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日本3位の腹筋バキバキ「マッスルビューティー」 「まるで常に生理前」、壮絶更年期を乗り越えた方法

「更年期は、女性なら誰でも通る道です。自分の体験を話すことで、同じ悩みに苦しむ方々の助けになればと思います」

【写真】長谷川順蘭さんのバキバキ腹筋

長谷川順蘭(はせがわ・じゅんらん/47)さんは国内最大規模のボディコンテスト『ベストボディ・ジャパン(以下、BBJ)』に所属する。最も筋肉量の求められるカテゴリー『マッスルモデル&フィットネスモデル』部門において地方大会でグランプリの常連であり、全国頂上戦である日本大会にも毎年出場、年代別日本3位(2023年)を最高位とする活躍選手だ。

しかし、長谷川さんは2024年度に日本大会を直前で辞退。原因は更年期による心身不調だった。

「始まりは些細な不安定でした。何をやっても痩せない、急な気分の落ち込みなど今までできていたことがなぜかできなくなりました」

やがて不調は急激に悪化、一時期は外に出ることも困難になるほどの抑うつ状態に襲われたという。

「最も苦しかったのは、全てがしんどいわけではなく、“心は元気で身体がしんどい・身体は元気で心はしんどい”というアンバランスな状態が続いたことです。自分は単にさぼっているのではないか、という自責が湧いてどんどん自分を追い詰めてしまいました」

止まらない食欲、特定の食材への異様な欲求、下腹部に集中する肉付きなど、ボディメイクにおいては厳しい状態が続いた。「まるで常に生理前のようだった」と、長谷川さんはその時期の体調を振り返る。

「転機になったのは、自分と同じ症状で苦しむ人たちが実は周りにかなりいると気づいたことです。同じような症状が出るのであれば、原因をつきつめれば対処も可能なのではないかと思いました」

予想は的中し、その後快方へと向かうこととなる。長谷川さんが取り組んだのは、生活習慣の見直しによるホルモンバランスの安定化だ。

「まず、食生活において小麦粉をやめました。これは私の体質的に浮腫みになりやすく。腸内環境が荒れやすいと気づいたからです。次に暴食を可視化するために食材の軽量を始めました。当たり前ですが、太ることの直接的な原因は食事量の増加です。どれだけ自分が食べていたのかということを認識し、量を調節していきました」

ボディメイクを始めたころを再履修するように、長谷川さんはひとつずつ段階を踏んで行った。

「また、ストレスの緩和にも取り組みました。朝にウォーキングをして日光をあびることで、引きこもって崩れ切った体内時間を整えるとともに、精神を安定させるセロトニンの生成を促しました。もうひとつは、知り合いの助産師の方からアドバイスを受けて人と会話する機会を作るようにしました。女性のストレスは喋ることで発散されるとのことで、サウナに通ってたわいないお喋りを楽しみました」

改善を始めてから、次第に症状はゆるやかに落ち着いていったという。現在、長谷川さんはまたコンテストへの復帰を目指してボディメイクへの復帰を叶えた。目下、減量に力を注いでいる。

「日本大会に出られなかったのは残念ではありますが、今にして思うと必要な体験だったのかもしれないなと思います。私は今回の挫折を通じて、常勝を目指して突き進んでいたころのプレッシャーが消え、悪い意味で尖った部分が丸くなった気がします。成功よりも挫折が人を成長させるのだなと」

「BBJは単に肉体の優劣だけでなく、精神的にも美しい“最も輝いている人”が勝ちます。自分もそういう人に少し近づけたのかなと思いたいです。今後は、昨年の日本大会で表現したかったことを開幕戦(4月5日/BBJ近畿大会)で披露したいです」

ホルモンバランスと女性の一生は、切り離すことのできない関係だ。目まぐるしく揺れ動く心と身体に戸惑い、悩む人は多い。ときに、ただ生きることすら難しくなる時期もある。その変化に無理に抗うのではなく、共存していくしなやかさを長谷川さんの経験は教えてくれた。

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取材:にしかわ花 写真提供:長谷川順蘭

執筆者:にしかわ花
『IRONMAN』『FITNESS LOVE』『月刊ボディビルディング』寄稿。広告・コピーライティング・SNS運用も行うマルチライター。ジュラシックアカデミーでボディメイクに奮闘している。

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