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運動能力を飛躍的にあげる!ハイプルの正しいやり方とその効果【動画解説付き】

競技パフォーマンスアップに直結するトレーニング「クイックリフト」。2015年全日本ウエイトリフティング選手権大会77kg級チャンピオンの本間智也コーチが解説する短期集中連載、2回目となる今回は「ハイプル」を紹介。前回のハイクリーンが「ちょっと難しかった」という方は、その導入種目としてもトライしていただきたい。
取材:藤本かずまさ 撮影:北岡一浩 取材協力:BLACK SHIPS

関連記事:運動能力を飛躍的にあげる!ハイクリーンの正しいやり方とその効果【動画解説付き】

1.ハイプルとは
2.ハングポジションの作り方
3.一連の動作とそのポイント

4.正しい軌道とエラー動作

ハイプルとは

ハイプルには前号で解説した「ハイクリーン」、次号で紹介する「スナッチ」とは異なり、バーを受け止める「キャッチ」動作がありません。「キャッチ」まで行うとバーを受け止めた際のバランスなどにも気を付ける必要があります。その動作が省かれている分、より瞬発的な動きに集中できます。ハイプルはバーを引き上げ、真下に重心を落とし込むようにして切り込む動作のみなので、切り返しやバーの引きつけなどに、より集中しやすい種目といえます。

バーは手幅の広い、いわゆるワイドグリップで保持します。この手幅は次号の「スナッチ」と同じなのですが、ワイドグリップで握っているため、上背部、特に僧帽筋上部が鍛えられます。

僧帽筋上部に直接的にアプローチできる種目は意外と少なく、シュラッグくらいではないでしょうか。ハイプルでは僧帽筋をグッと収縮させて肘の引きつけ(プル動作)につなげていき、僧帽筋が強く刺激されます。また、そうした動作を一体感を持って実施することで、「連動」の能力も高まります。

さらに、実際の動作の中で故意に力むのはNGですが、自然と腕全体も鍛えられます。これは実際に行ってみると実感できると思いますが、ハイプルを繰り返すと上腕二頭筋や前腕などがパンパンに張ってきます。

また、肩周りの柔軟性の問題がそこまで大きく影響しない種目であるため、柔軟性の問題でハイクリーンで肘が返らずキャッチができないという人は、導入としてハイプルを行うのもいいと思います。

「肘が返らない」というのは、僧帽筋の柔軟性の乏しさが原因であることが多いです。ハイクリーンで肘が返らない、という人は、まずハイプルを行って僧帽筋にアプローチをかけて、しっかりと引きつけられるようにすると、次第にしなやかになっていきます。

床から引くのではなく、「ハングポジション」と呼ばれる位置から引き上げていく点も、ハイクリーンとは大きく異なる点です。ハイプルでは直立の状態でバーベルを一度引き上げて、そこから胸を張ったまま前傾し下半身にタメを作っていきます。

ここの動作でエラーを起こすと、クイックリフトにとって重要な下半身のタメを作ることができません。「ハングポジション」は胸を張って上半身を立てた状態から重心を下半身に乗せていきます。

ここで先に上半身に重心を乗せてしまうと、下半身のタメが作れず、上半身で煽って挙げるかたちになります。スタートの「ハングポジション」の作り方から注意して取り組んでください。

ハングポジションの作り方


①ワイドグリップでバーベルを保持する。手幅はバーベルを持って直立し、バーが恥骨より少し上の位置にくる幅で。重心は足裏全体に
②胸を張って上半身を立てた状態から下半身に重心を乗せていく
③少しだけ上半身をかぶせる。胸の位置は膝よりも前に出ないように。腕はリラックスさせておく

ストラップの巻き方
ハイプル
手幅が広いとバーベルの保持がキツく、またハイプルは重量を扱うトレーニングであるためストラップを使うのがオススメ! テンションをかけながら巻きつけ、そこで一旦握ってグッと巻きつける。まだ“遊び”があるようであれば、さらにグッと巻きつける。この巻きつけ方の感覚は、やり込むことで次第に感覚が掴めるようになってくる

横から

バーベルが腕と一直線になって膝上にくるように。その位置を基準に前傾することで自然と上半身と下半身の角度が決まってくる

一連の動作とそのポイント。下半身→上半身→バーベルの順番で力を伝えていく


①前回で解説したハイクリーン同様、足裏全体でしっかりと地面をとらえたまま踏み込んで、胸を張ったままバーベルを太ももを擦るように股関節まで引き上げる
②目線はまっすぐ前よりも少し上に定めて、そこから動かさない
③股関節と膝関節を伸展させて上方向に伸び上がり、バーベルは浮かせて、なおかつ自分は下がり、首のあたりまでくるようにバーベルを引きつける

NG
上半身に先に力が入ると…

上半身に先に力が入ってしまったNG例。先に上半身に力が入ると、そこから足で踏み込んでもその力がバーベルに伝わらない。まずはしっかりと重心を下半身に乗せ、動作は上半身よりも足の踏み込みが先。
リラックスした状態で足でグッと立ち上がり、下半身→上半身→バーベルの順番で力を伝えていくイメージ。自分が立ち上がる力を伝えればバーベルは自然に浮いていき、そこに「引きつける」力を少し添える。

正しい軌道とエラー動作

バーベルと一緒に浮き上がるのではなく「バーベルは上に、自分は下に」

踏み込んだときにバーベルと一緒に浮き上がらないようにすること。あくまで浮かせるのは「バーベル」であり、「自分」ではない。「踏み込み」と「引きつけ」の動作をつなげることで、「自分」は下、「バーベル」は上と行き違いになる。
こうした動作を20㎏のシャフトでも70kgのバーベルでも同じフォームで行う。これには力加減が重要で、決して力まず、力を抜いて行ってちょうどいいくらい。重量が重たくなるほど要所要所での瞬発力を高めていくことで同じフォームで実施できるようになる。

OK
正しい軌道

バーを下ろす動作


NG
上半身から前傾させる


ハングポジションを作る際に上半身から先に前傾させていくと、踏み込んだ際に上半から動きやすくなって、上半身で煽って挙げるかたちになる。下半身に重心が乗らなくなり足が使えなくなる

NG
バーベルの軌道が上半身から離れる


股関節まで引き上げた後、肘の引きが不足して腕が先行することによってバーベルが離れてしまう。肘でしっかりと引きつけないとバーベルが離れることになりる

NG
ジャンプしすぎて床から離れる


ジャンプしすぎて床から離れてしまうと、「バーベルが浮いてくる」感覚が全くなくなってしまう。あくまで「足でグッと立ち上がる」だけ。その力をバーベルに伝えたらポン!と浮いてくる

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本間智也(ほんま・ともや)
1986年4月24日生まれ。身長176cm、体重75kg。山形県出身。クイックリフト&ウエイトリフティングコーチ、パーソナルトレーナー。レスリング、競輪、水泳、スキーモーグルなどの日本代表選手の指導も行う。
主な戦績:
2009 アジアウエイトリフティング選手権 日本代表
2015全日本ウエイトリフティング選手権大会77kg級 優勝
自己ベスト スナッチ146kg クリーン&ジャーク180kg
トレーニングに関する質問、依頼などはインスタグラムDMより受付中。
https://www.instagram.com/tomo0117wl/


執筆者:藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。


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