学生時代はそれなりに身体を動かしていたが、働き始めてからは運動とは遠ざかり、ビールと唐揚げが親友に。そんな方は多いのではないだろうか。小田侑樹(おだ・ゆうき/31)さんも、まさしくその一人だった。
「筋トレはたまにしていましたが、遊び感覚でした。当時(28歳)の体型は173cm、75kg。見た目は『顔だけはイケメン』と周りから言われていたように、体型には自信が持てませんでした。太っていた当時は、週7日でビールと揚げ物を楽しむ生活が当たり前でした」
転機は友人が出場する『ベストボディ・ジャパン』に応援に行ったことだった。
「会場で見た選手たちの姿に感動しました。率直にかっこよく、真剣に鍛え上げた肉体を披露する姿に、自分はこのままでいいのかと自問自答しました。そして、あの舞台に立ちたいと強く思いました」
決意から行動は早かった。筋トレを週に5日に増やし、ローファットな食生活をスタート。食卓からビールと揚げ物は姿を消し、代わりにプロテインと鶏胸肉が毎日の相棒に変わった。
「炭水化物は白米、オートミール。タンパク質は鶏胸肉、プロテイン。その他の野菜でブロッコリーやオクラを食べています。胸肉は調理がめんどくさいので約1週間分をまとめて一気にドーンと茹でてます!」
調理の簡易さを求めたのには理由がある。幼い子どもの育児の真っ最中だからだ。
「トレーニングも仕事と育児の合間を縫って、早朝か寝かしつけを終えた23時以降の夜中がメインです。長時間は取れないから、『効率良く効果的に』を意識しました。育児との両立で一番大変だったのは、家族との食生活の違いです。子どもは栄養たっぷりのご飯を食べさせたいけど、自分はローファット。そのギャップで苦労しました。無理しすぎない、自分を責めすぎないを自分に言い聞かせて、少しずつコツコツと進める意識でやりました」
小田さんの努力に対して、そのころの周囲の反応は冷ややかだったという。飽き性の性格をよく知る友人や家族には、特に大会出場を宣言したとき「無理だろ」「どうせ続かない」とかなり否定されたと語る。
「でも、優勝を狙って真剣に取り組んでいる姿を見て、次第に応援してくれるようになりました。結局、初出場では身体も成績も思うようにならずでしたが、YouTubeで独学でやっていたトレーニングを全て見直すために金沢のパーソナルジムの『ブーストアカデミア』に行き、代表の藤岡(敬大)さんから選手としての食事とトレーニングを一から学び直しました」
そして2年後の2024年、努力が実を結ぶ。『モデルジャパン石川・金沢大会』ミドルクラス(30〜39歳)でグランプリを獲得した。体重は75kgから60kgへ。かつての「顔はイケメン」から、堂々とした「全身イケメン」に変わっていた。
「ボディメイクの自分の変化は、自信がついたのが一番大きいです。仕事や日常生活でも姿勢が良くなり、疲れにくくなった実感があります。また、明確な目指したい目標もできました。前里明生さん(ベストボディ・ジャパンで2カテゴリーの日本一に輝いた人気選手)です。大会初挑戦のときに知って以来、ずっと憧れて待ち受けにしてモチベーションにしています」
社員旅行で沖縄を訪れた際には、前里さんのパーソナルを受けに行き直接会う夢が叶ったと喜びを見せる。小田さんがこれからもボディメイクを続ける理由は非常にシンプルだ。
「前里さんの背中を追い続けて、ベストボディで日本一を目指したいです」
夢と目標は、人を大きく変える。小田さんが憧れの人を追いかけるように、いつか小田さんの背中を追いかける人が現れるかもしれない。
取材:にしかわ花 写真提供:小田侑樹
『IRONMAN』『FITNESS LOVE』『月刊ボディビルディング』寄稿。広告・コピーライティング・SNS運用。ジュラシックアカデミーでボディメイクに奮闘している。