背中ので背中の基本種目をトップ選手はどう考え実践しているのか?ここでは絶賛背中改善中の刈川啓志郎選手がこだわるベントオーバーロウの効果や狙い、やり方を詳しく聞いた。
文:月刊ボディビルディング編集部 大会写真:中原義史 トレーニング写真:北岡一浩 Web構成:中村聡美

なぜベントオーバーロウをやるのか
私がベントオーバーロウ(以下ベントロウ)を継続して入れているのは、単に背中を厚くするためだけではありません。昨年の日本選手権が終わって腰の状態が少しずつ良くなってから、リハビリも兼ねて本格的に取り入れるようになりました。それまではロウイング系をやっても、僧帽筋の中部・下部にうまく入らず、肩甲骨が浮いて僧帽筋上部で引くような動きになりがちでした。なので、やったりやらなかったり、だったのですが、なぜ効かないのかを勉強していく中で、やはり避けるのではなく、きちんと取り組むべき種目だと考えるようになりました。
今は、背中の種目に多いマシントレーニングとは別に、フリーウエイトで身体操作を学ぶ意味合いでベントロウを行っています。足で地面を踏んで床から反力をもらい、その力を全身の連動の中でバーに伝えていく。どこか一部の筋肉だけを切り取って狙うというより、身体全体で正しく引くための練習という位置づけで行っています。
ベントオーバーロウの狙い・効果
筋肉的な狙いとしては、広背筋や僧帽筋のどこか一部だけではなく、背中全体です。動作が破綻せず、肩甲骨の内転や肩関節の伸展・屈曲が自然に出てくれば、結果として背中全体を使えると考えています。現在は100〜120㎏で10〜13回を6セットほど。重量をどんどん上げていくというより、動きを覚えるための反復としてセット数を多めにしています。
この種目の大きな効果は、繰り返しになりますが身体操作の向上です。フリーウエイトで床反力を受けながら動けるようになると、その感覚はマシントレーニングにもつながります。たとえばラットプルダウンでも、ただ腕で引くのではなく、床から力を受けて全身で引く感覚が出てきています。私は以前、効かせやすい種目だけに絞って追い込む形で成長させてきたのですが、その分フリーウエイトの扱いがうまくはありませんでした。だからこそ今は、あえてこの種目に取り組む意味を強く感じています。
- ストレッチ時の足裏の重心はかかと寄り。引き込んだ際は母趾・小趾側に移りながら体幹部をブラさずに動作をするイメージで行っている
グリップや 手幅とその意図
グリップは現在、アンダーグリップで行っています。私の場合、オーバーグリップで握ると肩が浮きやすく、引き切った局面で僧帽筋上部に負荷が逃げやすい癖があります。その点、アンダーにすると腕が回外し、肩が落ちやすくなる。肩甲骨が可動しやすいまま動作を続けられるので、今はこの握り方を選んでいます。手幅は、狭すぎず広すぎず、自然な幅です。基準としては、肩甲骨を広げた状態から無理なく握れる位置に置いています。
足幅は腰幅程度です。構えの段階では、お尻の穴やハムを軽く締めて骨盤を安定させることを大切にしています。
普段はパワーグリップを使わずに行っています。これが140、150㎏になってきたら必要ありそうですが、今はそこまで重い重量を扱っていないので、握る練習のためと、素手でバーを握った方が肩甲骨から手までの一体化ができやすいと感じているためです。
この種目を実践する人にまず伝えたいのは、難しいことは一旦考えずに「お尻の穴を少し締める」ことを意識するくらいの感覚で十分だということです。そこからバーを握り、上体と骨盤の位置を安定させる。引くときはバーをみぞおち方向へ引きながら、やや前斜め上に伸びるように身体が起きてくるようなイメージで動作します。肩甲骨も引き切った局面ではしっかり寄りますが、無理にそれだけを意識するのではなく、正しく引いた結果としてそうなる形を大事にしています。
刈川啓志郎の現在の背中トレ全メニュー
チンニング(パラレルバー)
ラットプルダウン(パラレルバー)
マシンロウイング
ワンハンドフロントプルダウン
ベントオーバーロウ
デッドリフト

ベントロウの注意点
注意したいのは、腰を反って負荷を支えてしまうこと。ヒンジ動作でハムや臀部、体幹の背面側に張力を作れず、腹圧が抜けたまま引いてしまうと、僧帽筋上部あたりにしか効かない動きになりやすいです。まずは体幹を安定させて身体を支えることを覚え、そのうえで引く練習を重ねることが大切です。
バーをどこまで下ろすかについてですが、無理に深くまでストレッチさせて下ろすのは注意が必要です。身体を地面と平行レベルまで倒して行うフォームもありますが、体幹部の強さや安定が相当なレベルでないと、怪我のリスクが高いと考えています。ただし、現状は身体を斜めまで倒し、膝あたりまで下ろすフォームで行っていますが、身体を倒して地面と平行に近づけるフォーム(ができる身体)は追い求めていくべきだと思います。
ベントオーバーロウは、腰に不安がある人ほど練習する価値のある種目だと思っています。もちろん治らない怪我がある場合は別ですが、避け続けるだけでは、その動きに必要な部位は育ちません。支え方と動かし方を覚えながら、少しずつ取り組んでいくことに意味があると感じています。
ベントオーバーロウ種目解説
●対象部位:背中全体
●重量・セット数・レップ数100~120㎏×10~13レップス×6セット
●セッティング
握り:アンダーグリップ
手幅:肩甲骨を広げて手を伸ばした自然な位置
足幅:腰幅程度
●動作方法
お尻・ハムを軽く締めて骨盤と上体を安定させ、ボトムポジションを先に作るバーはみぞおち方向へ引き、引く局面ではやや身体を起こしながら肩甲骨を寄せる戻す局面では体幹部を残したまま、バーだけをコントロールして膝付近まで下ろす引く局面では母趾・小趾側、ネガティブではややかかと寄りへ重心がわずかに移る
●ポイント
深く下ろしすぎて肩甲骨が浮いたり腰が崩れたりするなら、まずは支えられるレンジで行う。また腰を反って支えるのではなく、ヒンジ動作でハム・臀部・体幹に張力を作り支えるイメージで。
かりかわ・けいしろう
2001年12月27日生まれ/福岡県出身/身長175㎝/体重83kg(オン)、90kg(オフ)/学習院大学4年/2022年マッスルゲート東京ベイボディビル75kg超級優勝。2023年全日本学生ボディビル選手権優勝。2024年日本選手権3位。2025年日本選手権2位
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