人間の身体は複雑だ。身体には数多くのシステムが存在し、それぞれのシステムには目的がある。そして、心身の成長、生存、寿命を延ばすなど、私たちが生命を維持するためには、ひとつひとつのシステムを互いに同期させなければならない。もちろん「筋肥大」にも多くのシステムが関与している。それらのシステムの中には、今回話題にする自律神経系も含まれているのである。
文:Sarah L. Chadwell, NASM-CPT 翻訳:ゴンズプロダクション
コンテストに向けてコンディションづくりをしたことがある人なら分かると思うが、ピークに近づけば近づくほど、ちょっとしたストレスや塩分摂取などの外的要因がコンディションに大きく影響し、プラスにもマイナスにもなる。自律神経もそれと同じだ。ベストな状態を求めるのであれば、自律神経系をよく理解し、それが筋肥大にどう影響するのか知っておいて損はないはずだ。
▶筋トレ初心者必見!ボディビル世界王者・鈴木雅が伝授する絶対に押さえておきたいトレーニングの基本5箇条
自律神経とは
自律神経系とは、神経システムのひとつであり、自動的にその役割を調整する機能を備えている。例えば呼吸。私たちは無意識に呼吸をしているが、それをコントロールしているのが自律神経系である。
呼吸以外でコントロールしている機能には、血圧、心拍数、呼吸回数、体温、消化、代謝、体内水分量と電解質のバランスがある。
自律神経系には2種類ある。交感神経と副交感神経だ。2つは正反対の仕事を担っているが、身体を正常に動かすために互いの仕事を補佐し合っているのである。
交感神経は、どちらかというと体内の警報システムのような役割に関係している。例えば、身体の危機的な状況や、ストレスを感じるときなどに作動する。
一連の流れで言うと、外からの刺激で得られた情報を、自律神経系を介して受け取ると、身体にエネルギーを与え、力を出力させ、危険な状況に素早く対処するように反応する。
そして、その危険な状況に対して、真っ向から挑んで戦うべきか、逃げるべきかを決定し、その決定に最適な反応を起こすべく、筋肉を収縮させたり、心拍数を高めたり、血流量を増加させたりする。
それに対して副交感神経は、比較的、穏やかな時間を過ごしているときに作動し、心身の緊張を緩め、リラックスした状態を作る役割を担っている。
副交感神経が優位のときは、身体はできるだけエネルギーを温存し、積極的に疲れを癒やそうとする。他にも、筋肉の弛緩や心拍数の低下、血管壁の弛緩を促すことにも関係していて、消化された食物からのエネルギーを組織の修復や構築に利用する指示を出したりもする。
交感神経も副交感神経も、生きていくためには両方の働きが不可欠だ。この2つはシーソーのように、どちらか一方が優位になることはあるが、常に両方がタイミングを合わせて作動している。筋発達もまた、この2つの自律神経系によって起きているのである。
続けてお読みください。
▶「筋量が増えない、減量がうまくいかない人」にボディビル世界チャンピオンがお薦めしたいもの