「ベンチプレスをやるといつも肩が痛くなる」「高重量に挑むと腰が張って、お尻が浮いてしまう」……そんな悩みを抱えていないだろうか?
日本ボディビル選手権王者・相澤隼人選手が、自身のYouTubeチャンネルで『ベンチプレスのエラーパターンと怪我の予防策』を徹底解説。最もエラーが起きやすく、多くの人が陥りがちな怪我の原因と、それを根本から解決する機能的なアプローチを整理した。
目次

次ページ【動画】【今すぐやめて】ベンチプレスで怪我をする原因と改善策を徹底解説‼︎
1.ベンチプレスにおける2大エラー」の全貌

相澤隼人公式チャンネルより
ベンチプレスは大胸筋を大きくする王道種目である一方、スクワットやデッドリフトと同様にエラーが起きやすく、怪我のリスクが高い種目でもある。
相澤選手は、ベンチプレスにおけるエラーの多くは『腰部(腰の不安定性)』と『胸部(胸の可動性)』の2つに集約されると語る。
「もっと細かく言えばたくさんありますが、大きく分ければこの2つ。要は『腰をめちゃくちゃ反りすぎている』か、もしくは『胸が上がらなくて肩が前に出てパンチしている状態になっている』というイメージです。ここを改善するだけで、大胸筋への効き方は劇的に変わり、怪我のリスクも大幅に下がります」
2.腰を痛める原因:腰部の不安定性と「フェイク・アーチ」

相澤隼人公式チャンネルより
ベンチプレスで「高いアーチ(ブリッジ)を作ろう」とするあまり、多くのトレーニーが陥るのが、お腹の力が抜けて肋骨がガバッと開いた状態で、腰だけを過度に反らせてしまうパターンだ。
ポイント
◯原因:ラックアップ前の体幹部の不活性
相澤選手いわく、バーベルを外す前の段階で、そもそも体幹部(腹圧)が不安定になっていることが根本的な原因だ。自分の中ではアーチを作れているつもりでも、実際には胸が上がっておらず、ただ腰を反らせて誤魔化している「フェイク・アーチ」になってしまっている可能性がある。
【代償動作のサイン】
①動作中に腰に対して強い張りを感じる
②挙上時に粘ったとき、思い切りお尻がベンチから浮いてしまう
③連鎖して顎が上がってしまう
◯改善アプローチ:呼吸パターンの修正
このエラーを解決するには、適切な腹圧のコントロールが必要不可欠となる。
セルフチェック: 肋骨の下あたりを自分でグッと押し、その状態で息を吸ったときに、手を押しかえすようにお腹が全方位に膨らむか(腹腔の拡張)を確認する。もし息を吸ったときに肩が上下し、お腹の圧力が変わらない(または凹む)人は、呼吸エラーが起きている。
理想の意識: 腹圧が適切に保たれたまま足を床につけ、アーチを作る際は『鎖骨が顎に近づいていくようなイメージ』で胸を高く引き上げる。
体型への影響:腰が反って肋骨が開くと肩甲骨の位置も安定しないため、結果として肩や腕が安定せず出力が下がる。相澤選手は「体幹周りだけが太くなるのに、胸や腕が弱いアンバランスな体型に見えやすくなる」と、機能低下による体型への悪影響も指摘する。
3.肩を痛める原因:胸部の可動性不足と「パンチ・ベンチ」

相澤隼人公式チャンネルより
大胸筋に効かず、肩の前面(三角筋前部)ばかりが痛くなったり、消耗してしまったりする人の典型例がこれだ。
ポイント
原因:胸椎の可動域不足とデスクワークの影響
ベンチプレスは『自分自身がベンチに押し込まれるようなイメージ』でプッシュすることで肩甲骨が固定され、大胸筋に刺激が入る。しかし、胸椎(胸の後ろの背骨)が硬い、あるいは動かせない状態だと、胸の位置を高く保てない。
特に日常的にデスクワークをしている人は、ずっと座りっぱなしで猫背の姿勢(重力に対して楽なポジション)がデフォルトになっているため、本人は胸を張っているつもりでも実際には動いていないケースが多い。
代償動作のサイン:肩の「パンチ動作」
肩甲骨のパッキング(固定)ができず、バーを押し上げる際に肩甲骨が外側に広がり(外転)、肩が内側に入りながら前方に飛び出す「パンチするようなフォーム」になってしまう。
王者の改善アプローチ:胸椎への介入
胸椎の動きを出すために、トレーニング前のウォーミングアップとして以下のストレッチやエクササイズを推奨している。
多動的アプローチ: ベンチ台の端に背中を当て、プルオーバーのようにお尻を落として胸椎を伸展させ、可動域を広げる。
自動的アプローチ:四つん這いになった状態から体を回旋(ひねる)させ、腕を動かしながら胸椎の回旋・伸展の動きを自分でコントロールして出していく。
4.肘のブレや肩前面への刺激を防ぐフォームの要点

相澤隼人公式チャンネルより
Q. 重量が増えると肘が内側に入り、三頭筋ばかり疲労してしまうのはなぜ?
手幅が狭すぎるか、もしくは「土台(胸・肩甲骨)」が崩れている可能性が高い。
本来、適切な手幅でベンチを行っていれば、肘が不自然に内側に入る(肩関節の外旋)ことは起きにくい。手幅に問題がない場合は、やはり胸が上がる、肩が落ちる、脇が締まるという土台のパッキングが崩れていることが原因。高重量になってもこの土台をキープすることが解決策となる。
Q. なぜ胸ではなく、肩の前面ばかりに刺激がいってしまうの?
大胸筋は身体に対して横方向に走っている。対してベンチプレスは「重力の方向が体の後ろ(真下)」にかかる運動だ。
いかにこの重力運動に対して大胸筋を縦に走行させる(引き伸ばす)かが重要であり、そのためには『胸のお山』を作る必要がある。胸が上がらず平坦なままだと、動くのが肩から先だけになってしまうため、物理的に肩への負担が強くなる。
5.王者が語る「トレーニングギア論」とベルト・リストラップの付き合い方
リストラップやパワーベルトといったトレーニングギアの使用について、相澤選手は非常に明確な基準を持っている。

相澤隼人公式チャンネルより
① 自重を支える能力が大前提(王者のエゴと基準)
相澤選手は「個人的なエゴとしては、100kgくらいまでは何も使わずにやりたい」としつつも、指導における基準として「自分の体重くらいはギアなしで支えられる能力は欲しい」と語る。腕立て伏せでギアを使わないのと同様に、本来人間が持っている関節の支持力や体幹の強さを忘れてはならない。
② ベルトの使用には肯定的な理由
ベンチプレスでのベルト使用について、相澤選手自身も使っており肯定的だ。ベルトは単に腰を守るだけでなく、「腹腔の拡張に対する圧力の拮抗(反発)」を生み出す。つまり、自分が出した腹圧を受け止める壁(ベルト)があることで、より体幹の安定性が高まるからだ。
③ 「ギアに使われるな」
最も重要なのは、ギアに依存しないことだ。
「ベルトがないと腹圧の入れ方がわからない」「リストラップがないと手首が痛くて持てない」というのは、ギアに“使われている”状態と言える。
相澤選手がパーソナルトレーニングを行う際は、呼吸パターンにエラーがある人にはまずギアを使わせない。呼吸からアプローチし、ノーギアで体幹を支える感覚を掴ませる。理想は「意識せずとも、無意識に正しい腹圧が入り、勝手に大胸筋に効いている状態」を作ること。ギアは、自前のコントロール能力があった上で、さらに高重量の負荷から身を守るための「+αのサポート」として介入させるのが正しい。
6.まとめ
ベンチプレスは大胸筋を発達させる素晴らしい種目だが、一歩間違えれば肩や腰の怪我につながる。
相澤選手が強調するのは、フォームという表面的な形だけを真似るのではなく、「適切な呼吸で腹圧を入れること」「胸椎の可動性を出して、重力に対して大胸筋が最も働くポジションを作ること」という、身体の機能的な土台だ。
「トレーニングにおける運動は、無意識にやって勝手に効いているのが理想」
決して無理な重量設定でフォームを崩さず、自分の身体のエラー(腰・胸)と向き合いながら、怪我のない強靭な大胸筋を作り上げていこう!
相澤隼人(あいざわ・はやと)
1999年10月21日生まれ、神奈川県相模原市出身。身長164㎝。俳優、パーソナルトレーナー。JBBF(公益財団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)の審査員としても活動中。2021~2023年日本選手権優勝。
【動画】【今すぐやめて】ベンチプレスで怪我をする原因と改善策を徹底解説‼︎
構成:柳瀬康宏 引用元:相澤隼人公式YouTubeチャンネル『【今すぐやめて】ベンチプレスで怪我をする原因と改善策を徹底解説‼︎』
『月刊ボディビルディング』『IRONMAN』FITNESS LOVE』などを中心に取材・執筆。保有資格は、NSCA-CPT,NSCA-CSCS,NASM-CES,BESJピラティスマット、リフォーマー。メディカルフィットネスジムでトレーナーとして活動もしており、2019年よりJBBF、マッスルゲート、サマースタイルアワードなどのボディコンテストに毎年挑戦している。










