トレーニング

バルクアップのためのトレーニングで意識したいポイントは?(実践編)

前回は、バルクアップのためのトレーニングにおける基礎知識を解説しました。今回は、基礎知識を元に、より実際の場面に即した具体的なアドバイスをしていきます。研究で明らかになっているデータに加え、現場での感覚等にも触れながら解説します。

バルクアップのためのトレーニングボリュームについて
 セット数
 頻度
 まとめ
バルクアップで意識したいポイント
 怪我なく重量を伸ばす
 正しいフォームで動作する
 継続する
まとめ
引用

バルクアップのためのトレーニングボリュームについて

まずはトレーニングのボリュームについて解説します。トレーニングの量が足りなければ、筋肥大を引き起こすだけの刺激を得ることができません。その一方で、トレーニングをやり過ぎてしまうと、身体の回復が追いつかずにオーバートレーニングに陥る危険性もあります。研究で報告されているデータをいくつか紹介しますので、それを参考に、今後のメニュー作りを行っていただければと思います。

セット数

バルクアップトレーニングトレーニングで行うセット数は人によって変わるものですが、3セットから5セット程度が最も一般的なように感じられます。1部位に対して5種目行うならば、合計のセット数は15回から25回程度になるでしょう。

複数のトレーニング論文の結果を解析したメタ解析論文では、実施するセット数が増えるにつれて、トレーニング効果も増していくということが分かりました(1)。また同じ論文の中で、効果的な筋肥大を起こすためには最低でも週に10セットのトレーニングが必要であることも述べられています(1)。解釈が難しいのは、これらの実験の中には、トレーニングを全く行ったことのない人を被験者にした実験が含まれている点です。筋肉が大きくなるにつれて、継続的に筋肉を発達させるにはより大きな負荷が必要になってきます。重量の伸びは頭打ちになりやすいことを考えると、トレーニングのボリュームを決めるのはやはりセット数ということになります。そうすると、トレーニング上級者ほど、筋肥大に必要なセット数は多くなると考えられます。

まだトレーニングを始めたばかりで、これからバルクアップを考えようという方は、まずは1週間に10セットのボリュームを目標にすると良いでしょう。1部位あたり3種目を各3セットずつのようなイメージです。そこからトレーニングに慣れるにつれて、自分の体の反応を見ながらセット数を増やしてみるのが良い手法だと思います。

頻度

バルクアップトレーニングトレーニング頻度は非常に意見が分かれる部分です。一般的には、トレーニング初心者は部位ごとのトレーニング頻度を高めることが勧められます。初心者はフォームが未完成な場合がほとんどであるため、トレーニングの頻度を多くして反復練習することで、フォームの習熟が狙えます。また初心者の場合は、筋肉に強い刺激を与えるまで追い込むことがなかなか難しいです。そのため、トレーニングの頻度を増やすことで刺激の全体的な量を増やすことが有効になります。その一方で、トレーニング上級者の多くは、1つの部位を1週間に1回トレーニングすることが多いです。トレーニングに習熟するほど、1回のトレーニングで得られる刺激も多くなるため、疲労を十分に回復させることを考えるとこの頻度が適しているという考えによると思われます。

トレーニング頻度に関する研究では、頻度は筋肥大には影響しないとするものも多いです。週あたりのトレーニングのボリュームが同じであるならば、頻度は筋肥大に関係しないとする論文があります(2)。また別の論文では、頻度を上げればそれだけ筋肥大が起こることが分かったものの、それは主にトレーニングのボリュームが増加することによるものだと結論づけられています(3)。

ここまでをまとめると、自身の体の回復度合いを見極めながら、可能な限りトレーニングのボリュームを増やすことがバルクアップには有効だと言えるでしょう。しかしながら現実的には、回復の速さにも限界がありますし、トレーニングに割ける時間が多い人ばかりではないため、1週間に1部位を1回というやり方に揃っていく傾向があると思われます。バルクアップをさらに進めるために頻度を増やしたいと考える方は、週あたりの合計のトレーニングボリュームが減らないように注意しましょう。また、やる気の低下や筋力の低下が見られた場合はオーバートレーニングの可能性があるので、一旦トレーニングを休むか元の頻度に戻すことが勧められます。

まとめ

バルクアップトレーニングセット数については、熟練したボディビルダーを対象にした研究がほとんどないため、データに裏打ちされたアドバイスをすることが難しいです。1部位1セットのようなトレーニングは、ヘビーデューティー法を採用する場合以外では、筋肥大のための負荷としては少ないと考えられます。また、1種目を10セットもやるようなトレーニング法は、回復力や精神面での適性がないと取り入れるのは難しいでしょう。結局は、自分のバルクアップの進み具合を見ながら適宜調整することが大事だと言えそうです。

トレーニング頻度に関しては、全体のトレーニングボリュームが減らないのであれば、増やした方が良いと言えそうです。頻度が2倍になっても、1回のトレーニングのボリュームが半分になっているならば、筋肥大の効果がプラスになることは少ないと考えられます。初心者のうちは1部位につき1週間に2回のトレーニングを基本にし、種目に習熟して1回のトレーニングのボリュームが多くなってきたら、1部位週1回の頻度に切り替えると良いでしょう。

性別や年齢によっても身体の回復にかかる時間は異なるので、闇雲にトップ選手のトレーニング法を真似るのではなく、それらを参考にしつつも、まずは自分に合ったやり方を探っていくことが良いと思われます。

バルクアップで意識したいポイント

続いて、バルクアップのためのトレーニングで意識したいポイントを紹介します。基本的なものがほとんどですが、これらを見失わないようにすることが、最終的には大きな効果を与えるものと個人的には思います。

怪我なく重量を伸ばす

バルクアップトレーニングざっくり言えば、発揮される筋力は筋肉の断面積に比例します。すなわち、筋力が伸びているならば、少なからず筋肉の量も増えていると考えることができます。そのため、バルクアップを行う際は、毎回のトレーニングで扱う重量を伸ばすことに注意したいです。筋肉が大きくなったかどうかは1ヶ月程度ではなかなか確認できませんが、使用重量が伸びたかどうかは毎回のトレーニングで確認できます。

重量を伸ばす際に注意したいのは、怪我をしないようにすることです。重量を伸ばせばそれだけ身体への負担も大きくなります。重量が軽いうちは表面に出てこなかったようなフォームの乱れ等により、思わぬ怪我につながることもあります。怪我を防止するためには、以下のような点に気を付けると良いです。

>>ウォーミングアップを丁寧に行う

ウエイトを使ったトレーニングに入る前に、有酸素マシン等で軽く身体を温めるのは有効です。また、トレーニングを行う際も、できるだけ軽めのウエイトでのアップセットを設けるようにすると良いです。

>>無理をしない

精神的には好調だったとしても、身体がそれについてこないこともあります。いつもはできるはずの重量が挙がらなかったり、フォームが崩れているように感じたりする場合は、無理してトレーニングを継続しないようにしましょう。

>>クールダウンのストレッチをする

バルクアップトレーニングトレーニング後にストレッチをすることも大切です。関節可動域が広がることでよりスムーズに動作できるようになり、怪我の防止が期待できます。

正しいフォームで動作する

怪我の防止にも繋がりますが、正しいフォームでトレーニングすることはバルクアップにおいて非常に重要です。ウエイトを挙げて下ろすという単純な動作ですが、どの筋肉を狙っているかを正しく理解し、さらにその筋肉に刺激を入れるにはどのような動きをすれば良いかを身につけることはなかなか大変です。頑張ってジムに行っているにも関わらずバルクアップが達成できないという方は、自分のフォームが良いものであるかどうかを再確認すると良いです。実績があり信頼できるパーソナルトレーナーに助言を求めるのが一番確実です。最近では、トップ選手がトレーニングフォームを解説するYouTube動画もありますので、それも参考にしてみると良いでしょう。

教科書的なフォームを学習したら、次は自分の骨格や弱点に合わせた工夫をしていく段階に入ります。この段階に入ると、トップ選手に見られるような独特なフォームでの動作も現れます。これに関しては、あくまでも基本が身についた方が、怪我に対して細心の注意を払いながら行うものであるという点には注意してください。

継続する

バルクアップトレーニング基礎編でも解説したように、バルクアップを短期間で達成することは難しいです身体の変化をはっきりと実感するには、最低でも3ヶ月ほどはトレーニングを継続することが必要なのではないかと思います。これからトレーニングをしてバルクアップをしていきたいと考える方は、まずは継続することを頭に入れましょう。幸い、1週間に10セットのトレーニングでも筋肥大の効果が出るという報告もありますので、まずは週に1回か2回はジムに行けるようにすることを目指すと良いといと思います。

まとめ

トレーニングのボリュームに関しては、人それぞれ回復の程度に差があるため、明確に答えを出すことが難しいです。刺激の量を増やせば筋肥大する可能性が上がるものの、同時にオーバートレーニングや怪我のリスクも上がっていきます。自分の状態をよく観察しながら進めることがバルクアップにおいては重要です。
正しいフォームを身につけることも大切です。どこに効いているか分からないようなフォームで高重量を扱うよりも、軽いウエイトを丁寧に扱った方が効果が高いこともあります。まずは教科書的なフォームをしっかりと身につけ、それを元にして怪我なく重量を伸ばしていけると、自然と筋肉も大きくなっていくはずです。

執筆者:舟橋位於(ふなはし・いお)

1990年7月7日生まれ
東京大学理学部卒(学士・理学)
東京大学大学院総合文化研究科卒(修士・学術)
NSCA認定パーソナルトレーナー
調理師

東京大学在学中に石井直方教授(当時)の授業に感銘を受け、大学院は石井研究室で学ぶ。団体職員等を経て、現在は執筆業務および教育関連事業にて活動中。得意な執筆ジャンルは、運動・栄養・受験学習。

引用

(1)Schoenfeld BJ, Ogborn D, Krieger JW. Dose-response relationship between weekly resistance training volume and increases in muscle mass: A systematic review and meta-analysis. J Sports Sci. 2017 Jun;35(11):1073-1082.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27433992/

(2)Schoenfeld BJ, Grgic J, Krieger J. How many times per week should a muscle be trained to maximize muscle hypertrophy? A systematic review and meta-analysis of studies examining the effects of resistance training frequency. J Sports Sci. 2019 Jun;37(11):1286-1295.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30558493/

3. Grgic J, Schoenfeld BJ, Davies TB, Lazinica B, Krieger JW, Pedisic Z. Effect of Resistance Training Frequency on Gains in Muscular Strength: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2018 May;48(5):1207-1220.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29470825/


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