鈴木雅選手が自ら実践し、効果的な種目を紐解く大人気連載「誌上マッスルキャンプ」も今回で最終回。最後となる今回は、実際のトレーニングの進め方について解説していきます。これまで紹介されてきた種目を取り入れながら、ぜひ実践してみてください。
<本記事の内容>
使用重量アップのタイミングは?
重量の上げ幅は筋肉の大きさで判断せよ!
種目はコロコロと変えてはいけない⁉
継続には「ロニー・コールマンになりたい!」の目標が大事
実際に鈴木雅が実践したプログラムを紹介!
使用重量アップのタイミング
筋力狙い、肥大狙い、パンプ狙い、それぞれの最低基準のレップス数を決めておき、フォームを崩さずにその最低レップス数をクリアできたら重量をアップさせていくという考え方でいいと思います。
使用重量をアップさせると感覚が鈍くなるという理由で、いつまでも重量を上げない人もいます。フォームが乱れていなければ感覚が少し鈍くなっても重量を上げてしまっていいと思います。
重量をアップさせてもある程度のレップス数ができるのであれば、1セットでも行えば体は慣れてくるので、いい加減なフォームにならないならやるべきです。
また、矛盾するようなことを言うようですが、いい加減にならず、ある程度のフォームでこなせるのであれば、重さはアップさせていいと思います。しかし、重さだけどんどん上げて可動域が小さくなるのはNGです。
使用重量の上げ幅について
小筋群の種目は1㎏幅で上げていきます。実際にはダンベルは2㎏刻みのもが多いので、回数をしっかりとこなせるようになれば、そこで重量を上げます。例えばサイドレイズを20レップスで組んでいた場合、22~23レップスほどができるようになったところで上げていきます。
大筋群の種目、例えばスクワットならば5㎏刻みで上げていきます。レッグプレスなどは10㎏刻みで上げていってもいいでしょう。
バーベルカールなどは1㎏上げただけでもキツい場合があります。そういう種目ではある程度回数を重ねてから上げるようにしていきます。
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プログラム見直しのタイミングと種目の入れ替え方
私の場合は、行ったときに感覚が悪い種目、何となくやってしまっている種目は省いてしまうことが多いです。また、1年間やってみて、ターゲットとする筋肉がまったく成長しなかったという種目は残します。
逆に言えば、しっかりと効いている種目は継続していくということです。筋肉はそう簡単にはつかないので、長い目で見ていく必要があります。種目をコロコロと変えていくようなことはしないほうがいいでしょう。
私もいきなりガラッと変えるようなことはしません。変えるとしても、1、2種目程度。新しい種目はフォームに慣れるまでに時間がかかるので、最初のうちはいつも行っている種目の最後に付け加えるようにします。
毎回のように種目がコロコロ変わってしまうと、筋力発揮が弱くなってしまいます。筋肉痛にはなるかもしれませんが、的確な刺激は受けられません。また、「効かない」ことにも必ず理由があるはずです。感覚ではなく「この筋肉はこうついているからこう動かしたら効く」といったことを知識と考え方をもとに考えていかなければいけません。
「体型的に効きづらい」「骨格的に効きづらい」というのは言い訳にすぎません。効かせるための動作ができるようになれば効くんです。
一番やってはいけないのは、「この選手がやっていたからやる」などの理由で種目を変えていくことです。動きや感覚には「ポイント」があります。そのポイントを把握しないことには得たい効果は得られません。
トレーニングを続けるためのコツ
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なんとなくトレーニングをやるのではなく、目標を決めたほうがいいと思います。その目標は人によって様々だと思いますが、例えばロニー・コールマンみたいになりたいとかジェレミー・ブエンディアのような体になりたいとか。ただそれだけでは、なりたい体のイメージはあっても、漫然としています。また、伸びなくなったときにヤル気が失せてしまうこともあると思います。そういったときに、「ロニー・コールマン」「ジェレミー・ブエンディア」に準じるちょっと手前の目標を決めるようにします。
ロニー・コールマンのようになりたいのでしたら、ベンチプレス200㎏を挙げられるようになれば胸だけはロニー・コールマンに少し近づく、など。
また、「〇㎏挙げる」「〇レップス行う」など、目標を数値化するのも有効です。そのためにも、トレーニングメモは必ずつけるようにしましょう。そこに「疲れていた」などその日の体調も記しておくと、挙げられなかった理由なども把握できるようになってきます。モチベーションを維持するという点では、各部位に得意のエクササイズを一つ作っておくのもいいですね。効く種目は好きになると思います。
例えばサイドレイズ。なんとなくやっているのと「足をこのように踏ん張って手首をこのように動かせば絶対に効く」と考えながらやっているのとでは、効き方が変考えてわってきます。効かせられるようになってくると、1回1回のトレーニングが楽しみになってくるはずです。
なんとなくやっているだけでは、今日は効く、今日は効かないとムダができ、効いた日は楽しくて効かない日は楽しくないとなってしまいます。モチベーションを持ち続けるために知識をつけるというのはすごく大事なことです。
鈴木選手の実際のプログラム
私は「肩」「腕」「脚」「胸」「背中」という順番でサイクルを組んでいます。いろいろと考えた結果、肩と腕の回復を重視して、この分割に落ち着きました。胸の日には三角筋サイドのパンプ系種目もやっています。腹筋は1日置きか2日置き。1週間に3回くらいできればいいかなと考えています。
海外の大会に出場して感じることは、腹筋周りと肩の丸み及び全体的な厚みが発達している選手が多いということです。私は肩の丸みや横、腹筋に関してはあまりやり込んでいなかったので、そういった部位にも少し注力するようにしています。
ボリュームについては筋肉の質によって考えています。紡錘筋である胸、上腕二頭筋、ハムストリングスはセット数は少なめです。
羽状筋である大腿四頭筋、上腕三頭筋などはボリュームを増やすようにしますが、三頭筋は胸の日にも使われますので、少し抑えるようにはしています。三角筋の横は半羽状筋で回復も早く、筋線維も多いのでハイレップスで行っています。
そういったプログラムで、一つの部位を週1回のペースで回しています。週に一度は終日外出になることがあるので、そういった日はオフにします。
また睡眠時間が3時間ほどになった日も休みます。私の睡眠時間は5時間ほどなのですが、最低でも4時間は取りたいですね。
年間計画としては、月に2㎏ペースで減量していくので、それに準じて逆算していきます。例えば6㎏増えていたとしたら、減量に3カ月はかけていきます。
とはいえ、必ずしも計画通りに進むとは限りませんので、ペースよく絞れていっても、途中で停滞してしまうこともあります。ですから、減量幅が6㎏なら、1カ月の余裕をみて4カ月かける。10㎏でしたら、大会の7、8カ月前から減量するようにします。
ただ、オフはオフ、オンはオンとは考えません。年間を通してトレーニングしていて体重が増えすぎた、扱う重量も伸びない、胃腸も疲れているという状態になれば減量します。代謝が落ち、何をやっても落ちないとなったら、減量中であっても代謝を戻すために食べるようにします。オンの中でもオフ、オフの中でもオンを設けるようにしています。
年齢やキャリアによって、適した方法は変わってくると思います。いろんな情報が氾濫している時代ですが、自分にとって都合のいい情報だけに躍らされず、基本をしっかりと押さえた上でベターな方法論を探し当ててもらえればうれしいです。
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取材・文:藤本かずまさ 撮影:北岡一浩
鈴木 雅
1980年12月4日生まれ。福島県出身。身長167cm、体重80kg ~83kg。株式会社THINKフィットネス勤務。ゴールドジム事業部、トレーニング研究所所長。2004年にボディビルコンテストに初出場。翌2005年、デビュー2年目にして東京選手権大会で優勝。2010年からJBBF日本選手権で優勝を重ね、2018年に9連覇を達成。2016年にはアーノルドクラシック・アマチュア選手権80㎏級、世界選手権80㎏級と2つの世界大会でも優勝を果たした。DMM オンラインサロン“ 鈴木雅塾”は好評を博している。
執筆者:藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。
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