィットネス日本一・小林彩乃さんのメリハリのある全身引き締まったビキニボディ

──昨シーズンは、競技歴3年目にしてオールジャパン身長別・マスターズともに優勝という華やかな戦績を上げられました。二冠の日本一となった気持ちをお聞かせください。
小林 身長別での優勝を絶対目標として取り組んできた一年だったので、「本当に嬉しかった」という言葉に尽きます。筋肉量、絞りともに過去一番の身体が作れました。特に、ずっと上手く出なかった大腿四頭筋のカットがようやく出せたことが嬉しかったです。
──これまで取り組まれてきた戦略を変えての変化でしょうか?
小林 いえ、思い切った大きな変更をしたわけではなく、「これまでの蓄積が芽吹いた」という感覚が強いです。本格的なトレーニングが3年前からということで、一昨年まではサイズ感の不足を避けるため、あえて少し甘さを残した減量でした。そのため、大腿中部のカットが入らなかったのですが、昨年はようやく絞り込んでも戦える筋肉量がついたことで、有酸素運動を大会1週間前から通常の減量期の倍量(トレッドミル45分×2回/1日)に増やし、納得のいく絞りでステージに立つことができました。
とはいえ、筋肉量もステージングもまだまだ伸びしろばかりなので、毎日が新しい発見と学びの連続です。
──日本一という位置につかれて、さらにこれからが本当の実りになると。
小林 はい。今からが成長期だと感じています。ゼロベースからのスタートなので、他の選手の方々からすれば「今更、そんなことを覚えてるの?」と呆れられる程度のことかもしれませんが、日々、成長を実感しています。
歓楽街とステージ
ふたつの美の世界の両立

記事が掲載されている『月刊ボディビルディング2026年8月号』
──小林選手は競技での活躍だけでなく、六本木の老舗高級クラブにお勤めされながらトップ選手になったという経歴も注目されています。ホステスという、スレンダーな体型が求められる職業では、筋肉を作り込んだ女性は異色では?
小林 周りにはいませんね。やはり、夜の街は華奢で細身な女性が好まれるので。実際に、体型が変化したことで仕事への影響は少なからずあります。今のお店は勤続17年目で、コロナ以前は10年間ずっとNo.1でいさせていただいていたんですが、ビキニ競技に没頭して以来、陥落しました(笑)。それでも好きなお仕事に変わりありませんから、これからもずっと続けていく予定です。
──痩身が価値を持つ世界にいながら、何故トレーニングに興味を?
小林 ダイエット知識の勘違いからで、細くなろうとして始めたんです。10年ほど前の話になるのですが、『ヴィクトリアズ・シークレット』に出てくるような女性に憧れて、自宅で筋トレを始めました。今なら彼女達が「痩せているから筋肉が見える」と分かるのですが、当時の私は「筋肉をつければもっと細くなれる」と思い込んでいました。YouTube のフィットネス動画や、道端ジェシカさんのDVDを参考に、軽量のダンベルを買って、ブルガリアンスクワットやドンキーキックなどを見よう見まねでやっていました。
──その後、真逆となる健康的でカーヴィな肉体に興味が移られた経緯は?
小林 SNSでビキニ選手の存在を知ったことです。「可愛いお顔とムキムキの身体にキラキラのビキニ」という見たことのないギャップに目を奪われました。そのなかでも特に、AZUSAさんのドーリーな顔と鍛え上げられた肉体は理想にピッタリでした。それが、のちにAZUSAさんのパーソナルへ伺い、競技を始めるきっかけになりました。
──お仕事と競技の両立において最も大変なことは?
小林 食事です。お酒は競技を始める前からあまり飲めないことを前提で接客させていただいているのですが、その分、食事をご一緒する機会などは大事です。減量期でも同伴をしないということは難しく、月に最低3回はお客様の好みを優先した食事をいただくことになるため、前後の調整は必須になります。末期の制限状態では白米もカロリー的に難しくなるので、さつまいも、かぼちゃと少しでもカサが増してお腹が膨れるものを食べています。その分、オフではたんぱく質の量以外は気にせず食べます。
──昼夜逆転の生活には支障は感じませんか?
小林 そうですね。生活時間は違っても、ルーティンは安定しているので。11時半に起床、トレーニングを1時間半〜2時間、その後は家事や家での業務を行い、同伴がなければ18時半ごろに夜ご飯、20時半から翌日1時まで勤務、帰宅後はお風呂やストレッチの時間をゆっくり2時間とって翌4時ごろ就寝と、規則正しい生活をしています。
ボディビルダーの筋肥大×
国内外トップ選手の魅せ方
──競技の話に戻ります。成長を感じるとおっしゃった、最近の発見や学びの例を教えてください。
小林 トレーニングでは、手幅や足幅、フォームの違いでの対象筋への刺激の入り方です。恥ずかしい話ですが、対象筋がようやくはっきりと意識できるようになってきたところです。筋肉への感覚が前より繊細になったことでトレーニングの質が上がり、適切な重量の見極めも以前よりできるようになりました。追い込むのに3時間以上かかっていたのが、1時間半〜2時間でオールアウトできるようになったりと、効率的になっています。
──トレーニング研究の参考にされているのは、どういった教材ですか?
小林 トレーニングの参考にしているのは、ボディビルダーの方々です。今の私に必要なのは筋肥大なので、ボディビルダーの方を学ぶのが最適だろうという考えからです。主に、嶋田慶太選手、横川尚隆選手、持田教利選手のトレーニング動画を拝見しているのですが、最近になってようやく解説の意味を理解できるようになり、自主トレの改善に生かせるようになりました。
──ポージングは、AZUSAさんと引き続き研鑽されているのでしょうか?
小林 はい。AZUSAさんにはポージングパーソナルを月に2回受けているほか、年に1〜2度、身体の状態からメニューの改善も提案していただいています。また、最近は海外のビキニ選手のステージ動画を時間が許す限り観ています。海外選手はムービングの滑らかさよりも、筋肉の美しさをしっかりと魅せることに重点を置いている方が多いです。私の昨年までのポージングの課題はダンスっぽさが強く、振り付けどおりに動くのに必死で、身体を魅
せるということまで気が回っていなかったことです。今は、鍛えた身体をしっかりと見てもらう意識を大切にポージングを練習しています。
世界水準の美に向けて
──これまでの短期間での競技成績向上について。2022年の2月にAZUSAさんのパーソナルへ、同年10月に北区オープン大会にてビキニデビューで優勝、2年目にオールジャパン身長別4位、そして、4年目に日本一。この〝飛び級成長〟を可能にした要因は何だと思いますか?
小林 努力する方向を間違えなかったことは大きいと思います。たとえば、理想の身体になるためには理想の身体を持つ方に聞くべきだと思い、迷わずAZUSAさんのところへ行ったこと。結果、ビキニに求められる肉体に必要なトレーニングの優先順位や、歩むべきステップを最短で学べました。あとは、必要だと言われたこと以外はよそ見せず、ブレずに信じてやり続けたことだと思います。
──今シーズンの出場予定と、今後の目標を教えてください。
小林 もちろん、オールジャパンの二冠を二連覇は狙います。その後は、来シーズンに国際大会を狙うためオフに入り、バルクアップに専念しようと考えています。理想像である海外のビキニ選手と並び、いつか到達できるように励んでいきます。
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピンク講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
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