世界的に話題のフィットネスレース「HYROX(※)」で活躍する選手に迫るコーナー。第16回は、現役フィットネストレーナーでHYROX JAPANのアンバサダーも務める、大串達彦(おおくし・たつひこ/37)さんを紹介する。
※「HYROX(ハイロックス)」とは、ランニングとフィットネス種目を組み合わせた新しいスタイルの競技。1kmのランニングと、8種目のファンクショナルトレーニング(機能的全身運動)を交互に繰り返すことで、筋力や持久力だけではなく、さまざまなフィットネスに関する能力が問われる。
挑戦のきっかけと未経験のワクワク
大串さんが初めてHYROXに挑戦したのは、2024年11月に香港で開催されたレース。参加のきっかけは意外にも“元上司の一声”だった。
「やったことのないことをやってみるのって、純粋に楽しそうだなと思ったんです。深く考えたわけじゃなく、面白そうだからやってみようという気持ちのほうが勝ちました」
その気持ちとは裏腹に、レース前は期待と不安が入り混じっていたという。フィットネストレーナーとして日常的に運動をしてはいるものの、HYROXという未知の競技に対してどれほどきついのか、自分にできるのかという思いも頭をよぎった。
自分の身体が今どれだけ動くのか――それを知りたかった大串さん。だからあえて特別なトレーニングをせず、“素の状態”で挑んだ初レース。
「今の自分がどれだけ戦えるかを知りたかったので、特別な準備期間は設けず、日課の腕立て伏せを続ける程度でレースに挑みました(笑)」
限界の先で見えた楽しさ
レースで大串さんを最も苦しめたのは「ウォールボール100回」。最後に立ちはだかる名物種目だ。
「あれは本当にきつかったですね……正直、終わる気がしませんでした。腕立て伏せを少しやっていたくらいではまったく歯が立たないなと(笑)」
それでも不思議と嫌な記憶にはなっていない。むしろ“この競技は本物だ”と感じた瞬間でもあり、楽しさがあふれ出したという。
「ウエイトの重さが身体にずっしり乗ってきて、あ、今自分の限界と向き合ってるなって気づきました。苦しいけど、それが最高に楽しかったんです」
限界と背中合わせの大串さんの心を支えたのは、コースを共に走るライバルたちだった。
「国籍も性別も関係なく、選手みんなで励まし合って声をかける。その空気に助けられました。あれがなかったら最後まで走り切れなかったと思います」
HYROXが持つ、競技者同士で支え合う文化。その温かさを身体で理解した瞬間だった。
HYROXが教えてくれた“もっとできる自分”
初めてのHYROXを終え、大串さんの中には大きな変化が生まれた。
「鍛錬とか根性って、言葉では聞いていたけど、あのレースで初めて“こういうことか”と理解できた気がしました。自分にはまだできる、もっと強くなれる!って思えました」
挑戦する前は、自分には縁がないと感じていたレース。だが実際に走ってみると、その印象は大きく変わった。
「本当にやってよかった。HYROXはやりがいもあるし、変化も感じやすい。とにかく一歩踏み出してみることが大切だと思います」
そんな大串さんの次の挑戦は、2025年の大阪大会。なんと3レースへの出場を予定している。
「経験を楽しみながら、少しでも良い結果が出せるように頑張ります。もっと強い自分になりたいですね」
HYROXは、結果よりもまず挑戦したことを肯定してくれる場所。走るのが早くなくても、筋力に自信がなくても、「面白そう!やってみたい!」、ただその気持ちだけで、未だ見ぬ想像以上の強い自分に出会えるはずだ。
文:林健太 写真提供:大串達彦
パーソナルトレーナー、専門学校講師、ライティングなど幅広く活動するマルチフィットネストレーナー。HYROX横浜はシングルプロで出場。
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