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米国フィットネス誌が「肝臓を守れ !」と警鐘を鳴らす理由:高強度の運動負荷から肝臓をケアする重要性とは

筋肉を増やしていく上で、肝臓は極めて重要な臓器の一つだ。しかし、肝臓の不調は自覚症状として現れにくいという側面がある。そのため、健康診断の結果なども踏まえ、日頃から肝臓をいたわる意識が欠かせない。

本記事では、「肝臓を守れ!」という米国フィットネス誌のレポートに基づき、その重要性と効果的なケア方法をわかりやすく解説する。

(IRONMAN2026年6月号「from IRONMAN USA」より転載)

アスリートの健康診断結果は必ずしも良くない

日頃から身体を鍛錬し、高重量での高強度トレーニングを定期的に行っているアスリートは、健康診断においても優秀な結果なのではないかと想像するわけだが、意外とそうでもないことが多い。

例えば、健診の前日や前々日に高強度トレーニングを実施したことで、肝機能に関する値が高くなってしまったという経験を持つ人も少なくないかと思う。

また、クレアチンのサプリメント摂取で、腎機能の検査項目の一つであるクレアチニンの数値が正常範囲を超えてしまうケースもよくある。

こうした健診の数値だけで判断するなら、高強度トレーニングやサプリメントの摂取は「身体に良くない」と判断されてしまうわけだが、実際のところはどうなのだろうか。

高強度トレーニング中に肝臓では何が起こっているのか?

肝機能の状態を示すGOTやGPTはいずれも酵素であり、肝機能の指標として用いられている(※)。GOTは肝臓だけでなく、心筋や骨格筋、腎臓などにも存在する酵素であり、これらの組織が損傷すると血中に漏出して数値が上昇する。

そのため、GOTに関しては、高強度トレーニングによって筋損傷が生じた場合にも上昇する可能性があるのだ。

一方、GPTは主に肝細胞に多く存在する酵素であり、その数値が高い場合には脂肪肝、アルコール性肝障害、ウイルス性肝炎、薬剤性肝障害などの肝疾患が疑われる。

ただし、骨格筋にも一定量存在するため、激しい運動によって骨格筋が損傷されると軽度の上昇を示すことがある。

では、高強度トレーニングを行っている場合は、肝機能の問題をどうやって判断すればいいのだろうか。肝機能の指標はGOTやGPTだけでなく、ALP、γGTP、ビリルビンなどもあり、そういったものも含めて総合的に評価する必要がある。

そのため、たとえGOTやGPTの数値が高くても、他の肝酵素の数値が正常であれば、直ちに深刻な肝臓に問題があるとは見なされず、主に骨格筋など肝臓以外の組織に起因している可能性も考慮されるのだ。

編集注

※日本の臨床現場や健康診断の結果表では、現在、国際標準に基づき、GOTは「AST」、GPTは「ALT」と表記されるのが一般的

運動と肝機能の関係について、ラットを使った研究があるので紹介しておきたい。この研究では、ラットに高強度のトレッドミル運動を2時間行わせ、肝酵素の放出量や細胞の状態を確認する実験が行われた。

運動直後には変化がなかったものの、終えてから6時間後に高強度運動群で血中への肝酵素の漏出といった一時的なストレス反応が観察された。

論文では、このような反応が起こったのは「血流の再分配」にあると分析・示唆されている。激しい運動中、身体は筋肉への酸素供給を最優先するため、消化器系などの内臓への血流を一時的に制限する。

これは、生存に関わる緊急事態において筋肉の出力を最大化しようとする、生体に備わった本能的な反応であると考えられる。

このとき、内臓諸器官では血流の減少に伴い、一時的な酸素不足が生じる。トレーニング強度が高ければ高いほど、この血流の制限は顕著になり、運動後の血流再開時に生じる酸化ストレスなどの「内臓負担」も大きくなると言われている。

こうした研究データから、高強度トレーニングが肝臓に与えるインパクトは、私たちが想像する以上に大きい可能性があるということが示唆されているのだ。

 

激しい運動後の 「内臓ストレス」 という隠れた問題

運動が終了すると、筋肉に集中していた血流が各内臓へと一気に流れ込む(血流の再分配)。これにより酸素供給は急激に回復するが、同時に代謝の過程で一時的に活性酸素種(ROS)の発生が促進される。

このメカニズムは、医学界で知られる「虚血再灌流(きょけつさいかんりゅう)障害」と共通の性質を持っており、高強度トレーニング後には、肝臓をはじめとする内臓諸器官に微細な酸化ストレスを与えることが知られている。


肝臓は再生能力が高く、損傷への耐性が強い臓器である。そのため、通常のトレーニングが原因で深刻な肝不全に陥る懸念は基本的にはない。

しかし、過剰なアルコール摂取や特定の薬物利用といった肝毒性因子が重なる場合には、ダメージが進行するリスクが生じる可能性がある。

肝臓のコンディションをサポートする戦略の一つとして、抗酸化能を高めることが挙げられる。例えば、主要な内在性抗酸化物質である「グルタチオン」のレベルをサポートすることで、酸化ストレスの影響を緩和できる可能性がある。

グルタチオンの生成を助ける栄養素としては、ホエイプロテイン、α-リポ酸、シリマリンなどが知られている。また、γ-リノレン酸を含むボラージ油や月見草油も、体内環境を整える一助となると考えられている。

 

積極的に食べたい食材

【グルタチオンのレベルを高めるのに推奨される食材】

卵/鶏肉(特に胸肉)/魚(サバ、イワシ、サーモン)/赤身肉/乳製品(ヨーグルト、チーズ)/大豆製品(納豆、豆腐)/野菜(ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、芽キャベツ、ルッコラ、ダイコン、カブ)

【グルタチオンを増やす目的でサプリメントを摂取する際にチェックしておきたい成分】

システイン/グリシン/グルタミン酸

【幹細胞を直接保護してくれる摂取を意識したいポリフェノール】

緑茶、抹茶(カテキン)/コーヒー/赤ワイン(ただし適量)/カカオ/ブルーベリーなどのベリー類/ターメリック

注意すべき生活習慣

健康な肝臓を維持するためには、日頃の生活習慣に悪癖があるなら早めに改善することを勧めたい。例えば、以下の事柄に覚えがある人は注意が必要だ。

・過剰のアルコール摂取
・果糖の過剰摂取(特に清涼飲料水)
・加工食品の摂取
・カロリーの過剰摂取(慢性的な場合)
・睡眠不足

健康診断の結果に向き合う重要性

筋発達を目指している人の中には、特定栄養素の過剰摂取や高強度トレーニングのやりすぎ、疲労回復を無視したトレーニング計画など、何かと暴走してしまいやすい人が一定数いるが、それでは健康的な生活習慣になるはずのトレーニングが、逆に身体を壊す方向へと進んでしまうことになる。

実際、極端なことを実践している人が定期検診を受けてみると、肝機能や腎機能、脂質代謝、血糖指標などが予想以上に悪化しているケースは珍しくない。

フィットネスにおける成功とは、長期的な健康と身体機能の維持を両立させることであり、見た目の変化だけではない。

日頃から高重量に挑んでいるアスリートやトレーニング愛好者は定期的な健康診断を受けるようにし、診断結果にしっかりと向き合い、健康を損なうことにもなる行き過ぎた行為は厳禁であると肝に銘じてほしい。

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