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森弘子に学ぶ!女性のための栄養学 vol.13 生命のカプセル!?“卵”の栄養学

森弘子

森弘子もり・ひろこ
ボディフィットネス東京大会4連覇、日本代表としてアジア大会などの国際大会に出場。トレーナーとして活動する一方、フィットネスジムのコンサルティング、サプリメント開発を行う。

※Woman's SHAPE&Sports vol.29に掲載された「森弘子に学ぶ!女性のための栄養学 vol.13 生命のカプセル!?〝卵〟の栄養学」をWEB用に編集したものです。

卵は私たちの食卓に欠かせません。江戸初期に刊行された『本朝食鑑』(元禄10年/1697年)にはすでに卵の滋養強壮効果が記され、『万宝料理秘密箱』(天明5年/1785年)という料理本には103種におよぶ卵レシピが紹介されています。

低栄養が健康を阻害する最大の要因だった時代、〝病気の治療に効果を発揮する妙薬〟として卵は珍重されていました(※1)。

いまでは日常的な食べ物になった卵ですが、多彩な栄養素を含むため〝完全食〟とも言われます。今回はそんな卵の魅力をあらためてひも解いてみたいと思います。

生命のカプセル〜卵の栄養価について〜

手のひらにすっぽり収まる卵は、ひよこの誕生に必要な栄養素がギュッと詰まった、いわば「生命のカプセル」です(※2)。

卵の成分で最も多いのはたんぱく質で、全卵60g(Mサイズ相当)のたんぱく質量は約7.3g。摂取したたんぱく質が体内でどれだけ保持されたかを示す指標である正味たんぱく質利用率は、全卵の場合90〜94%と、主要な食品のたんぱく質中で最も高い値を示しています(※3)。また、卵のたんぱく質を構成するアミノ酸は、私たちの体を作るために必要な必須アミノ酸をすべて満たしています(アミノ酸スコア100)。

たんぱく質の次に多いのが脂質(6.1g/60g)です。脂質のほぼすべてが卵黄に含まれており、卵が孵化する過程で、雛の発生と発育に必要なエネルギーと細胞膜の構成成分となります。そのうちの65%が中性脂肪、31%がリン脂質、そして4%がコレステロールで構成されています。

リン脂質は動植物すべての細胞に存在する細胞膜の基本成分です。卵黄のリン脂質の8割はホスファチジルコリン(レシチン)で、約13%のコリンを含みます。コリンは筋肉を収縮させる神経伝達物質アセチルコリンの前駆体なので、不足すると筋肉の運動機能が落ち、競技パーフォーマンスの低下へとつながることが報告されています(※4)。

また、アメリカのFDA(食品医薬品局)はコリンをビタミン様物質としてライフステージに応じた摂取基準を定めており、特に妊婦や授乳期の女性には摂取強化が促されています。

不足はビタミンCだけ〜ビタミンとミネラル〜

卵100g(およそ1個半)が含有するビタミンおよびミネラルと、成人女性1日あたりの充足率を下記の表1・表2にまとめました。※充足率:成人女性が卵を100g食べた場合、1日に必要な各栄養素のうち何%を摂取できるか、『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』と『日本人の食事摂取基準(2020年版)』に基いて計算

森弘子

森弘子

とくに注目したいのが、日本人に不足しがちなビタミンA、ビタミンD・ビタミンE・ビタミンB12・ビタミンB2・葉酸や、リン・鉄・亜鉛などのミネラルです(※5)。およそ1個半の卵で1日に必要な量の20%以上、多いものでは40%以上を満たしています。また、生体内で酵素やたんぱく質の一部を構成し、抗酸化作用を持つセレンについては96%もの充足率を示しています。

卵のコレステロール〜1日何個まで?〜

1960年代後半、コレステロールと循環器疾患の関係が問題視され、アメリカ心臓協会はコレステロールの摂取量を1日300mg以下、コレステロールが多い卵は週3個までという摂取基準を提示しました。これ以来、卵を何個食べて良いかということがたびたび話題になります。

しかし、コレステロールはすべての細胞膜の構成成分であり、またホルモンやビタミンD、胆汁酸の原料として生命の維持に不可欠な成分です。

現在では食事によるコレステロール摂取と血清コレステロールとの間に相関関係は認められておらず、『日本人の食事摂取基準』(厚生労働省)は2015年版以降、コレステロールの目標量を撤廃しています。最新の2025年版では「コレステロールに目標量は設定しないが、これは許容される摂取量に上限が存在しないことを保証するものではない。また、脂質異常症の重症化予防の目的からは、200mg/日未満に留めることが望ましい」としています。

また『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版』でもコレステロールの摂取量を200mg/日未満に抑えることが推奨されており(卵1個のコレステロールはおよそ250mg)、脂質異常症患者のほか、遺伝的にコレステロール摂取の影響を受けやすい家族性高コレステロール血症の患者の場合も注意が必要です(※8)。

一方、日本人を対象に1日2個以上卵を摂取したグループと、ほとんど摂取しないグループとの比較研究では、卵の摂取量と冠動脈疾患および脳卒中疾患との関連は認められていませんでした(※6)。

また、卵を摂取した際にコレステロール濃度がどう変化するか検討した興味深い研究報告もあります。30歳以上の日本人男性4077人、女性5186人を14年間追跡調査したところ、男性では卵の摂取量と総コレステロール濃度に優位な差は認められなかったのですが、女性の場合、卵をほとんど摂取しないグループと1日1個摂取するグループの総コレステロール濃度の平均値は188〜192mg/dℓの間でほとんど差は認められなかったものの、1日2個以上摂取するグループはそれ以下のグループに比較すると、総コレステロール濃度の平均値が約10mg/dℓ高く202mg/dℓだったということです。

他にも、脂質異常症を含む日本人110人を対象に卵3.5個分の乾燥卵黄を通常の食事にプラスして摂取させたところ、4週間後の総コレステロール濃度とLDL(悪玉)コレステロール濃度に優位な変化はなかったという研究報告もあります。

さらに卵のコレステロールに関しては、次のような研究報告があります。
・卵白タンパク質はコレステロールの吸収を阻害する
・卵白タンパク質に多く含まれる含硫アミノ酸は肝臓におけるコレステロールの分解を促進する
・卵黄のリン脂質には血中コレステロール濃度の上昇抑制作用がある(※7)。

こうしたことから、健康な人であれば、1日1〜2個の卵を摂取しても問題はないだろういう意見が現状では優勢です。

トレーニーにうれしい卵の効用

脂質を抑えてたんぱく質を摂取するために、卵白のみを積極的に食べるというトレーニーも多いと思います。卵白は水分を除くとほとんどがアミノ酸スコア100の良質なたんぱく質です。卵白に含まれるたんぱく質の研究は卵黄の研究ほど多くない印象ですが、松岡亮輔らによる次の研究報告は、卵白由来のたんぱく質がトレーニーの体づくりに効果的であることを示唆しています〈『卵白(乳酸発酵卵白)の新規保健機能研究とその応用』日本栄養・食糧学会誌2021/松岡亮輔、木村守、有満和人、兒嶋高志〉。
・卵白たんぱくのDIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)は1・45で、乳性たんぱくと同等である(注:DIAASは、食品に含まれる必須アミノ酸の消化吸収率を加味した値で、アミノ酸スコアのように上限値で切り捨てられることなく、より正確にたんぱく質の栄養価を評価することができる)
・卵白たんぱく質の正味たんぱく質利用率は非加熱、加熱ともに高い値を維持しており、乳性たんぱくよりも高い
・卵白たんぱく質を運動時に摂取することで、筋肉を増加する
・卵白たんぱく質摂取による筋肉および内臓脂肪への影響を評価したところ、卵白はカゼインに比較して体たんぱく質を増加させ、体脂肪および内臓脂肪を減少させた

体づくりのために効率的にたんぱく質を摂取するという場合、卵白は優秀なたんぱく質源です。ただ、たんぱく質摂取を第一義に置くと、ついつい卵黄を邪魔者扱いしがちですが、ぜひとも卵黄に含まれる栄養素とその生理活性作用も活かす、無駄なくバランスの良い食べ方をお忘れなく。

※1 鶏卵の品質-消費者の嗜好性と鶏卵の利用性の側面から(田名部 尚子日本家禽会誌32巻1号(1995))
※2 卵の栄養機能とアンチエイジング効果(八田一)
※3『乳肉卵の機能と利用 新版』(玖村朗人/[ほか]編著 アイ・ケイコーポレーション 2018.10
※4 コリン化合物の重要性と運動機能への影響(大久保 剛 オレオサイエンス 第20巻第4号2020)
※5 日本人に不足しがちな栄養素に基づいた食品分類(株式会社明治 第77回日本栄養・食糧学会大会発表)
※6 鶏卵の知識とおいしさ(峯木眞知子 日本家政学会誌68−6)
※7『タマゴとコレステロール 科学的根拠に基づいた知見』(タマゴ科学研究会 2015.6)
※8 卵と健康:コレステロール問題を中心に(菅野道廣 シリーズ研究小集会 第42回卵部会)

簡単!おいしい!ヘルシー卵焼きレシピ

豆腐入り玉子焼き【材料】(2~3人分)
卵…2個、豆腐…150g、顆粒出汁…小さじ1、砂糖…小さじ1、醤油…小さじ1、片栗粉…小さじ半分【作り方】
①豆腐を軽く水切りして、ホイッパーで滑らかになるまで混ぜる。
②①に全卵2個とすべての調味料を入れてよく混ぜる。
③②の卵液を玉子焼き器で焼く。森弘子

左:豆腐入り玉子焼き 右:卵白だけのたまご焼き

卵白だけのたまご焼き

【材料】(1~2人分)
卵…3個(卵白のみ使用)、鰹節…小分けパック半分程度、砂糖…小さじ1/3、醤油…小さじ1

【作り方】
①卵白をホイッパーでしっかりと混ぜる(ゆるめのメレンゲ状になるまで)。
②卵以外の材料を混ぜ合わせ、玉子焼き器で焼く。
※残った卵黄は砂糖を加えた卵液にすれば冷凍可能。お菓子作りなどに利用できる

ボディメイクのための卵料理レシピ

栄養豊富な卵をサラダで、スイーツで!ボディメイク食のマンネリ打破にも。

ブルッティマブォーニ

森弘子

エナジーバーの代わりにも!

【材料】
卵(卵白のみ使用)・・・・・・・・・・・・・・3個
アーモンド(無塩ロースト)・・・・・・・・・90g
甜菜糖・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60g

【作り方】
①アーモンドを粗く刻む。オーブンを160度に予熱する。
②卵白に甜菜糖を加え、ホイッパーで混ぜてメレンゲ状にする。
③②にアーモンドを加えてざっくりと混ぜ合わせる。
④③を小鍋に移し、弱火で加熱する(全体が温まり、粘りが出るくらいまで)。
⑤クッキングシートを敷いた天板に、④を匙ですくって置く(高さが出るようにふんわりと)。
⑥⑤をオーブンに入れて160度で30分焼く。

卵サラダ

森弘子

卵に不足する栄養をプラス

【材料】(1人分)
卵・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1個
ブロッコリー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5房
さつまいも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小1
(ドレッシング)
プレーンヨーグルト・・・・・・・・・・・・大さじ2
味噌・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小さじ1
砂糖・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小さじ半分
好みのオイル・・・・・・・・・・・・・・・・小さじ1

【作り方】
①半熟卵を作る(鍋に熱湯を沸かし、常温に戻した卵を入れて、中火で7分加熱)。
②ブロッコリーとさつまいもを蒸す(レンジ調理でも良い)。
③ドレッシングの材料をよく混ぜ合わせる。

文・写真・レシピ_森 弘子

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