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”分厚く大きく広がった背中”須江正尋の2年間の強化ポイント

分厚く大きく広がった背中を持つ、須江正尋選手。昨年10月にオープンした通称〝須江ジム〞でのトレーニング、また、今後どのように活動していくかを語っていただいた。

取材・文:IM編集部 撮影:北岡一浩

――2019年の日本選手権後から、現在までのトレーニングで何か変わったことはありましたか?

須江正尋選手

伝説の背中を持つ須江正尋選手のトレーニング

須江 19年以降、トレーニングはほとんど家とここ(須江ジム)でやっていますが、所属は現在もサンプレイです。昨年の10月からこのジムでもトレーニングをはじめて、家ではサブトレーニングという感じです。家からジムに主要機材を移設したこともあって、家のトレーニングルーム(6畳間)には、ダンベルとレッグエクステンションとラットプルマシンだけ残してあります。家では最低限やれることをやっているという感じですね。以前は家に、パワーラック、スミスマシンとレッグプレスなども置いてあって、足の踏み場もないような感じでした(笑)。ただ、今はサイクルが上手く回せていません。昨年の10月までは今まで通りできていたものが、ちょうどそのころを境に職場の部署が変わって急に仕事が忙しくなってしまい、平日にほとんど時間が取れず思うようにトレーニングができなくなってしまいました。今は土日休みなので、休みの日にはここで目一杯トレーニングをして、平日は家でサブ的なトレーニングをしています。半年ほど前までは、せっかく作ったジムがもったいないので平日の夜中にもここでトレーニングをすることがありました。真夜中に、周りが寝静まっている中、ジムのシャッターをガラガラ開けて、忍び込むようにして入って真っ暗な中こっそりトレーニングをするんです。ただ、真夜中に人目をはばかって「侵入」するのに気が引けて、今はやめています。ここを作ってから、ちょうどのタイミングで頻度は落ちてしまいましたし、サイクルも変則的になりましたね。ジムを作れば家トレの制約から開放されて充実したトレーニングができると思っていたのですが、逆でした。家賃を払って機材を置いているだけのようなもので、本当に、なんのためにここを作ったんだろうって思っています(笑)。

――トレーニングはどのように行っていますか。
須江 基本的には4分割で、脚・胸と三角筋前部・背中・三角筋後部と腕・三角筋側部という分割にして、特に脚と背中はここでしっかりやるような感じで、弱い部位強い部位を徹底して行っています。

――サンプレイとここの環境で、大きな違いは感じていますか。
須江 マシンが全然違うので、使い勝手というところの違いはありますが、どこであってもやることはそんなには変わりません。サンプレイでも長いことトレーニングをやってきて、慣れ親しんだものもあり、そこでしかできない、得られない刺激というのはありますから、どっちが良いというのはないですね。その場所特有の刺激を重視して、トレーニングを行うように意識しています。

――須江選手は、ここを正式にオープンして、後継の指導をするなどの目標はありますか?
須江 はい。今後は、そういったことに時間を割いていければなと思っています。ただ、それは自分がボディビルを辞めるということではなく、ここでいろんな方と接しながら、私自身現役としてやり続けることに変わりはありません。確かに今までのキャリアの中で離れていたときもありましたが、選手としての矜持を失ったことはありませんでした。人は誰でも老いますし、時の流れに抗うことはできません。いつか自分に納得がいかなくなったら、そのときは表舞台から姿を消していくのかなと思いますが、それがいつかは分かりませんね。

――19年の日本選手権から約2年が経ち、福岡県ボディビル選手権のゲストポーズで、久しぶりに須江選手の身体を観る機会がありました。そのときに、バキュームポーズを見せていましたが、何かテーマがあったのでしょうか。
須江 クラシックフィジークというカテゴリーができて、JBBFでも盛んになっていますし、昨年はJBBFの依頼でモデルを務めさせていただきました。30年前は、バキュームをやっている選手はたくさんいましたが、最近はいなくなりましたよね。それが、クラシックフィジークができて、クラシカルなボディビルが注目されるようになってきたので、もっとそこを推していっても良いのかなという感じですね。

――30~40年前のボディビルを感じてほしいということもあるのですね。
須江 アーノルドや、フランク・ゼーンがいたころのような、そういう時代もあったんですよということを伝えていけたらなと思っています。前に、ある地方のゲストに行ったときに、「あなたみたいな古い選手が出てきてくれるのは、ほんとうにうれしいし面白いんだ」と言われました。「古い選手」というのには何となく抵抗がありますが(笑)、それこそアーノルドやフランク・ゼーンの時代の選手と、今の怪物みたいな選手が一緒に並んで立っているようなイメージ、夢のようなステージを見せてくれることがうれしいと言っていただきました。歳を重ねましたが、オールドファンの期待も背負って、もうちょっと頑張ってみようと思いましたし、昔のものも伝えていけたらなと考えています。

――今年の日本選手権での目標は。
須江 まず、ベストな状態で出たいなと思っています。一昨年は、もうちょいって感じがしました。日本選手権の前段として、今年も日本クラス別に出場しますが、65㎏級でひとつ階級を下げて出場します。

―― 19 年の仕上がり体重は何㎏でしたか。
須江 67・9㎏でした。クラス別は本当の自分の姿を見つけ出すために出場します。厳しい体重制限がないと、どこか甘くなってしまうので。もちろん本気で行きますが、それをきっかけとして、日本選手権では絞り切った状態から膨らませられるような状態に持っていけたら良いなと思っています。まあ、落としてるだけだと、しなびたような状態で良くはないので、そこから1ヵ月かけて大きくしていければ良いのかなという感じです。(11年7月の)アジア選手権のときも65㎏級でチャレンジしたのですが、本当に立っているだけで精一杯という感じがありました。落ちるものがないところからさらに落とすということがとにかく辛かったです。ただ、65㎏で良い状態が作れれば、クラシックフィジークへの挑戦も視野に入ってきます。カテゴリーとしては、自分の良さを前面に押し出して闘えるかもしれません。

【写真】伝説の”背中”を持つ須江正尋選手のトレーニング

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