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今年還暦を迎えた“狂気の男”~俺の素質は努力だけ~視力を失ってまで筋肉を鍛えボディビルで勝利を勝ち取った男の執念(後編)

ー ただ、最高に充実したトレーニングができていたと言う99年以降も、合戸選手の進化は続いていました。例えば大腿四頭筋の横への膨らみなどです。全身の中でも、特にハ ードなトレーニングを必要とする脚を進化させたわけですから、目に対する心配から、ト レーニング自体の手を抜いたわけではないように感じました。もう片方の視力も失ってしまうのではないかという不安はないのですか?
合戸 ないね。もちろん、病院に通っていた頃は、そういう心配もあったよ。『バースデ イ』の中でも言ったけど、ベンチをやるとパッと朱色のものが(視界の中に)出たからね。 血管が爆ぜて・・・。当然病院に行くと、先生に「また出血してる・・・」と言われてすぐ治療。 その繰り返しを3回くらいやった。 治しているのに眼底出血の量が増えているので、先生には当然トレーニングをしていることはバレていたね。
ー でもボディビルをやめるわけにはいかなかった・・・。それが先生から言われたという「目とボディビルのどちらをとるの?」という質問につながっていくわけですね。そして合戸選手は「ボディビル」と答えた・・・。結局通院も3回でやめてしまったということですが、安静にしなかったという問題があったとは言っても、治療をやめることはなかったのではないですか?
合戸 その治療というのが凄く痛い。レーザーで出血のヒドいところを焼き切るんだけど、一発毎にこめかみにカーンと衝撃が走るんだ。 目は痛くないのだけど、頭のほうにくる。首から上の病気というのは凄く痛いよ。症状よりも治療が痛い。
ー トレーニングを続けながらの治療である限り、その苦しみは続くわけですから、病院から足が遠のいていったのも分かるような気がします。ただ、出血も止まった今なら、 治療を再開しても良いのではないですか?
合戸 僕が治療を受けた病院に話を聞きに行った『バースデイ』のディレクターさんが、 先生に「今からまた治療したらどうでしょうか?」と聞いたらしいんだけど、「無理でしょう」と答えたらしい。網膜が死んじゃっているから。

2019年ミスター日本

"コンテスト"と"選手権"
ー 左目を犠牲にしてまで、ボディビルへのハードな取り組みを続けてこられたことを考えると、昨年ミスター日本に輝くまでは、他人には考えられないような悔しさがあったと思います。そうしたことは、審査への不満などにつながりませんでしたか?
合戸 審査員に対する不満ではないけど、審査基準に対する不満はあった。
ー それを合戸選手は、ご自分が捉えている"コンテスト"と"選手権(あるいはチャンピオンシップス)”の概念の違いで、私に説明して下さることがありました。そのお話を誌上でも話しては頂けないでしょうか? (日本においてこの二つ言葉は明確な定義を持って使用されているわけではなく、日本選手権も、人によっては "コンテスト"と呼んでいる。小誌でも特に定義することもなく使用していて、今後も定義することはないが、ここでは合戸選手自身の捉え方のニュアンスを汲み取って頂くため、あえてそのまま使用させて頂くことにした)
合戸 僕は"コンテスト"というのは (美人コンテストの)ミス日本のように、美しさを競うものだと考えている。でも、"選手権"とつく限りは、(ボディビル競技においては) 前年よりどれだけ体をインプルーブさせてきたかを競わなければならないと思う。そして審査員はその点に注意して見極める必要があると思うんだ。だから、毎年体が変わっていない選手と変わっている選手の順位が常に変わらないというのもおかしいと思うんだ。
ー 読者に誤解がないように付け加えておきますが、その話の矛先が特に田代誠選手に向けられているわけではないですよね。確かに田代選手はそのフィジークにプロポーションの良さ、美しさを持っていますが、だからと言ってそれだけの選手ではない。それだけでチャンピオンになった選手ではないということは合戸選手も認めていましたよね。

2019年日本クラス別ボディビル 合戸選手(左)と田代選手(右)

合戸 そうだね。
ー ただ、そうは言っても、実際に戦っている当事者としては、「今回は自分のほうが 優れていたはずなのに・・・」と思うことはあったでしょう。そんな中、いつしかボディビル界の中に、審査上の傾向から考えても「合戸は田代には勝てないだろう」と予想する声が大きくなっていました。当然ご本人の耳にも入ってきた外野の声というのはあったと思いますが、よくやる気をなくすことなく挑戦し続けたものだと思います。
合戸 別に順位とか成績だけにこだわっていたわけではないからね。大会で競い合うこと自体を楽しんでいた部分もあった。それに、僕は大会に出るとなったら(気持ちの面も含めて)中途半端な状態では出たくないんだ。どんな大会にしてもね。だから例えば、以前から、マスターズへ出てみないかと誘われているんだけど、もし出るのなら100%で出る。なめてかかるようなことはしない。




佐藤奈々子選手
佐藤奈々子選手

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