トレーニング

トップビルダーから学ぶ「ジムに行けない今、できること」

いまだ終息の見えないコロナ禍。ジムが休館したことでトレーニングの場が失われ、“ 筋トレ難民” となったトレーニーも多い。緊急事態宣言が5月末まで延長された状況下で、トップビルダーはいかなる考え方でトレーニングと向き合っているのか。2019男子ボディビル日本選手権2位の須山翔太郎選手に聞いた。(2020年5月12日発売IRONMAN2020年6月号より)

―現在はどのように過ごされていますか。

須山 職場のフィットネスクラブもトレーニングをしていたゴールドジムも閉まっていますので、今までの活動が全くできていない状態です。

―多くのジムが休館している状態にあります。今回は、そういった状況下でのトレーニングについて伺います。

須山 チューブがあれば結構できますよ。また、簡単に手に入れられるものとして、100均ショップに売っている麺棒やサランラップの芯などを使うと、よりバリエーションが広がります。

―今回お持ちいただいた須山選手のチューブは、ハンドルがついていないタイプのものですね。

須山 ハンドルがついていないほうが僕はやりやすいです。利点は、例えばサイドレイズを行うときは手のひらで握るのではなく、手の甲にチューブをかけて動作を行うことができ、肘でリードしやすくなります。

―脚のトレーニングはどうでしょうか。

須山 大腿四頭筋はスクワット、そしてシシースクワット、お尻はブルガリアンスクワットで鍛えらます。シシースクワットは強度の高いトレーニングです。だから、自重も決してバカにはできません。家トレで難しいのはハムストリングと内転筋ですが、これも工夫することで可能になります。

※他にもIRONMAN2020年6月号では自宅にあるものとチューブで出来るレッグカール、プッシュアップ、インナーサイ、ラットプルダウン、ベントオーバーロウイング、バイセップスカール、リアレイズ、ハンマーカール、プレスダウン、サイドレイズをご紹介いただいてます。

―チューブならではの利点というものもあるのでしょうか。

須山 自重やチューブでは高い強度はかけられません。回数だったりフォームだったりに注意しながら、より筋肉に意識や刺激をフォーカスしていく必要が出てきます。筋肉を丁寧に動かさないと、負荷が抜けやすくなってしまいます。筋コントロールにはプラスになると思います。

―レップ数やセット数の考え方についてはいかがでしょう。

須山 ある一定の強度までしか上げられないので、やはりレップ数やセット間のインターバルなどで追い込んでいく必要があります。必然的に、そうするしかないと思います。

―トレーニングを長くやられている方は肩や肘などに何らかの故障を抱えているものです。

須山 高重量を持たないので、そういった症状が和らいでいくというのもあると思います。僕も20年以上も攻めるトレーニングを続けていますが、こういうことがない限りトレーニングを長く休むこともないので、それを一旦お休みする良い期間になっていますし、精神的な解放にもなっていると思います。

―須山選手ご自身は、現在のトレーニングのテーマは筋量・筋力の維持なのか、それとも限られた状況の中でも成長を求めていくか、どちらになりますか。

須山 物理的強度は下がるので、この期間に成長を求めるのは難しいです。ただ、その一方で自重やチューブでのトレーニングを工夫しながら行うことで新しい発見があったり、より感覚的に鋭くなれたりする。そういった意味での成長は見込めると思います。自分にとってプラスの時間になると思っています。強度の高いトレーニングができないことがマイナスになるのか、成長につながらないのかと言うと、それは考え方次第なんです。考え方を変えることで、いくらでもポジティブに捉えることができるはすです。そうした思考の切り替えが大事だと思います。

―思考の切り替え、ですか。

須山 僕が自粛期間に入ってすぐに覚悟したのは、この状況は1年間は続くだろうと。それは「まだか、まだか」という思いで(緊急事態宣言が解除される予定だった)1 カ月先を待つよりも、1 年はかかると覚悟したほうがストレスを溜めずに余裕を持った気持ちでいられると思ったからです。

―大会も軒並み中止となり、日本選手権も開催されるかどうか分かりません。モチベーションの保ち方についてはいかがでしょうか。

須山 日本選手権が開催されないということも十分にありえるという心構えでいます。絶対に開催されると思いながら取り組んでいると、いざ本当に開催されないとなったときに落胆してしまいます。そこでモチベーションを失ってしまうことのほうが怖いです。だから、全てにおいて腹を括って、今できる最大限のことを粛々と、淡々と実行する。それだけです。その結果、「開催される」ということになれば、そこに向かって最大限の努力をします。

―そういったマインドチェンジはすぐにできるものですか。

須山 平時からどういった考え方をしているかによると思います。僕は自粛前の環境が「当たり前」だとは思っていませんでした。減量という食べたいものを我慢することを伴うスポーツは、豊かで平和な国じゃないとできなんです。だから、普段の僕たちはすごく贅沢なことをやっているんです。これは豊かな国に生きていると忘れがちになるんですが、そういったことを忘れるというのは怖いことだという意識を持っています。

<インタビューの続きは2020年5月12日発売のIRONMAN6月号をご覧ください。>

須山翔太郎(すやま・しょうたろう)
1981 年生まれ/東京都出身
身長172㎝/体重77kg(オン)78.5㎏(オフ)
主な成績
1999 日本ジュニア選手権優勝 2004 東京選手権優勝 2015 日本クラス別選手権80kg 優勝 2016 世界選手権75kg 級3位 2017 日本選手権2位 2018 日本選手権3位 2019 日本選手権2位
インスタグラム:@shotaro_suyama

 

 


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