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今年還暦を迎えた“狂気の男”~俺の素質は努力だけ~視力を失ってまで筋肉を鍛えボディビルで勝利を勝ち取った男の執念(後編)

 30代後半からメキメキと頭角を現わし、JBBFのトップビルダーとして日本選手権で最高2位にまでなっていた合戸孝二。しかしいくらその実力の高さを認知されてい ても、”2位”はあくまで2位であり、決して“一番”ではない。  だから、世界選手権で優勝するというアマチュアビルダーの最高成績を別にすれば、彼の日本選手権優勝は、そのボディビル人生最大級の悲願であった。
筆者はこれまで何度も、 非公式にではあるが、 合戸本人の口から"引退”の二文字を聞いてきた。もちろん、冗談かもしれなかったわけだが、その度に少なからずショックは受けてきた。 ただなぜか、ショックを受けながらも、本当にこの選手がその時点で引退するようには思えなかった。納得のいかない結果を叩きつけられて落ち込んでいるその姿をどれだけ見せられようが、「左目の視力を失ってまでも選手であり続けた男が、その悲願を達成せぬまま、自ら退くことができるのか?」 という問いかけが、筆者の頭の中から消えなかったのだ。
そして2005年。遂に合戸孝二の悲願は達成された。 "おめでとうございます"という祝福の言葉 も確かに浮かんだし、本人にも告げた。しかし、この成果は、彼を競技ボディビルにつなぎ止めていた要因の中でも、特に大きな割合を占めていたものの消滅を意味していた。彼にとっても、そして周囲の人間にとっても、大きな節目であることには違いない。
これから合戸はどうするのだろうか? 今回の特別インタビューでは、日本選手権優勝までの話を中心に、現在の心境を語ってもらった。
(本内容は月刊ボディビルディング2006年4月号「特別インタビュー合戸孝二」から修正引用)
取材:月刊ボディビルディング編集部 撮影:アイアンマン編集部

2005年ミスター日本

ー 通常のトレーニングだけではなく、有酸素運動でも相当な量の汗をかいていまたよね。でも、大会直前ならともかく、なぜ普段からドロドロ血になるほど水分を制限していたのですか?
合戸 意識して制限していたわけではないよ。 僕の場合、普段からあまり喉が乾かないんだ。 だから真夏でも、3時間くらいのトレーニングの中で、500mlのペットボトルの水を飲むか飲まないかという程度なんだ。実際はもっと水分をとらないといけないのだろうけどね。
ー もちろん、現在は気をつけて水分をとっていますよね?
合戸 ・・・・・・・・・(笑)。
ー とってないんだ・・・。
合戸 原因は水分だけではないと思う。あの99年当時は、サプリメントもあまりとっていなかったんだ。 ビタミン剤も摂っていなかったし・・・そういうのも悪かったんではないかと考えている。
ー ビタミンも摂っていなかったんですか。
合戸 プロテインだけだった。
ー あれ? 以前にスポットライトで取材させて頂いたときには、いくつか摂取して いるサプリメントを挙げてましたよね。
合戸 プロテインだけというのは、大会が近づいていたときの話だよ。
ー なるほど、仕上がりに対して、最後の追い込みの時期には、省けるものはどんどん省いていったということですね。ただ、それ以降は最後の追い込みに入った時期であっても、サプリメントは摂るようになったのですね。
合戸 その一件で、改めてサプリメントは重要なんだなって思ったよ。目を診てくれた先生曰く、要は栄養失調状態で、そういうときに起こる症状だと言われた。ほとんどプロテインのみの食事だったから、不足するものが多過ぎたんだ。
ー 栄養面の他に気をつけるようになったことはありますか?
合戸 デクライン・ベンチで行うような頭を下げる種目はやっていない。(今の合戸選手にとっては)危ないから。だから三頭のトレ ーニングでライイング・エクステンションを行う場合も、ベンチ台から頭を出すようなフォームでは行っていない。今思い返しても、こうした種目をやり始めてから症状が出だしたと思う。
ー 確かに、頭を下げる種目は眼圧が上がりそうな気がします。 しかも合戸選手の場合は、そうした種目にしても、比較的長時間追い込むわけですから、普通に行っている分にはかからないような負担が、目を圧迫していたのかもしれませんね。 栄養状態の悪さも手伝って・・・。
合戸 そうだね。

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