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マグネシウムがもたらす身体への影響|筋発達とマグネシウムの関係性

マグネシウムは身体づくりだけでなく、健康維持にも欠かせない栄養素だ。今回はそのマグネシウムがもたらす身体への影響についてトピックごとに紹介していく。

※本記事はアメリカのIRON MANホームページに掲載されたものを翻訳しております。

<本記事の内容>
マグネシウム不足はテストステロン値を下げる?
マグネシウムと寿命の関係
筋発達はマグネシウムに支えられている?

マグネシウム

マグネシウム不足はテストステロン値を下げる?

アメリカ人の70%がマグネシウム不足に陥っているようで、このことは身体づくりに励む人たちにとっては大きなマイナスになる。

というのも、体内のマグネシウムレベルとテストステロンレベルは比例するからだ。つまり、マグネシウムが低値であれば、体内で作り出されるテストステロンのレベルも低値になることが多いということだ。

『インターナショナル・ジャーナル・オブ・アンドロロジー』は男性病学の専門誌で、これに掲載されていた研究によると、テストステロンやインスリン様成長因子1(IGFー1)とマグネシウムには良好な関係があるということだ。

マグネシウムには特定の炎症を抑制する働きがあり、その炎症の多くがアナボリックホルモンの生成を妨害することが知られている。

つまり、マグネシウムがそれらの炎症を抑えてくれれば、アナボリックホルモンの生成も順調に行われるのではないかというのが研修者たちの推測なのだ。

食事だけでは十分なマグネシウムが摂れないならサプリメントを利用してもいいだろう。その際は、身体に吸収されやすいクエン酸マグネシウムを選択するといい。クエン酸マグネシウムは、一般的な酸化マグネシウムよりも吸収がいいことがわかっている。

マグネシウムと寿命の関係

6万人近い被験者の協力を得て行われた、マグネシウムに関する長期間の実験があるので紹介しよう。この実験では、食事でマグネシウムを意識して摂るようにすることで、循環器系の疾病で命を落とすリスクを50%近くも改善できたという結果が得られたのだそうだ。

実験を行ったのは日本にある大阪大学大学院医学系研究科に所属するウェン・ジャン氏と複数の大学から集まった研究者チームで、40歳~79歳の健康な日本人5万8千615人を対象とした「日本多施設共同コーホート研究」からのデータを活用した。

まずは全被験者の寿命を整理したところ、15年の研究期間に2千690名の被験者が循環器系の疾患で亡くなっていた。そして、男性では出血性脳卒中による死亡率が、女性では脳卒中、虚血性脳卒中、冠動脈性心疾患、心不全、心血管疾患全体による死亡率が、マグネシウム摂取量に反比例することが示された。

つまり、日常的にマグネシウムの摂取量が少なければ少ないほど、これらの疾患による死亡のリスクは高まる傾向が見られたわけだ。実際、被験者の中で最も体内のマグネシウムレベルが高かった被験者たちは、低かった人たちよりも循環器系の疾病で命を落とすリスクが50%も低かった。

カルシウムやカリウムも循環器系の機能維持に欠かせないミネラルだが、研究者たちが調べたところ、マグネシウムが寿命にもたらすほどの影響は見られなかったそうだ。

そういったことから、マグネシウムは循環器系疾患による死亡率と密接に関わっており、特に女性においてはその傾向が顕著になると研究者らは結論づけた。

@参考文献
Zhang, W., et al. (2012). Associations of dietary magnesium intake with mortality from cardiovascular disease: The JACC study. Atherosclerosis. 221:587-595.

筋発達はマグネシウムに支えられている?

マグネシウム

アスリートの多くがマルチビタミン&ミネラルのサプリメントを毎日欠かさず摂っているが、中には、ビタミンはともかくミネラルは不要なのでは?と考えている人もいるのではないだろうか。確かに、そう思ってしまうのも理解できるが、毎日とは言わないまでもせめて2、3日に1回のペースでミネラルのサプリメントも摂ってほしい。

なぜなら、ミネラルは筋発達に欠かせないにもかかわらず、高強度トレーニングを行うたびにその多くが身体から失われるからだ。

『ウェル・ビーイング・ジャーナル』の執筆者のひとりであるジェイムス・サウス氏は、マグネシウムが重要である理由について「砂糖をATPに変換する解糖系サイクルに不可欠なミネラルだから」と述べている。

また、細胞の中にあるマグネシウムの約80%はATPとの複合体になっている。そのため、マグネシウムは体内のATPレベルを安定させる役割も果たしており、さらには細胞へのホルモン効果を仲介するメッセンジャーとしても作用しているのだ。

細胞の中のATPやホルモン作用に影響するとなると、マグネシウムが筋発達を左右するひとつの要素になるという推測には信ぴょう性がありそうだ。さらに、マグネシウムは神経機能を活発にする働きもあるとされているので、筋肉と神経の連動性を高めることにも関わっていると考えられる。

マグネシウムが筋発達に影響しているという推測をまとめると以下のようになる。

●砂糖をATPに変換する解糖系サイクルへの関与:運動中のATP利用率が高まることが考えられる。
●ATPと結びついてATPを安定させる:運動中のATP供給が速やかになることが考えられる。
●細胞へのホルモン作用を高める:筋線維にホルモンが作用しやすくなることが考えられる。
●神経機能を活発にする:筋肉・神経系の連動性が向上することが考えられる。

以上のことはまだ推測の域を出ない。それでも、マグネシウムが筋発達と無関係だとは言えないので、マグネシウムの推奨摂取量を満たすように心がけることは無駄にはならないはずだ。

そういったことから、マグネシウムを積極的に摂るようにしたいところだが、サウス氏は食事から十分な量のマグネシウムを摂るのは難しいと考えている。

「研究によると、アメリカ人のマグネシウム摂取量は、1900年代は1日500mgだった。しかし、1990年代になると215~283mgにまで減少している。ふだんの食事だけでマグネシウムの1日推奨量である400mgを満たすことは困難だ。これが現実なのだ」

読者の多くはウエイトトレーニングを定期的に行っているはずなので、一般の人以上にマグネシウムの摂取を意識する必要がある。そのためにはサプリメントの利用は必須であると言ってもいいだろう。

とはいっても、実際にマグネシウム不足を実感している人は少ないのではないだろうか。しかし、以下のような症状を経験しているなら、もしかしたらマグネシウムの不足が原因のひとつかもしれないので確認しておくといいだろう。
●疲れやすい。だるさや疲れが取れない
●頭痛になりやすい
●不安になったり、イライラしたりすることがよくある
●落ち込むことがよくある
●筋肉のけいれん、手足の震えを経験することがよくある
●物忘れが多く、集中力がなくなってきた
●眠れない
●便秘が続くことが多い
●食欲がない
●感情の抑揚が激しい

これらの症状は多くの人に覚えがあるはずで、特にコンテストに向けた準備期の“あるある”ではないだろうか。食事制限をする時期はふだん以上にマグネシウムの摂取に気を配るようにしてほしい。

いずれにしても、先のような症状を経験しているならサプリメントを活用したほうがいいだろう。マグネシウム不足に陥るくらいなら、マルチミネラルのサプリメントを2、3日おきに1回程度のペースで摂ることは誰にとってもほとんど問題はないはずだ。

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