8月7日、愛知・ラグーナテンボスで開催された「マッスルゲート愛知」。その“主役”となったのが、18歳の高校3年生、坂本陽斗選手だ。
坂本選手は2019年の全国高校生ボディビル選手権でコンテストデビュー。大会に出場するのはこれが5回目ながら、この日は「ボディビル75kg以下級」「ボディビルジュニア」「ボディビル高校生の部」「クラシックフィジーク175cm以下級」「クラシックフィジーク高校生の部」「メンズフィジーク172cm以下級」「メンズフィジーク高校生の部」の7カテゴリーに出場。午前からスタートして夕方に終了した今大会でほぼ出ずっぱりの状態になっていた。
「大会というものに慣れるために、今日はたくさんのカテゴリーに出ておきたいと思いました。マッスルゲートはJBBF非公式の大会なので、自分の可能性を広げるためにいろんな実験ができます。JBBFの大会ではボディビル一本に絞っていますが、もしかしたらクラシックフィジークに向いているかもしれない。また、僕は(年齢では)「ジュニア」「高校生」というカテゴリーになりますが、大人とも闘っていきたい。そういう可能性を広げるためにエントリーしました」
曲に合わせてポージングを行うフリーポーズは5つのカテゴリーで披露。全て曲を変え、最初は前もって異なるフリーポーズを5つ準備しておくつもりだったものの、「覚えるのは無理だと思った」ため、全てアドリブで実行。自分の出番が終わったら一度退場して、急いで準備をしてまた入場。休憩時間どころか「座る暇もなかった」という坂本選手であるが、なんと出場した全カテゴリーで優勝。1大会で7つの金メダルを獲得するという快挙を達成したのだ。
「次の試合は8月22日の愛知県選手権、10月10日の全国高校生選手権です。高校生選手権で上位に入ったら、同日開催の全日本ジュニア選手権にも出場できます。高校生選手権では優勝、全日本ジュニアではトップ3を狙っています」
坂本選手はこれまで優勝経験がなく、この日が初優勝。特筆すべきはボディビル75kg以下級で、この春に東京ノービス選手権で優勝したばかりの「なかやまきんに君」こと中山翔二選手に勝ったことである。
「『なかやまきんに君』は僕にとっては夢の中の人物だったんです。中学の頃からきんに君のマネをしていました。そのきんに君と同じステージに上がって、横に立てるということ自体が不思議な感じがしました。僕の中で“筋肉”といえば、なかやまきんに君なんです。闘って勝てたということに実感が湧かないです。信じられないです。今はただ、メダルが重いです。試合が終わった今のほうが緊張しています。もう高校生選手権では絶対に負けられません。そこで負けたら、今日僕と闘ってくれた方々に失礼です」
初めて優勝した日に憧れのきんに君に勝ってしまった高校3年生。夏休みの思い出としてはこれ以上のものはないだろう。
取材・文:藤本かずまさ 撮影:中島康介
執筆者:藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。