大胸筋の筋量を増やす最強プログラムと最強種目

自分の理想とする胸筋を作ることは決して簡単なことではない。もちろんそれは他の部位にも言えることだが、胸筋はとても目立つ部位なので、完成度が高くなればそれだけ全体の印象をガラリと変えることができる。だから多くのトレーニーが躍起になって胸のトレーニングに励んでいるのだ。それだけに、ある程度の経験を積んで、すでにさまざまなトレーニングを試してきたトレーニーには、ありきたりの胸のトレーニングでは満足できなくなっているかもしれない。もっと過激で、ガツンとした刺激が得られるようなやり方が知りたいなら、今回の記事はまさに打って付けだろう。

文:Matt Smith, CPT 翻訳:ゴンズプロダクション

胸筋の解剖学

胸筋は大胸筋と小胸筋によって構成されている。大胸筋は表層面にあって扇形をしている。始点は3カ所にあるが、終点はひとつに集約されている。

小胸筋は大胸筋の深部にあり、発達しても身体の表からは見られない。大胸筋に比べると小さい筋肉だが、姿勢を安定させる機能を持っているため、特定の競技を行うアスリートにとってはおろそかにできない部位である。

ただ、ボディビルダーを含むフィジーク系アスリートにとっては、小胸筋より大胸筋のほうが重要度が高い。そのため、ここでは大胸筋に焦点を当てて話を進めていきたい。

大胸筋には3つの始点があるので、3つの部分に分けて考えることができる。

まずは上部胸筋。文字どおり大胸筋の上部を占める部分で、筋肉の始点が鎖骨にある。

胸骨上に始点を持つのが大胸筋の中部だが、この部分は中部胸筋とは呼ばず大胸筋と呼ばれている。その理由は、大胸筋の主要な部分がここに相当するからだ。

胸骨下部と腹直筋鞘に始点を持つのが下部胸筋だ。この部分だけを過剰に発達させてしまうと、胸が垂れたような形になって見栄えが悪くなることもある。

形のいい胸筋を作るには、上部胸筋をしっかり発達させ、下部胸筋はあまり肥大させないようにしたほうがいいだろう。

とは言っても、上部も中部も下部もひとつの大胸筋である。ひとつの筋肉なのに部分ごとに分けて刺激するのは現実的なのだろうか。

確かにひとつの筋肉なので、上部だけとか下部だけを限定して刺激することはできない。それでも、特に上部を強調したり、あるいは下部を強調した刺激を与えることは可能なのだ。

例えば背もたれがついているインクラインベンチ台を使うベンチプレスは、フラットベンチプレスと比較すると、大胸筋上部への刺激を強めることができる。ただ、上部への刺激は強くなるが、中部や下部も多少は刺激を受けるので、上部だけを遮断して鍛えられるわけではない。ひとつの筋肉であるため、限定した部分だけを刺激したり発達させたりすることはできないのである。

筋肉のつくり方

筋肉を発達させるのは想像以上に難しいことだ。トレーニング未経験だったころは、ジムでトレーニングしてプロテインシェイクを飲みさえすれば、すぐにでも筋肉隆々の身体になると思っていた。ところが実際にやってみると、筋肉はそう簡単に増えるものではないことが分かり、ましてやバリバリの腹筋になるためには厳密な食事管理までもが必要だということを経験から学んだりしてきた。

そうやって学んだ中で特に大切なことは、トレーニングに関して言えば、筋肉を発達させるには漸増負荷が必要だということだ。以前よりも強い負荷をかけていくことで、筋肉が一定の刺激に慣れてしまわないようにするためだ。そうやって筋肉は強く太くなろうとし、それが筋発達につながる。

例えばベンチプレスで50㎏×10レップがこなせるとしても、この内容でいくら続けても筋発達は得られない。なぜなら、同じ負荷である以上、より強く、太くなる必要がないからだ。

しかし、使用重量を55㎏、60㎏、65㎏というように徐々に増やしていけば、筋肉はより強く、太くならざるを得ない。それが筋肉の発達反応なのだ。重量を変えなくても、1セットあたりに行うレップ数を10レップから12、15、18レップと増やすことでも、筋肉への負荷を継続的に高めていくことになるので、発達反応を継続させる漸増負荷になる。大切なことは、筋肉の限界に近づくように、少しずつ負荷を増やすことだ。ただし、増加させる負荷はあくまでも「少しずつ」、そして「継続的に」だ。一気に重量やレップ数を増やしてもマイナスの結果しか得られない。

また、一定の負荷に筋肉がまだ慣れていないうちにさらに負荷を増やすのも効果的とは言えない。あるいは、一定の負荷に慣れた状態をしばらく続け、それから一気に負荷を増やすというのも良くない。例えば50㎏×10レップを正確なフォームで行えるようになった時点で、次回のワークアウトから使用重量、もしくはレップ数を少し増やすようにして着実にレベルアップしていこう。初級者であれば、筋力向上と筋量アップはほぼ同時に得られることが多いので深く考える必要はない。しかし、トレーニング歴が長くなってきたら、自分にとってどちらを優先させたいのかを決め、その目的に沿ったワークアウトを行う必要がある。言い換えるなら、トレーニング歴が長い人は自分のゴールを明確にし、そのために適したトレーニングを行ったほうがいいということだ。私がここで解説していくのは、主に胸筋の筋量を増やすためのやり方だ。選択した種目は、どのセットも中程度〜ハイレップで行うようにし、セット間の休憩時間は長くなりすぎないように制限する。また、筋緊張時間を長くするためにさまざまなテクニックを用いる。そういうトレーニング内容が胸筋の肥大に貢献すると私は考えている。それでは早速、具体的なやり方に進んでいきたい。

最強の3プログラム

トレーニング法というものは世の中にごまんとあり、その中からベストなものを選択するのは、とても難しい話だ。それでも、自分にとってベスト・オブ・ベストのプログラムを見つけたいなら、完成度の高い胸筋を持つチャンピオンたちのプログラムを参考にするのが手っ取り早い。なぜなら、そういうチャンピオンたちのゴールは、胸筋を発達させたいと願う私たちのゴールと非常に似ている場合が多いからだ。ただし、完全に真似するのではなく、あくまでも参考にすること。チャンピオンたちと私たちでは体力も才能も異なる。同じプログラムを行ったとしても、結果が同じになるとは限らないのだ。あくまでもたたき台にし、調整を加えながら自分に最適なプログラムを完成させていこう。

【パワーハイパートロフィー・アッパー・ローワー:Power HypertrophyUpper Lower】
このプログラムは12週間で1サイクルとなっている。ワークアウト頻度は1週間に4回で、その内訳は、2回がパワー系、残り2回が筋肥大系のワークアウトだ。パワー系のワークアウトでは、主要種目に3〜5レップ、補助種目に6〜10レップ行う。筋肥大系のワークアウトでは、どの種目も8〜12レップ、もしくは10〜15レップを行うようにしよう。

【アンチボディビルディング・ハイパートロフィー:The Anti-Bodybuilding Hypertrophy】
筋肥大のためには、限界まで筋肉を追い込むことが大切だと言われている。加えて、低頻度でワークアウトし、オーバートレーニングを避け、筋緊張時間を長くすることが必要だ。つまり、それが筋発達を目的としたボディビルのためのトレーニングであるということである。しかし、アンチボディビルディング・ハイパートロフィーは、それとは真逆のプログラムだ。つまり、筋肉を追い込まない、高頻度でワークアウトする、筋緊張時間やオーバートレーニングは気にしないというものである。このプログラムは、筋力や筋持久力、心肺機能の向上、そして体重を増やすための筋量増加を目指してトレーニングしているストロングマンたちの人気を得ている。つまり、筋量増加だけでなく、総合的に身体機能を向上させたいという人に適したプログラムだ。このプログラムの基本は、拮抗筋を組み合わせることだ。つまり「背中+胸」と「大腿部+腹筋+カーフ」のワークアウトを作り、選択した種目はセットごとに3レップ、あるいは10レップ行う。 セット間の休憩は1分間で、ワークアウトは複数の種目を連続して行うジャイアントセットや、2種目を組み合わせるスーパーセット法などが盛り込まれている。 ワークアウト量は非常に多いが総合的な身体機能の向上を目指すなら、地獄のようなこのトレーニングプログラムに挑戦してみるのもいいだろう。

【5×5法:5×5 Strength Training】
何がなんでも筋肥大だという人には、このトレーニング法はあまり適していないかもしれない。しかし、この5×5法のようなプログラムは貪欲にトレーニングを行いたいというトレーニーとっては非常にテンションが上がるやり方だ。

このプログラムはもっぱらパワーリフターに好まれてきたものだが、胸筋に関して言うなら、彼らの胸はまさに迫力の塊である。胸筋に限定すれば、ボディビルダーであってもこのトレーニング法を試す価値は十分にあるはずだ。

このプログラムを1年も続ければ筋量が増えるだけでなく、何よりも筋力の伸びに驚かされるだろう。筋力が向上すれば、プログラムの選択肢は間違いなく広がってくる。そういった意味でもお勧めだ。

最強の3種目

他の部位ほどではないが、胸の種目もたくさん存在する。しかし、はっきり言って、これから紹介する3種目を超える効果が得られる胸の種目はないと思っている。逆に言えば、この3種目を重点的に行えば、胸筋への刺激は十分に得られるということだ。

胸筋を肥大させる最強の3種目。それは、まず第一にフラットベンチを使った「ダンベルベンチプレス」、次に、ウエイトを腰からぶら下げて行う「ディップス」、そして最後は、インクラインベンチとケーブルマシンを組み合わせた「インクライン・ケーブルフライ」だ。それぞれの種目の特徴を解説しておきたい。

【フラットベンチ・ダンベルプレス:Flat Bench Dumbbell BenchPress】

胸筋を肥大させることが最優先なら、バーベルベンチプレスよりも効果的だ。ダンベルなら可動域を広く取ることができ、ボトムポジションで胸筋をしっかりストレッチさせることができる。

この種目で意識したいのは、ダンベルを使うことによって広がる可動域を十分に使うということだ。トップでは左右のダンベルが触れるまで押し上げ、完全に胸筋を収縮させる。ボトムではダンベルと胸の高さが同じになるまで下ろして胸筋をしっかりストレッチさせるようにする。

【ウエイテッド・ディップス:Weighted Dips】

当然だが、自重を負荷にしたディップスができるようになっていなければ、腰からウエイトをぶら下げては行えない。まだディップスに慣れていないという人は、しっかり自重を負荷にしたやり方をマスターしよう。

基礎的な筋力が身につき、自重でのディップスを正しいフォームで行えるようになったら、腰からウエイトをぶら下げて行ってみよう。負荷が増えることで難易度は上がるが、胸筋には極めて強い刺激を得ることができる。

胸筋の発達にはベンチプレスが一番だと思っている人は大勢いるだろうが、ディップスはベンチプレスと比較しても遜色ないほど筋量アップに貢献してくれる。

また、ディップスは肩や上腕三頭筋も強化する種目なので、一石三鳥だと高く評価している専門家も多い。

ここでのディップスは胸筋をメインに刺激したいので、上体をやや前傾させた姿勢で行うようにしよう。そうすることで肩や上腕三頭筋への刺激を抑えて、胸筋をより重点的に鍛えることができるはずだ。

【インクライン・ケーブルフライ:Incline Cable Fly】

3つ目の種目は、ケーブルマシンとインクラインベンチを組み合わせる必要があるため、混み合う時間帯のジムで行うのは難しいかもしれない。それでも、チャンスがあればぜひ試してほしい優秀な種目だ。

ケーブルマシンの中央にインクラインベンチを置く。左右のケーブルのプーリー(滑車)を一番低い位置にセットし、ケーブルにハンドルを取り付ける。インクラインベンチのシートをまたいで、左右のケーブルのハンドルを両手にそれぞれ握ったらシートに座り、背もたれに背中をつける。

ここまで用意ができたら、ハンドルを引き、身体の正面に腕を伸ばして合わせるようにする。肘はロックさせず、動作中は軽く曲げておく。この姿勢がこの種目のスタートポジションである。

スタートポジションからゆっくり腕を開いていく。完全に腕を開くと、胸筋には強いストレッチが得られているはずだ。

ボトムポジションで強いストレッチ感が得られることで、スタートポジションに戻す動作で、さらに強い収縮感が得られるようになる。完全収縮と完全伸展は、筋肥大に不可欠な要素である。

胸筋発達のための5箇条

❶フルレンジで行う。可動域をフルに使って動作を行えば深部の筋線維にまで刺激が行き渡り、より多くの筋線維が発達のための反応を起こすことになる。
❷胸が弱点部位なら、胸のトレーニングを行った日はタンパク質とカロリーの摂取量を特に増やしておきたい。もちろん、むやみにたくさん食べても体脂肪を増やすだけだが、バルクアップの時期なら少し多めに摂っても問題ないはずだ。カロリー制限をしながらのバルクアップはなかなか実現しないので、しっかり栄養を確保し、特にタンパク質はしっかり摂るようにしよう。
❸意識して疲労回復に努めること。睡眠は8時間以上を確保するようにし、疲労回復とともにテストステロンや成長ホルモンなどのアナボリックホルモンの体内分泌を正常に保ちたい。
❹胸筋は週2回の頻度でワークアウトしたい。胸を肥大させることを最優先したいなら、一定期間、他の部位のワークアウト量を減らしてでも週2回の胸のトレーニングができるようなプログラムを作ろう。プログラムの組み方としては、胸のワークアウトを2回に分ける。例えば1回目は背中のワークアウトと組み合わせて、2回目は他の部位と組み合わせて行うようにするといいだろう。
❺サプリメントのクレアチンモノハイドレートを活用したい。クレアチンは成長ホルモンの分泌を促したり、疲労回復にも役立つという実験結果が数多く報告されている。

最後に

多くのトレーニーが、とにかく胸筋を発達させようと頑張っているが、そのせいで他の部位のワークアウトがおろそかにならないようにしたい。実際、胸筋のワークアウトは好きだが、脚のワークアウトは避けてしまいがちだという人は少なくない。特定の部位だけが目立って発達してしまった身体は評価されない。どの部位もバランスよく発達しているのが理想なのだ。

胸と同じだけ肩も背中も腕も意識したい。そして、上半身を際立たせるのと同じくらい脚部にも努力を注ぐこと。ちなみに、下半身の筋力が増すことで総合的な力が向上し、それは胸のワークアウトでも大いに反映されるということも忘れないでほしい。

筋発達のためにどのプログラムを採用し、どの種目を組み込み、どのサプリメントを摂取するかは人それぞれだが、誰にとっても共通した必要条件は、集中することと継続することだ。計画を立て、それに沿って継続的にワークアウトを行っていこう。

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