フィットネス ヨガ

背骨の柔軟性が健康やパフォーマンスに重要! ヨガインストラクターに聞く、「しなやかに、繊細に背骨を動かす」方法【背骨リセットヨガ:高野真利】

「背骨を知れば動きが変わる。日常が変わる」。

私たちが生活する上で重要な背骨。背骨を整えることでスポーツや日常動作のパフォーマンス向上、自立神経の調整などに役立ちます。

現代の生活習慣で乱れやすい「背骨」のポテンシャルを最大限に引き出すための「背骨リセット術」を3回に分けてご紹介2回目の今回はヨガインストラクターの高野真利さんに「背骨の柔軟性」の重要性についてと実践できるワークを教えていただきました。

[初出:Yoga&Fitness vol.14]

高野真利 『しなやかに、そして繊細に背骨を動かす』

「私たちの身体の中心に位置する「背骨」は、まさに動きの中枢とも言える存在です。頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個、そして仙骨・尾骨を合わせた24個の椎骨と2つの骨が連なりながらも、独立して可動する巧妙な構造。この仕組みこそが、私たちに前屈・後屈・側屈・ねじりといった複雑かつ滑らかな動きを可能にしています。背骨の柔軟性が健康やパフォーマンスにおいていかに重要であるかは、今や常識となりつつありますが、真に〝しなやかな背骨〞を手にいれるためには、まずその構造と機能を理解することが不可欠です。

椎骨は頸椎・胸椎・腰椎の3つのパートに分かれ、それぞれに特有のカーブを持っています。頸椎と腰椎は前方に弯曲する「前弯」、胸椎は後方に弯曲する「後弯」となっており、全体としてS字のカーブを描いています。柔軟な背骨とは、この自然なS字カーブを保ちながら、椎骨ひとつひとつが独立して機能的に動ける状態を指します。しかし、実はそれぞれの椎骨には異なる特徴があり、その特徴に応じたアプローチが求められるのです。例えば、頸椎や腰椎は本来反っている構造を持っているため、過度な反りには注意が必要で、丸めることができるよう促すことも大切です。一方で、あまり動かないように見える胸椎は、実は十分な可動域を持ち、自由な動きを作る伴となるため、柔軟性を養うことが重要となります。

それでは本当の意味での「柔軟な背骨」とはどういった状態でしょうか。構造に基づいたワークをもとに探っていきます」

胸椎と肩甲骨の柔軟性を高める
スプタマチェンドラーサナのバリエーション

①横向きに寝て、股関節と膝を90度に曲げます。両腕を肩の前に伸ばして手のひらを合わせ、頭の下にはブロックを置きましょう。

②息を吸いながら腕を耳の横まで回しあげ、吐きながら後方に一回転させて元の位置に戻します。骨盤が動かないように膝を揃えたまま、できるだけ胸を広げるようにして大きく腕をまわしましょう。左右それぞれ5~10回ほど行います。

背骨をコントロールし統合力を養う
ビダラ・マールジャラーサナ

①四つ這いになり、息を吸いながら骨盤を前傾させ、背骨を一本ずつ反らせていきます。腰が反りすぎないよう、ヘソで背骨を押しながら、胸の中心を顎に向けて引き出すようにします。肩と耳は引き離して首を長く保ち、優しく目線をあげます。

②息を吐きながら骨盤を後傾させ、背骨を一本ずつ丸めていきます。お腹を引き込むようにして腰椎一つ一つを開き、マットを押すことで肩甲骨を開きます。頭頂が遠くを通るようにして膝の間に目線を向け、頸椎一つ一つも開くよう意識します。この2つの動きを1呼吸1動作で交互に行い、5~10回ほど繰り返す。

胸椎の可動域を高める
パリガーサナ

膝立ちになり、左足を横に出してつま先を正面に向けます。息を吸って右手を回しあげ、吐きながら左に側屈していきます。右の脛で床を押すようにして、肋骨同士の間を広げるようにしてキープ。左右を変え、それぞれ5~10呼吸ほど行いましょう。

パールシュヴァスカーサナのバリエーション

体側の伸びが感じられない場合は、横座りになって行います。右のお尻で床を押し、背骨の長さを感じながら側屈します。左胸を天井に向けて回す意識を持つと、より胸椎の動きを引き出せます。左右それぞれ5~10呼吸ほどキープします。

ひとつに “つなげる”力

人間の体はとても器用で、意識をしないと〝動かしやすい部分〞ばかりを使い、〝動かしにくい部分〞は使われずに過ごしてしまいがちです。これは、背骨にも同じことがいえるでしょう。本当の意味で背骨を柔軟にするには、背骨の構造を理解し、頸椎、胸椎、腰椎のそれぞれを丁寧に動かしながら、コントロールする力を育てることが大切です。さらに、それらの部位を〝つなげる力〞(統合力)を身につけ、背骨全体の長さを意識して動かすことで、背骨がしなやかさを取り戻し、全身の動きの質を高めてくれます。

人それぞれ、使いやすい場所や癖が異なります。だからこそ、自分の体がどう動いているのか、どこに頼りすぎているのかを観察し、気づくことがとても重要です。

そして何より、「動かせている」という思い込みを手放し、フラットな視点で自分の体と向き合うこと。その姿勢が、体だけでなく、心にも柔らかさを育ててくれるのだと思います。背骨に丁寧に意識を向けることで、少しずつ体の感覚が変わっていく。その小さな変化は、やがて心や生き方にも、穏やかな影響をもたらしてくれるはずです。

たかの・まり
ヨガ、ピラティスインストラクター。Studio Pur(スタジオピュール)オーナー。某大手商社の営業として忙しい毎日を送る中でヨガに出合い、インストラクターに転身。ヨガ雑誌へのモデル出演や、CM映画でのポーズ監修、大規模なヨガイベントにも多数出演。ピラティス資格取得や単身NYにてヨガを学ぶ等、自分のスタイルを追及し続け、2022年【Studio Pur】を立ち上げる。体の使い方のみならず日常生活に生きるヨガとピラティスの教えを丁寧に伝えながら、働く女性の支援や動物愛護を視野に入れ、日々奮闘中。HP https://puryogastudio.com/

取材・文:高野真利 撮影:中原義史 Web構成:中村聡美

 

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