減量において脂質は悪者にされがちだが、三大栄養素の一つであり、私たちの身体を作る材料となる物質だ。ホルモンの産生にも脂質が必要となる。そうした意味において、減量期であるからこそ、脂質を上手に摂取することがアナボリックな体内環境を作り上げていくホルモンバランスを維持する上でも重要なのだ。
そこで、本記事では米フィットネス誌が紹介した減量中のホルモンコントロールに関するトピックをわかりやすく解説する。
本記事は、海外のフィットネス事情やトレーニング文化に関する情報をもとに構成された翻訳・編集記事です。日本国内の事情や環境とは異なる部分も含まれます。
(IRONMAN2025年10月号「from IRONMAN USA」より転載)
減量中こそ脂質を摂る
ボディビルダーの減量は、筋量を維持したまま体脂肪を減らすため、主に炭水化物を減らす必要がある。
しかし、脂質はむしろ減量期に増やすことでストレスホルモンであるコルチゾールを抑制し、カタボリズムを抑えることができると考えられる。炭水化物と脂質を減らし過ぎると、筋肉のハリが失われ、体脂肪が減っても理想的なコンディションにはならないのだ。

筋肉を落とさない食事とは
コンテストボディビルダーを対象に減量期の体組成や代謝の変化を調査した研究を紹介したい。
【被験者と実験期間】
この研究は被験者となった14人のナチュラルボディビルダー(平均年は25歳、平均トレーニング歴9年)を対象に11週間にわたって行われた。被験者のうち7名はコンテストに出場予定だった。
実験期間中、PFCバランスはタンパク質28%、炭水化物60%、脂質12%に固定された。コンテスト出場群は、カロリーを段階的に減らし、最終的には1日あたりの摂取エネルギーが978㎉にまで減少した。

結果と考察 |
【体組成の変化】
体脂肪率は平均9.6%から6.5%まで減少(最低4.8%)し、コンテスト出場群は筋量の減少も確認された。これは、摂取カロリーが極端に少ないためにIGF-1やインスリンなどが低下したためと考えられる。
【ホルモンレベルの変化】
摂取えねるぎーの減少に伴い、インスリン様成長因子1(IGF-1)とインスリンレベルが低下した。
テストステロンは、実験開始時点では低下したものの、トレーニングによる刺激により増加傾向を示した。
【高タンパク質食で筋肉が落ちる?】
研究者らは、体重減少の要因の一つとして低炭水化物+高タンパク質食だったことに触れている。炭水化物を制限すると、生命活動のために体内のタンパク質、すなわち筋肉も分解される。
実験の問題点 |
【問題点1:脂肪をエネルギー源にできなかったのか?】
研究では炭水化物が制限された際のケトン体の役割が考慮されていない可能性がある。ケトン体は体脂肪が代謝されるときに生成され、エネルギー源になる。とはいえ、体脂肪率が7%以下の状態では体内の脂肪の量も限られ、筋タンパク質がエネルギー源として消費されると考えるのも妥当だろう。
【問題点2:極端なPFCバランス】
実験食では、脂質が総摂取エネルギーのわずか12%だった。炭水化物と脂質を同時に制限すると、ストレスホルモンであるコルチゾールが増加する。コルチゾールと拮抗関係にあるテストステロンの生成には脂質が必要であるため、この実験ではテストステロン値も低下していたと考えられる。
減量で失敗しないために
減量期に筋肉を落とさないためには、男性であれば少なくとも総摂取エネルギーの25%程度を脂質から摂取するのが良いだろう。また、炭水化物を減らす場合も、週に1、2回は十分な炭水化物を摂るよう意識しよう。










