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6.13RIZIN決戦直前!朝倉海ロングインタビュー「優勝しなければ意味がない」

国内最激戦区、バンタム級でついに開催されるメガトーナメント。 強豪ひしめく16名のなかに「朝倉海」の名もあった。昨年末の堀口恭司戦からの復帰戦にこのトーナメントを選んだ真意とは?「強い」あるいは「過大評価」と口にした選手の名は?

取材・文_藤村幸代 撮影_ AP,inc.

朝倉海選手

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──かねてより開催が待たれていたRIZINバンタム級トーナメントが16名エントリーのメガトーナメントとして、ついに実現します。海選手が出場を決めた理由から教えてください。
海 まず、そこからですよね。このバンタム級での16人トーナメントの話は、もともと聞いていたわけではなく、開催することを知ったのは榊????原(信行・RIZIN FF CEO)さんが記者会見で話しているときだったんです。僕が参戦することも、そこで初めて知りました。それで、「何も聞いてないけどな」と(笑)。そういう経緯もあって、最初は正直、出たくないなという感じで受け止めました。
──出たくないと思った一番の要因は、やはり長く拘束されてしまうということですか?
海 それは大きいですね。16人のトーナメントとなると、1年間まるまる縛られる感じになって、2021年がこのトーナメントで終わってしまう。そもそも、僕のなかでは「今年は海外に挑戦したい」という目標がありました。実際、ベラトールなどに出られる話もあったので、僕としてはそっちで勝負したいという気持ちが強かったんです。ベラトールの選手をRIZINに呼んでもらって試合をしてもいいし、反対に僕がアメリカに乗り込んで試合をしてもいい。そういう目標を掲げていたさなかに今回のトーナメントの話が出てきたので、最初は「何だよ」という否定的な感情が出てきてしまいました。
──世界への挑戦は、ずっと前から公言してきましたしね。そこから考えが変わっていったのは、どんなきっかけからですか。
海 まず、世界の状況のことがありましたよね。コロナによって今は国内での生活でさえ、いろいろと制約があって自由の利かない時期ですし、まして海外に挑戦するとなったら、どうしてもコロナに左右されてしまう。いつ試合が組まれるかわからないし、最悪、試合ができなくなる可能性もある。そうした不安定な選択をするよりは、日本でできる試合を確実にしていったほうがいいのかなという考えにだんだん変わってきました。あとは、やっぱり去年の年末に堀口選手に負けていることもありました。
──20年大晦日の堀口恭司戦では、カーフキックで劣勢に追い込まれ1ラウンドTKO負けでリベンジを許す形となりました。
海 その負けによって自分の評価も落ちたという自覚はありますし、日本で最後に負けた状態で海外に挑戦して、果たして期待してもらえるだろうかということも考えました。ここはしっかり周りの評価を取り戻して、「日本で一番俺が強いんだよ」ということを証明してから海外に行ったほうが、みんなの期待値も上がって応援してもらえるんじゃないかと。その気持ちが強くなってきて、ここはちょっと、試練ではないけど乗り越えないといけない壁かもしれないと考え方を変えて、今回のトーナメント出場を選択しました。
──海選手はこれまで、自分より強い相手や高い壁に挑み、乗り越えていくことで実力や周囲の評価を上げてきました。今回は、図式としては挑戦を受ける側、壁として立ちはだかる立場ですよね。
海 普通に考えたら出ないという選択肢になりますよね。
──海選手の場合は「勝って当たり前」でも、相手が海選手を破れば一気に名をあげることができる。リスクとリターンの不公平感はたしかにあるでしょうね。
海 でも、僕はつねづね日本の格闘技を盛り上げたいと言ってきているし、自分の求められている立場や格闘技全体のことを考えてみたときに、やっぱり僕がこのトーナメントに出て盛り上げるのが一番格闘技のためになるだろうし、結果的には自分のためにもなるのかなという考えになりました。
──最初に会見でトーナメントの話が出てから出場を決めるまでは、どれくらいかかりましたか。
海 すぐに答えを出したわけではなくて、わりと長く考えていましたね。その間に榊原さんとも食事に行ったりして、僕が出ないとトーナメントはできないと、何度も気持ちを伝えられて、「出るしかないのかな」というところから、「このトーナメントに挑戦しよう」という思いにだんだん変わっていった感じですね。
──では、16人のなかで誰が一番強いかではなく、あくまで自分の強さを改めて証明するトーナメントというとらえ方ですか?
海 そうです。僕としては、日本で負けているようでは海外に挑戦なんて話にならない、そんなこと言っている場合じゃなくなるなっていう感覚なんですよね。だから、僕のなかでは優勝が最低条件で、優勝しなければまったく意味がないと思っています。
──1回戦の対戦相手を決める公開抽選会では、2番目に選択権を得て、すでに座っている渡部修斗選手を選びました。
海 みんなが求めているのは、1回戦からみんなが評価する選手、強いと言われている選手との戦いかもしれないですけど、僕からすれば最初から優勝することしか考えていないので、別に1回戦が誰でも関係ないし、すぐに決まる相手を選ぼうという考えでした。強い選手は当然、勝ち上がってくるし、最終的にトーナメントの山の上のほうで戦える。1回戦でいきなり当たるより、そのほうが面白いかもしれないですしね。とにかくワンマッチで終わる戦いではなくトーナメントなので、そこにこだわりはなかったです。
──抽選会に向かう途中で収録したユーチューブでも、「誰が先にいたとしても、空いている隣りを選ぶ」と宣言していました。
海 僕は今回2番目に選んだんですけど、1番がどの選手であってもその隣りに行きましたし、もし自分の前に3、4人すでに座っていたとしても、一番強いと思う人のところに座るつもりでした。
──ユーチューブでの宣言を有言実行したわけですね。1回戦の相手に決定した渡部修斗選手の印象は?
海 もともと、試合映像はそんなに見ていなかったんですけど、名古屋大会での試合はリングサイドで見ましたね。
──今年3月の『RIZIN.27』では、修斗のホープ田丸匠選手に追い込まれながらも、2Rに得意のリアネイキッドチョークでタップアウトを奪っています。
海 僕のなかでのイメージとしては、寝技を得意としていて極める力、極め切る力を持った選手。あとは泥臭く戦い続けられる、最後まで気持ちが折れないタイプの選手だなという印象はあります。当然、対策もしていますよ。
──1回戦を終えるまでは、渡部選手対策がメインの練習内容となりますか?
海 もちろん直近の選手の対策はメインでしますが、やっぱりトーナメントなのでその先を見据えてもいます。いろいろなタイプの選手と戦うことを想定して、一つひとつの技術を伸ばすような練習をしています。
──1回戦の対戦カードを見て「この選手は上がってきそうだ」と予想しながら?
海 はい。まあ、ある程度ですけどね。

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