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ボディコンテスト初心者必読!大会初出場までにやるべきことリスト

近年はボディビルやフィットネスの大会ブームもあり、トレーニング初心者の方でも出場しやすいカテゴリーが数多く増えてきている。ただ、初めて大会に出るにはどのような心得と、初出場までに何を準備すれば良いのか、不安を抱えたままでは実際のステージに立ったときに失敗してしまうのでは……。そんな不安を解消すべく本連載をスタート。記念すべき第1回目は、日本選手権9連覇、2016年世界選手権王者・鈴木雅選手と、05年東京選手権優勝、16年北京アジア大会優勝・大澤直子選手の『大会初出場までに行うこと』をテーマに実現。大会初出場までに初心者が何を行うべきか、2人の失敗談なども交えて語ってもらった。

取材、撮影:IM編集部

初の大会までにやることリスト
✓ 脂肪の乗り具合確認(現状のコンディションを知る)
✓ どの大会に出るか決める=減量期間の設定
✓ 大会の雰囲気とステージ上の動きを知ること(大会を観に行く)
✓ ポージング練習(出ると決めたらすぐやる)
✓ タンニング(日焼けに慣れる期間も含め大会3ヵ月前からが望ましい)
✓ 減量したことを想定してのコスチュームの購入

競技でためになったこと

ーー新連載として、大会に出場するための準備と心得を聞いていきたいと思います。まず鈴木雅さんにとって『競技をやっていてためになったこと』とは。

鈴木 一つは、トレーニングする上でのモチベーションになっているということです。私自身トレーニングが大好きで、身体を変えるということも好きなんです。ですが、毎年大会に出ていなかったら、「身体をより良くしたい」とか「いろいろ試す」こと、筋肉量を減らさずに減量することができていなかったと思います。1年通してトレーニングするにあたって、何か目標がないと身体ってなかなか変わらないと思っていました。例えば私なら、東京選手権を獲った後に日本選手権に出るということで、その間の道のりは決して長くないと思うんです。その後、日本選手権で12位になれて、「あと上に11人しかいなくて優勝まであと少し」と、目標が近くなるほどそれがより明確になりました。それがモチベーションに繋がりますし、自分自身の成長になったような気がしますね。

逆にデメリットになったこともありまして、競技にのめり込み過ぎて生きる世界が狭くなってしまったことです。この競技を行うにあたって、もう少し広い視野を持つことが大事だなと感じました。私生活や、そういったところの行動パターンでもっと広い目を持つことで、考え方もどんどん広がっていきますし、何か手詰まりになったときに様々な引き出しが出てくると思うんです。ただ、これは個人によって違いがあると思いますが、大澤直子さんはどういうことがあったのでしょうか。

大澤 私の場合は、今思うと家族との時間を削って自分だけの世界で競技をやっていたのかなと…。もし、過去に戻れるのなら、競技をやりつつも家族との時間を大切にしたいなと思います。

鈴木 家族で過ごす時間ですね?

大澤 そうですね。でも、今の若い方たちを見ていると、本当にそういうのを上手くやっていると思います!

鈴木 競技を続けていてためになったことは?

大澤 自分磨きをできる競技だなと思っていて、特に女性でそう感じている方は多いのでは。勝つためにトレーニングをするのはもちろん、女性として人に見られるところが養われて行くんじゃないかと思います。振る舞いや日常面を気を付けるようになりましたね。若いときはメイクもしない、着る服はなんでもいいみたいな感じでしたから(笑)。それから競技をはじめて、「人に見られる」という意識が高まると、そういうところも気を付けるようになっていきました。別に競技のためじゃないけど、日常生活も女性としても自分を磨けるようになるのかなと思います。

仕事で競技が活かされたこと

大澤 仕事(トレーナー)をする上で良かったことは?

鈴木 身体を動かす感覚は、鍛えていないと備わらない部分が多いんです。そういった感覚などをお客様に伝えるときに、知識で得たものをエビデンスなども含めて実際に体現できますし、自分でやってきたことを伝えられると思います。トレーナーってそもそもエビデンスが分かっていないと、お客様に正しい情報を伝えられないですが、エビデンスだけだと通じないものってたくさんあるんです。身体の感覚のことは、鍛えていないと分かりませんから。そういうところを伝えやすくなるのが競技者だと思います。

大澤 実際にお客様から競技の話をされると思いますが、的確なアドバイスができるようになったと思いますが、どうでしょう。

鈴木 それはもちろんです。レベルに合わせて初心者〜上級者と、それぞれの指導ができるようになりました。大澤さんはいかがでしょうか。

大澤 マニュアル通りっていうのは、もちろんそれで良いかもしれません。でも、競技をやってきたことでそれ通りにいかないところを、経験しているからこそ感覚的にはなるけど、マニュアル通り以外のアドバイスができるんだと思います。競技をやっていないと分からないことですし、経験したからこそお客様にお伝えできるものです。「初めてこういう感覚を教わりました」と言われることは多いので、競技でやってきたことが活かされているんだなと感じています。

鈴木 大澤さんはスタジオインストラクターもやっていますよね。

大澤 通常のレッスンに比べると、この競技のトレーニングの特性として、いかに筋肉を使って効かせられることと、トレーニングのバリエーションが豊富にあるのでオリジナルの指導ができるところが良いのかなと。また、特化してできることだと思います。

鈴木 大澤さんのお客様でも大会に出ている方は多いんでしょうか。

大澤 よく言われるんですけど、8割くらいは競技者でない普通の方ですね。競技の方は逆に来ないです。ただ、大会シーズンになったらポージングのことでパーソナルを受けにくる方はいます。鈴木さんはほとんど競技者ですよね?

鈴木 そうですね。それも傾向があって、私のところに来るお客様は、本当にトレーニングに真摯に向き合う方ばかりで、課題があるという方が多いです。

大澤 課題ですか。

鈴木 私のパーソナルは、ありがたいことに予約を取るのが難しいので、何度も継続して来るというよりは、単発で課題に対して取り組まれる方がほとんどです。

初戦の失敗談

鈴木 初めての大会で、「これやっておけばよかったな」ということはありますか?

大澤 まず、私が初めて大会に出たとき、仕上がり体重は38㎏でした(笑)。

鈴木 えぇ! 今とぜんぜん違って細かったんですね!

大澤 すごいですよね(笑)! そこから63㎏ まで増やしました(笑)。

鈴木 倍近くも増えたって……(笑)。

大澤 最初は筋肉がなかったからですね(笑)。最初のコーチには、「とりあえず絞りなさい」と。それで、そのころのゴールドジムはイースト東京だけで、ボディビルダーが多く、新人戦大会では女子選手も何人か出ることが決まっていたんです。私は出て決勝だけ残れれば良いかなと思っていました。「自分は勝てない! 38㎏ しかないし!」なんて思っていたんですね。今思えば、そういう気持ちの問題で失敗したなと思っています。今の方は、「ぜったい優勝する」という気持ちで取り組んでいることが多いですよね。

鈴木 気持ち的には消極的だったんですね?

大澤 そうそう、ぜったい勝てないみたいな。

鈴木 今は?

大澤 今は、「この大会は優勝できる」と思うと勝てなくて、その逆だと優勝できたりするんですよ(笑)。

鈴木 ボディビル競技ってそんなものだったりしますよね。「いける!」と思ったときは微妙な結果で、満足なコンディションじゃないときは勝つんですよね。

大澤 自信がないときに、「私優勝しちゃって良いのかな!?」みたいな(笑)。私は2008年くらいからのケガで競技から一度離れて、再び13年に復帰したときに優勝するという気持ちで復活したことがありました。そのときの気持ちはすごく強くて、「これだったらいけるだろう」と思っていました。でも私の周りの、「復帰戦なんだしトップ6に入れればいいよね」という雰囲気に惑わされて、そういう感じなの?と思ってしまいました。今思えばガツガツ行っていればと思っていて、一つの後悔ですね。鈴木さんは他に何かありますか?

鈴木 私もあります。ボディビルとは何かと分かっていないまま、「ファーストコールってなに?」みたいな感じで、ポージング練習も大会1週間前にやり始めたくらいで、本当に「なめてた」の一言です。一つ言えるのは、映像で観て大会に出た気になっていたことです(笑)。完璧にシミュレーションをしない。予選とはどういうものなのか? ファーストコールはどのように呼ばれるのか? 最初の3戦くらいは全く分かっていなかったです(笑)。本当初心者っていう感じでした。05年の東京選手権のとき、自分が優勝するなんて思っていなくて、決勝に進んで後ろの端っこで一人でめちゃくちゃ喜んでいたら、ベテラン選手の方に「お前何やっているんだ! 優勝だろう!」とめちゃくちゃ怒られたのを今でも覚えています(笑)。

やっぱり、大会は観に行かないとダメですね。それも何回も。それで、どういう選手が良いのか、見せ方はこうしたら良いとかすごく分かります。今はマッスルゲートで審査員を務めさせていただいて、自分のためになることが多いです。ゲストポーズで行ったときもそうで、選手を近くで観て初めて分かるものがあります。初めて大会に出ることを決めた方は、できれば多くの大会を観ることをお勧めします。自分がステージに立っているイメージを持っていただきたいものですね。

大会に出るための心得

鈴木 一個人の意見として、出たければ出た方が良いと思います。こうならなきゃ出れないっていうのもないですし、何かを押し付けられる理由もありません。趣味でやっていて、その人の人生なので、自身で決めれば良いだけです。

大澤 こういう状態で出るのはダメだとかはないと思いますね。

鈴木 その通りです。しかしその人自身が仕上がっていなくて恥ずかしい思いをするかも知れませんし、でもそれが良い経験になり得ます。失敗したことを次に活かせば良いでしょう。

大澤 私も同じで、口だけで「ぜったい優勝する」と言って、何もしない人はどうなのかなと思いますが、楽しさをメインに大会に出るのなら、そこまでのことは求める必要はないと思います。好きにやって出てもらうのが一番選手にとって良いことで、マッスルゲートは特にそうだと思います。

鈴木 楽しそうな表情でステージに立っているのを見ると、こっちまでうれしくなりますよね!

大澤 そうですね。大会に出場することに楽しさを感じてもらえたらと思います。

大会初出場に向けて

大澤 鈴木さんが言っていたように、いろんな大会を観たほうが良いと思います。また、トレーニングはもちろん皆さん頑張ると思いますが、ポージングを後回しにしがちです。オフでもやった方が良いと思っていて、「絞れていないからやらない」ではなく、脂肪が乗っていようが何だろうが、最初からトレーニングの一つとして取り組んだほうが良いということをアドバイスとして伝えたいですね。教えてもらうのはもちろんですが、誰に教えてもらうかがポイントになると思います。小沼敏雄トレーナーのようにセミナーとしてやっている方に教えてもらうのが良くて、安心できると思います。鈴木さんは初めて大会に出る方に向けてアドバイスはありますか?

鈴木 計画的に全て行うということですね。出場する日にち、減量期間を(大会当日から)逆算して何をすべきか。まずそういうところを把握しなければいけません。大会前はトレーニングとポージング練習に加え、タンニングなど時間がなくなります。なので余裕を持って減量を行うことも大事です。また、コロナ禍で大会を観に行くのも難しいですが、映像をしっかり観たり、予選〜決勝の流れ、会場に入ってからステージに立つまでを自分の中でシミュレーションすると良いと思います。

一番きついのは、初めて行く新しい環境って、いろいろなことに目移りして疲れてしまう方は多いです。なので、受付や検量についても予め情報をキャッチできる力も大事なことになります。そして、良い指導者に教わるのも非常に大事なこと。ただ、大澤さんが言っていたように、その選択が難しいと思います。なので、この業界のことをしっかり知ろうとすることも必要ですね。

ストレスフリーな減量とは

大澤 鈴木さんならどんなアドバイスをしますか?

鈴木 キャッチーな減量をしないことですかね。炭水化物を摂らないとか、逆にこれだけとか、バランスよく食べて、トレーニングも普通にやって、有酸素運動もやるなら適度にやるとかですね。これが、ストレスを溜めない減量になるかと思います。なぜこういう言い方をしたかと言えば、「食べていない」「トレーニングを長くする」。そういう余裕がない減量をするとストレスばかりになって上手くいかないと考えられます。特に初心者は新しいものにとらわれがちなので、広い目で見れるようになってほしいと思います。

私も優勝したいという気持ちがありましたが、生活あっての競技だと思うんですよ。そこが上手くいっていればストレスになることはないと思いますし、競技が絡んでストレスになることは一番避けたいので、生活との向き合い方を大事にしてほしいですね。大澤さんが思うことは?

大澤 皆さんアマチュア競技としてやっていて、もちろん仕事もあると思います。その兼ね合いが上手くできる人が勝てる人なのかと思います。私も、仕事を減らして競技に集中すれば良いんじゃないかという思いもありましたが、「それでいいのか?」と自問自答しました。仕事をしながら競技をすることに意味があったり、アマチュアならではの良さがあると思います。そのバランスを両立を成り立たせることで、自分のためになったり、応援してもらえることに直結すると感じます。

鈴木 そういう感じでやっていくと楽しいものですよね。

大澤 もちろん大変なことは多いですし、仕事をしないでトレーニングだけしているのは楽かもしれません。でも、仕事をすることで、人とのコミュニケーションや交流も増えますし、情報がたくさん入ってきますよね。

失敗は成功

鈴木 大会前だけに、あれやってこれやってというのは避けたいです。普段やっていないことを直前にやると身体の調子が狂うんですね。だるくなったり、張らなかったり、逆にむくんだりとか、そういったことに陥りがちになります。なので極力疲労を抜いた状態にします。また、血流を良くするためにストレッチを行ったり、リラックスすることに努めます。そして、減量は3週間前までに終えて、そこから直前までに身体を回復させて徐々にカーボを摂って当日を迎える形になります。

水分、塩分に関してはむくまない程度に普通に摂ります。いつもよりちょっと減らすといった感じですかね。

大澤 むくむのが心配で、ほとんど摂らなかった経験はあります?

鈴木 はい。昔は大会3日前から塩分を抜き、1日半前から水分を抜くということをよくやっていました。そしたら当日はぜんぜん張らないですし、しぼんで血管も出なかったですね。それをあるとき、普段通りの水分、塩分で調整してみたら一番良かったんですね。そこから少しだけ減らしたり、むくんでいるときはパンプを多めにやると状態が良くなったりしました。塩分を摂らないと血管は出ないし、水分を摂らないと筋肉が張らないことを経験しました。

なので、私の場合は朝に特別半身浴をするようなことはしません。普段通りのことを、極端に変えないのが良いと思います。

大澤 良い状態が作れるようになったのいつから?

鈴木 いつからというのはなくて、徐々にですね。だいたい14年くらいには分かってきました。11〜13年は特に何もしなかったんですよ。ただ、世界選手権では検量があるので水分を控えたりしました。そこでしぼんでしまうのが分かったので、やり過ぎない方が良いと思い、11〜13 年は徐々にコントロールできるようになりました。

人によって筋肉量も違うので、一概にこれ位というのは言えません。だからこそ、大会に出続けて経験することが必要です。そして自分を知っていき、次に繋げます。大会が終わったから解放ではなくて、成功も失敗も次の大会に向けてしっかり記録することが、勝つためには重要なのです。これこそが『失敗は成功』ということになります。私は初めて大会に出たときから、それをやっていたので良い習慣になったのかなと思います。

大澤 初心者の方にも必要な考えですね。

鈴木 大澤さんはどのように大会前を過ごしますか?

大澤 まず、ポージングとストレッチをしっかりやり込みます。ポージングでは汗を流す程度行います。食べ物はそれまでの減量食を食べ、塩分は減量期に入ったら減らしているので、特に直前もいじりません。また、私は減量において、炭水化物が苦手なので油をギリギリまで摂ります。ドレッシングもオイルドレッシングを使ったりします。そして大会前日になったら、炭水化物は少しだけ摂ります。怖いのもあり、ドカンと摂ったことはないですね。

それと、鈴木さんと同じで水分や塩分を気にしなくなったのは、海外の大会に出るようになってからです。女子選手の場合は体重の検量がありません。なので飛行機に乗っている間も気にせず水分を摂ったりします。その方が逆にむくみが取れていき、コンディションが良くなっていました。ということは日本の大会でも我慢しなくて良いんだというところに行きつきました。

また、私の場合は自宅の近くの会場でも、雰囲気を変えたり集中するために大会前はホテルに泊まるようにしています。東京の大会のときは、メイクアーティストの方を呼んで、メイクやヘアスタイルをやってもらっていますね。

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鈴木雅(すずき・まさし)
1980年12月4日生まれ。身長167cm、体重80kg~83kg。株式会社THINKフィットネス勤務。ゴールドジム事業部、トレーニング研究所所長。2004年にボディビル大会に初出場。翌年、東京選手権優勝。2010年から日本選手権で優勝を重ね、2018年に9連覇を達成。2016年にはアーノルドクラシック・アマチュア選手権80㎏級、世界選手権80㎏級と2つの世界大会でも優勝を果たした。DMMオンラインサロン“鈴木雅塾”は好評を博している。


大澤直子(おおさわ・なおこ)
1969年5月14日生まれ。身長152.5cm、体重53kg(オン)57kg(オフ)。ゴールドジムスタジオインストラクター兼スタジオディレクター。1996年よりボディビルを始め、2005年東京選手権優勝、2015年女子日本フィジーク2位、2016年北京アジア大会優勝、世界選手権7位、2017年アーノルドクラシック・コロンバス8位と数々の好成績を収めてきた、女子フィジーク界の“元祖”マッスルビューティー。


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