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「減量中にやりがち」なNG栄養法!そのカロリー制限、逆効果かも?【減量の常識を疑う】栄養編

ボディビル元世界王者・鈴木雅×AZCARE株式会社代表・近藤拓人×PMPerformance代表・川合智監修によるスペシャル対談!
「減量中、筋肉量は落ちて当たり前」と思い込んでいませんか?そこで、筋肉量を残して絞るためにやるべきことを【トレーニング編】【有酸素運動編】【栄養編】【睡眠・ストレス編】【エネルギーフラックス編】の5回に分けてお伝えします。筋肉が削れるのはもはや当たり前じゃない!

ココがポイント

夢見て体重を増やしても筋肉は残らない

減量中に過度に摂取カロリーを削ってはいないだろうか?

いざ減量を始めようとなったときに、カロリーはどの程度削れば良いのだろうか。ベテラン選手なら、経験から自分に必要なカロリーが分かっているだろうが、初心者のうちは手探りなはずだ。どのような方針のもとでカロリーを計算していくべきなのかを考えてみよう。

「まずは『エネルギー有効性』について知りましょう。『エネルギー有効性』は、食事から得られるエネルギーから、運動によって消費されるエネルギーを引いた残りを指します。この部分を十分に確保できるようにすることが、減量計画では大切になります」(川合)

摂取カロリーが3000キロカロリーで、運動で消費するカロリーが500キロカロリーなら、エネルギー有効性は2500キロカロリーということになる。このエネルギー有効性の部分に着目して必要なカロリーを求めるには、除脂肪体重に目を向ける必要がある。
例えば、バルクアップ期ならば、除脂肪体重1㎏あたり35から45キロカロリーが目安になる。一方、減量期で絞ることが目的ならば、これが30から35キロカロリーになる。体重70㎏、体脂肪率5%で仕上がるとするならば、計算上のエネルギー有効性は2100キロカロリー程度になる。これに、運動や日常生活で消費する分のカロリーを加味して減量するとなると、1日の摂取カロリーは2300から2500キロカロリー程度になる。

「まとめると、バルクアップ期でも減量期でも、自分の除脂肪体重を元にして、必要なエネルギー量を計算していくことが重要になります」(川合)

健康的に減量を進めるには、ここで紹介した程度のカロリー摂取が必要である。逆に言えば、これを下回るエネルギーでは、視床下部や自律神経に過度な負担がかかってしまうということだ。そうすると、身体の不調を常に感じながら進める減量となることが想像できる。

適切な計算をしながら減量を進めることが大切だと分かったが、実際に減量すると、なかなか計画通りにはならない。例えば、1日に300キロカロリーのマイナスを作れば1カ月で体脂肪は1.2㎏落ちる計算になる(体脂肪1㎏落とすのに7200キロカロリーを要すとした場合)が、必ずしも理論通りには進まない。その原因として考えられるのが、自律神経の乱れと、脂肪を分解するホルモン分泌の低下だ。

「体脂肪をできるだけ理論や計算通りに落としていくには、自律神経や身体のリカバリーにも正しく目を向けてあげることが大切です」(川合)

オフに体重を増やし過ぎれば、減量のペースを上げるために削るカロリーが増え、結果として身体へのダメージが増えてしまうことは理解しておこう。

ココがポイント

脂質の減らし過ぎは厳禁
「脂質を減らし過ぎることは、身体の中のホルモン分泌のバランスに悪影響を及ぼします。そういったことを考えると、最低でも60gから70gは脂質を摂取するようにしたいです」(川合)

上手に減量するために押さえておきたい食事のポイント

ここからは、上手に減量を進めるためのポイントについて考えてみよう。

最初はPFCバランスだ。本誌でも何度も取り上げていて馴染みも深い用語だが、Pはタンパク質、Fは脂質、Cは炭水化物を表している。これらのバランスを考えて食事の計画を立てることは、減量においても増量においても重要だ。

「これまでは多くの場合で、炭水化物の割合は60%程度とされてきました。ところが最近、50%から55%の間だと、長寿になる方が多いということが米国4地域で実施された研究で報告されました。そのため、炭水化物の摂取量が多すぎても少なすぎてもいけない、ということが言えると思われます」(川合)

炭水化物摂取の割合が50~55%の間だと長寿になる!?

米国4地域で実施された研究(対象者:45~64歳の成人15,428名)では、炭水化物の摂取割合と死亡率の関係を25年間にわたり追跡調査。炭水化物摂取がエネルギーの50~55%の人が最も死亡リスクが低く、それより少ない(40%未満)または多い(70%超)の人では死亡率が上昇したと示された。
(出典:Seidelmannetal.,2018)

このことを踏まえると、減量中に炭水化物の量を削っていくにしても、最低ラインである50%は下回らないようにしたいと考えられる。総摂取カロリーが2400キロカロリーならば、炭水化物から得るエネルギーは1200キロカロリーとなる。これはご飯で考えると、2合よりも食べられる計算になる。もちろん、必要な摂取カロリーは除脂肪体重で変わるため、そのあたりは自分自身で微調整してみる必要があるだろう。

炭水化物に関連して、減らしすぎと思われる例を紹介したい。体重1㎏あたり3gを下回るような糖質制限は、明らかにやり過ぎな状態である。

「体重70㎏の人ならば糖質210gということです。この場合、糖質から得られるエネルギーは約800キロカロリーですが、ここまで糖質制限をすると、身体の中で炎症反応に関わる物質が増えることが分かっています」(川合)

減量中にも身体のコンディションを良い状態に保つことを考えると炭水化物は体重1㎏あたり4gから5gは摂取しておきたい。

「オフシーズンにクリーンバルクで体重を増やしすぎないようにして、減量開始後3カ月程度で体脂肪率を7%まで落とすのが理想的ですね。そこから最後の1カ月で、リカバリーをしたり、さらにケトジェニック的な要素を加えたりして絞り込んでいっても良いでしょう」(川合)

最後は減量を進める際に減らしていく栄養素についてだ。脂質を大幅にカットするボディビルダーの代表的な食事の人もいれば、必須脂肪酸のことも考えて脂質を減らしすぎないタイプの方もいる。

「脂質を減らし過ぎることは、身体の中のホルモン分泌のバランスに悪影響を及ぼします。そういったことを考えると、最低でも60gから70gは脂質を摂取するようにしたいです」(川合)

こうして脂質を摂取すると、PFCバランスの中では25%から30%程度になってくる。減量をうまく進めるにはこの値を下回らないように気をつけよう。

かわい・とも
1984年生まれ。滋賀県出身。パーソナルトレーニング『PMPerformance』代表兼トレーナー。他にも『AZCAREACADEMY』ゼネラルマネージャーや日本統合療法株式会社・代表取締役を務める。運動の専門家として様々な要望に応える傍ら、運動と栄養を統合したヘルスケアを実践する

取材・文:舟橋位於 撮影:木川将史 Web構成:中村聡美

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