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ぱんちゃん璃奈を知る。REBELS王者までの軌跡と未来のビジョン[ロングインタビュー]

11月8日に東京・後楽園ホールで開催された「REBELS67大会」。人気キックボクサーで、REBELS-BLACK女子46kg級王者のぱんちゃん璃奈選手(STRUGGLE)がデビュー9連勝を飾った。今回は彼女の強さの秘密を探るため、Fight&Life Vol.81(10月23日売)に掲載されたREBELS-BLACK初代王座決定戦後(8月30日)のぱんちゃん璃奈選手のロングインタビューを公開します。

8月30日のREBELS-BLACK女子46kg級 初代王座決定戦でMISAKIを破り、僅か8戦目でベルトを獲得したぱんちゃん璃奈。彼女の強さの秘密を探る。
取材・文_安村発 撮影_AP,inc.

──REBELSタイトル奪取おめでとうございます。試合では首相撲に徹底していましたが、作戦通りでしたか?
P 打ち合いでは勝てないなと自分では思っていて、勝つ確率を1%でも上げたいと思ってああいう戦い方になりました。突進力だけを警戒していてワン・ツー・スリーを当てて相手が入ってきたところにヒザを合わせる作戦で、自分が下がりながら打つ練習もしていたのですが、それができず割と最初の一発だけですぐに組んでしまいそれで勝てると思ってしまいました。
──ご自身のSNSでは﹁打撃がしたい︙次はもう組みたくない﹂と言われていましたが、後悔はありますか?
P 3Rだけでも自分がもっと打撃をやるべきでしたが、あの戦い方は周りから何を言われようと自分には100点を与えたいと思っています。でも映像を見返すと、この場面で打撃ができたなと思える場面があったので次の試合で打撃を出して自分が楽しいと思える試合を久々にやりたいですね。
──MISAKI選手のベルトに対する執念も相当でしたが、それは戦っていても感じました?
P 戦う前からベルトに全てを懸けているなと凄く思っていました。私も執念はかなりあり、命を懸けていたので相当疲れましたね。コロナウイルスの影響もあって2回試合が延期になったのでただ早くこの状況から解放されたいというのが一番大きかったです。今のままでは勝てないと思う日が多く、そしていつ試合も開催されるかわからない︙︙試合が決まってからのあの半年間は長かったです。勝敗はわからず試合が終わった時の夢を毎日のように見ていて、相当プレッシャーを感じていたのかなと思います。
──そういう中でモチベーションの持続はどのようにしていたのですか。
P 4月から5月に延期。さらに8月に延期となり、ここでも延期となったらそのままずっとMISAKI戦への練習しかできないことになるので、そこで絶対にやらせてもらいたいと思いました。MISAKI選手対策の練習は至近距離での練習ばかりで普通の練習とはかなり違ってくるので、とりあえずこの試合を早く終わらせて次の強くなるための練習をしたいということを考えながらやり切ろうと。
──ベルトを獲って11月8日のREBELSではチャンピオンとしての初戦が決まりました。
P 次の相手のMARI選手は距離を取るのでほぼ打撃戦になって噛み合う試合になると思います。コロナで半年間試合ができていない分、今年はあと1~2試合をしたいですね。11月の大会でしっかり勝つことができたら、大晦日のRIZINに出たいですね。
──キックボクシングの試合でキャリアを積んできたぱんちゃん選手がなぜRIZINなのでしょう。
P もちろん華やかな舞台だからというのもありますが、私はREBELS、KNOCK OUTで育てていただきました。先日にはRISEで女子トーナメントが開催されて興味もありましたが、6カ月ずっと精神的に張り続けた状況が続いていたので少し休んで次に進ませたいという鈴木(秀明)会長の意向があったようです。今の状況のまま無理に団体の看板を背負って出てしまうことはプラスではありません。RISEでREBELSの強さを証明するのもREBELSへの恩返しの一つでもありますが、REBELSの今後の方針にそぐわないものになってしまいます。私が強い選手とやっていく最善の方法の一つとして、RIZINに出て知名度を上げること、ニュートラルなリングであるRIZINで今強い選手とやることが可能になります。さらに出ることによって女子キックのことが知れ渡ってプラスになるとも思います。
──SNSでは某選手との対戦に興味を持っていましたね。ぜひ夢のカード実現を楽しみにしてます。まだ今年は2カ月ちょっとありますが、来年のプランはありますか?
P とりえあず目の前の試合を1試合ずつ勝っていくことが今の目標ですが、まだ成長期だと思うので差を付けて勝てる選手になりたいと思います。そして戦いたいトップ選手には一人ずつ勝っていきたいですね。

──今回ファイト&ライフでは初の単独インタビューということで、これまでのパーソナルなこと、キャリアも振り返っていただきぱんちゃん選手の強さのルーツを探っていきたいと思います。小さい頃はどういう子でした?
P むちゃくちゃヤンチャで恐怖心のない子だったので5歳の時は自転車で補助輪を外した数日後にブレーキのかけ方がわからないまま坂道を下ってしまい、このままだと家にぶつかって死んでしまうと思ったのでそのまま飛び降りて顔から落ちて顔半分がズル剥け。その痛い姿で小学校の入学式に参加しました(苦笑)。あと、ジャングルジムや滑り台から飛び降りて、小学生の時は計12~13回は捻挫、ヒビ、剥離骨折、骨折をしていたので年に2回は松葉杖か車椅子生活でした。親はもうしょうがない子だねという感じで、もう家には車椅子が購入してありましたね(笑)。10代後半も雨の日に自転車片手運転や原付バイクで坂道急発進などで骨折3回しましたが、20代になってから恐怖心が出てきて落ち着いたこともありそういうのが一切なくなりました。
──小さい頃の夢は?
P 中学生で歌手になって、スーパーのレジ打ちに憧れていたので30歳ぐらいでやりたいなと(笑)。40~50歳にはタクシーの運転手をやったりと、自分が好きなことをやっていきたいと思ってました。あと釘拾いをしているおじさんを見て、無料で拾ったものがお金になるなんて凄いことだと思って興味を持ち、60歳ぐらいでできたらいいなと思って日記に将来の夢で書いてました。今はさすがにやりたいとは思いませんが(笑)。
──めちゃくちゃ変わった子だったんですね。キックボクシングを始めたきっかけを教えて下さい。
P キックを始める前は水泳、陸上をやっていて、21歳の時に大阪から上京し、当時は大人のバク転教室に通い始めました。その教室ではバク転、アクロバット、アクション、殺陣を習っていました。アクションでは蹴り技などの技を習っていて、その延長戦上で蹴りのフォームをもっと綺麗にしたいと思いはじめ、キックのジムを探していたところ、近所にストラッグルジムがあったので22歳の時に入会しました。
──19年2月のプロデビュー戦となった川島江理沙戦から振り返ってもらいたいと思います。
P ただ前にしか出ていない試合でした。勢いが大事でガードも一切考えることなく、アグレッシブな試合ができたのでいいデビュー戦だったかなと。
──2戦目のSae ─KMG戦。
P 前戦はデビュー戦同士だったので、初のプロ選手との試合だったので不安はありましたが、飛びヒザ、スーパーマンパンチなどの色んな技が使えるぐらいの余裕がありました。倒すことはできませんでしたが、自分の中では良かった試合でしたね。
──プロ3戦目は初の国際戦となったパク・シウ戦。
P 勝てない相手だと思ったので、勝てたことが信じられませんでした。自分の中ではもうちょっと打撃の攻防があると思いましたが、意外と噛み合わなかった試合になりました。頭が当たってしまったこともあるのですが、パク選手の打撃を受けて顔が腫れて鼻が痛かったのでちゃんとディフェンスをしないとこれから顔がぐちゃぐちゃになると思った試合でもありました。
──4戦目の祥子戦。
P 前回の試合から1カ月半しか期間がなく、鼻の治療もあってスパーリング系の練習をちゃんとすることもなくいきなり試合だったので今までで一番悪い試合でした。その4戦目以外が全部フルマークの判定勝ちなんですが、この試合だけ判定2─0だったのでこの試合の記録は消したいぐらいなんです。あと、リカバリーをなめてしまい、自分でちゃんとしたパフォーマンスのできる段階まで持っていけず、そこで初めて負けることを考えましたし、こんなんじゃ次は勝てないなと。この試合があったからこそ、もっと必死にならなきゃと心を入れ替えることもできました。
──5戦目はJ ─GIRLSの現王者MIREY選手との対戦でした。
P 初めてベルトを持った強い選手と戦えたので5戦の中でも一番嬉しかった試合でした。身長差がある試合だったので長い距離での戦いを徹底すれば勝てるとも思い、不安もありましたが回転系を使ったりと色んな技を試せたかなと。
──6戦目は初のタイ人、ペットチョンプー・モー・クルンテープトンブリー選手との対戦で初のTKO勝ちでした。
P 階級的には下の選手だったので絶対にKOしなきゃいけない気持ちもあったので勝つのは当たり前。あとはどれだけいい勝ち方、倒し方をするかがテーマでした。この試合でも余裕があったので初めて左ハイも出して倒せたことで、自分は蹴りが使えるんだと自信にもなりました。
──そして7戦目では祥子選手との再戦でした。
P 前回の試合から半年経って私自身はかなり変わったので自信があってもっと差を付けて勝てると思っていました。試合映像を見返してみるとパンチをたくさんもらってないですし、打撃も速くそこまで悪くない内容だったのですが、そこまで大差を見せられずローを効かせることができたので蹴り技主体でいけるなと自信を持ちました。
──そして8戦目でMISAKI選手とタイトルマッチになります。昨年2月、24歳の時にプロデビューしてプロ歴はもうすぐ2年経ちますが、キックを通して自身のことで気付いたことはありますか?
P ここまでのめり込めるものが人生であるんだなと。あと、キックをやることで自分に自信が付いたと思います。自分でもできることが一つでもあれば人って変わるんだなと思いますし、努力することで成長することの楽しさもわかりました。人生ってこんなに楽しいんだ!?と思うようになり自分が生き生きすると、周りの人が支えてくれたり、力になってくれたりと全部が良いように転ぶんです。キックを始める前は私は運が悪い人間だと思っていましたが、今は運まで良くなって怖いぐらい幸せなんです。

Panchan Rina
1994年3月17日、大阪府出身
身長164㎝、体重48.0kg
初代REBELS-BLACK女子46kg級王者
戦績:9戦9勝(1KO)
STRUGGLE所属


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