トレーニングの効果と成果を確実に実感できる「IH式」トレーニング

世の中には、様々なトレーニング理論が存在する。本誌でも取り扱っている筋膜連鎖や、ハイインテンシティトレーニング(HIT)もその一つだ。○○式というトレーニングに一度は目を引かれたことがあるのではないだろうか。今回は木澤選手のYouTubeでも話題になった、井上浩選手が行うIH式トレーニングを行った。井上選手は、11年連続でミスター日本ファイナリスト、17年連続で日本クラス別選手権優勝という輝かしい成績を持っている。日本の選手の中では身長が高く、長い手足から作られるポージングはアーノルドを彷彿とさせるだろう。今回のIH式では、井上選手の強みとも言える広い背中に焦点を当て、背中のガチンコバトルを行った。IH式では基本的にマシンのトレーニングになると聞いていたが、実際に行ったトレーニングはまさにマシンを用いた種目そのものであった。トレーニングを始めたばかりの人には少々難しい動きになると思うが、今回のガチンコバトルを通してIH式の「ヤバさ」を実感できた。もちろんいい意味でのヤバさだ。そのヤバさとはどのようなものか。以下、この日に行った種目の説明である。

取材・文・トレーニング実施:相澤隼人 撮影:月刊ボディビルディング編集部

井上 浩選手(左)と相澤隼人選手(右)

IH式とは!?① ストライブ・ラットプルダウン

狙う部位:広背筋

第1種目 ストライブ・ラットプルダウン 井上選手のトレーニングは、非常に独特である。この種目では、まず両手でバーを引き下げてきて、片手のみでバーを戻していく。その後、両手を使ってさらにレップスを進めていく。変則的なドロップセットとでも言うのだろうか、1セットあたり27 レップス行う(両手だと33 レップス)

 

IH式における背中の日の第一種目は、ストライブマシンを用いたラットプルダウンである。ストライブのラットプルダウンはディバージング機能を搭載しており、左右が同時に動き、スタートポジションが狭く、フィニッシュポジションに移行するにつれて広くなっていくのが特徴である。ここではIH式、一人ネガティブトレーニングを行なっていく。大まかに種目の説明をするならば、片手vs両手がわかりやすいだろう。人間だれもがそうであるが、片手の力は両手の力に及ばない。井上選手はここに目をつけた。両手でめいいっぱいの重量で引き、片手に変えれば耐えることしかできないのである。それを活用し、このラットプルダウンは進んでいく。

井上選手の写真と比べると、ストレッチポジションも収縮ポジションも、令和の怪物は身体の傾け方があまい

シートは膝が90度くらいになるように設定し、まずは左手のパワーグリップをバーに巻きつける。右手も一緒に使いながらバーを引き下げ、右手を離すと左手のみに右手の重量が掛かる。ここをなるべく耐えながら身体から離さないようにし、6回行う。その後すぐに右手のパワーグリップをバーに巻きつけ、反対の6回を行う。左右で行ったら重量は変えず、両手で6回、その後重量を下げて両手で6回、さらに重量を落とし、頭を軽く突っ込むような姿勢を取り丁寧なフォームで9回行う。最後の9回は正中神経の関与を無くすため、親指、人差し指を立てたピストルグリップで行う。この左右6回、両手6回、両手6回、両手9回を行い1セット目が終了する。

両手で引く場合、上体を反って引くやり方のと、上体を突っ込んで引くやり方の2通り行う

1セット目に左手から始めたのは、右利きの人が行うやり方である。右利きの人は普段から身体の右側を使いやすいことから、スタートする時は左から行う。2セット目は逆に、右手から行う。合計4セット行うなかで、1、2セット目では重量に特化したトレーニングを行う。これは筋肉への反応もそうであるが、脳にも働きかけるために行うそうだ。脳がこんなにも重たい重量を扱うのかと感じることにより人間の本能的に進化を期待することができるとの事である。3、4セット目はしっかりとコントロールできる重量に設定し、同じ動作、回数を行う。この計4セットを行い、ラットプルダウンは終了する。大切なのはギリギリを責めることであるそうだ。この種目では、このセット数が最適であり、これ以上こなせるのであれば負荷が足りないということになる。身体もそうだが、心の強さも非常に重要になる種目である。残りのセットがキツいと感じるであろうが「あと○セット行えば解放される」のようにポジティブに考えることも必要である。第一種目から、とんでもなくハードなIH式に、目が点になってしまった。

相澤選手もこの表情

IH式とは!?② フリーモーション・ワンハンドラットプルダウ

狙う部位:広背筋

第2種目 ワンハンドプルダウン

背中の第二種目は、フリーモーションのマシンを用いたワンハンドラットプルダウンである。フリーモーションのラットプルダウンは、俗に言う普通のラットプルダウンとは違い、プーリーが左右に分かれ2つ付いている。通常のラットプルダウンでは、下方向への移動になるが、肘の軌道を見ると途中から内側に入り、力のかかる方向が下→内になるため、広背筋の下部線維まで刺激を入れる事が困難になる。そこで、このマシンを用いてIH式ワンハンドラットプルダウンを行うことにより、広背筋をフルで鍛える事ができるそうだ。

ピストルグリップで握る

先にも述べたよう、この種目は重量を追っていくというよりは広い可動域の中で、広背筋をフルに使うことを目的としている。グリップは正中神経の関与を無くすため、親指と人差し指を伸ばしたピストルグリップで握る。この時、前腕が回外すると上腕二頭筋の参加率が高くなるため、手の平は基本的に正面を向いたままになる。右手で引く場合、ストレッチポジションでは右の臀部をシートから降ろし体幹を左に側屈させる。それにより骨盤部からついている広背筋の下部線維からストレッチされる。そこからバーを引き下げる寸前にシートから落ちている右臀部をシートに乗せ、左臀部をシートから降ろす。その状態で引くと、今度は体幹が右に側屈する事になる。腕を近づけるだけで無く、骨盤部から肘を迎えに行くようなイメージである。

ストレッチポジションでは、臀部をシートから落とし、引き下げる寸前に臀部をシートに乗せ、収縮ポジションでは逆側の臀部をシートから落として引きつける

骨盤部の移動が入り、左右に身体を動かしながら動作を行う為、難易度が少し高い種目であると考えられるが、伸展時から収縮時まで満遍なく負荷を受けることができた。

次回は▶背中全体を刺激する「IH式」ロウイング


井上 浩(いのうえ・ひろし)
1962年11月13日(59歳)、トレーニング歴40年という超ベテラントップビルダーの一人。主に関西エリアのゴールドジムにてアドバンストレーナーとして活動中。大きな身長と骨格、長い腕脚から「和製アーノルド」とまで評される、日本屈指の大型ボディビルダーとして一時代を築き上げた。
主な戦績:
1999年~2005年日本クラス別選手権90kg以下級優勝、2006・2007年日本クラス別選手権90kg超級優勝、2008~2015年日本クラス別選手権90kg以下級優勝、2001年日本選手権8位、2000年アジア選手権3位


相澤隼人(あいざわ・はやと)1999年10月21日生まれ、神奈川県相模原市出身。身長164㎝、体重75㎏(オン)85㎏(オフ)
トレーニングを先にしていた双子の兄の影響から12歳でトレーニングをはじめ、非常に向上心があり、勉強熱心な性格と成長期が重なったこともあり、すさまじいスピードで成長が進行している若手No.1選手。若手と言いながらも、ボディビル歴8年というから驚きだ。2021年日本選手権優勝の快挙達成。
主な戦績:
2015~2017年 全国高校生選手権優勝、2017年 日本ジュニア選手権優勝 世界ジュニア選手権75㎏級5位、2018年 全日本学生選手権優勝、2019年 東京選手権優勝 日本クラス別選手権70㎏級4位、全日本学生選手権優勝、日本選手権9位、2021年日本クラス別選手権80㎏以下級優勝、日本選手権優勝

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