コンテスト

最強のふくらはぎをつくる「毎日トレーニング」

ボディビルをやっていると、他人のカーフがやたら気になってしまう。ボディビルダーはアスリートの中でもカーフへのこだわりが一番強いと言ってもいいだろう。ただ、問題なのは、カーフは私たちが思っている以上になかなか発達してくれない部位だということだ。とにかく頑固で、タフで、刺激に対して敏感ではない。それだけに、カーフを発達させるためには、できるだけたくさんの知識と経験を盛り込んでワークアウトを組み立てる必要があるのだ。

文:Jason Williamson, CSCS 翻訳:ゴンズプロダクション

カーフの構造を知ろう

カーフは2つの筋肉によって構成されている。ひとつは表層部にある腓腹筋、もうひとつは深層部にあるヒラメ筋だ。ヒラメ筋はその名前からも想像できるとおり、平たくて長い。膝からかかとまで伸びる筋肉で、腓腹筋の深部に位置している。ヒラメ筋は持久力に優れている筋肉で、歩行、走行、立位姿勢の保持など、快適な日常生活のためにも大切な筋肉だ。実際、ヒラメ筋を構成している筋肉の70%が遅筋線維であると言われている。そのため、疲労しにくく、この筋肉を刺激するにはハイレップの運動が適している。腓腹筋のほうは、遅筋線維と速筋線維の割合がほぼ半々だ。持久力も適度にあるが、ヒラメ筋よりパワーを発揮することが可能であるため、瞬発的な動きを伴うジャンプや短距離走などの競技で能力を発揮する。

カーフを発達させるための工夫

刺激に対して決して敏感ではないカーフだが、この部位を発達させるには日頃からできることをしっかり行い、ワークアウトでも工夫が必要だ。例えば以下のような事柄をふだんから意識し、可能であればトレーニングに取り入れてみよう。
①2~4週間に限定して、カーフのワークアウトを毎日行ってみる。さらに、この期間に限ってカーフのワークアウトから開始する。総セット数は4~6セットとし、毎日異なる種目を選択する。2~4週間の集中的なカーフワークアウトを終えたら、しばらくは他の部位と同じように間隔を空けて行うようにする。
②毎晩寝る前に、自重だけを負荷にしたスタンディングカーフレイズをゆっくりした動作で100レップ行ってみる。できれば、つま先を乗せるブロック台を用意したい。姿勢を保つために壁や柱に手をついて行うようにしよう。
③ふだんの生活で、つま先立ちで歩くようにしてみよう。
④階段に出くわしたらカーフレイズを行うチャンスだ。上り階段でつま先を段に乗せたら、拇指球に力を入れて体を押し上げるようにしよう。一段ごとに、瞬発的な動作のカーフレイズを行うイメージで階段を上ってみる。
⑤先のカーフ集中期間以外は、週2回の頻度でカーフを行う。また、この2回のワークアウトは異なる内容で行うようにしたい。1回目は高重量×4~6レップで行い、2回目は軽重量×25~50レップで行ってみる。このように異なる内容にすることで、カーフを構成する遅筋線維と速筋線維の両方に強い刺激を行きわたらせることができる。
⑥カーフの種目では、環境が許せば裸足で行うのがいい。裸足で行うと足裏の感覚が敏感になり、より強い収縮をカーフに得ることができる。これは実際に試してみればわかることだ。
⑦賛否両論あるが、カーフ種目ではセットごとにつま先の向きを内側、正面、外側というふうに変化をつけて行う方法もある。つま先の向きによって刺激が変わるのでカーフ全体を追い込むことができる。
⑧ワークアウトの効果を最大限に得るために、カーフ種目を行う前と後にはカーフ全体を心地よい範囲でストレッチしよう。

さまざまなカーフ種目

カーフの種目にはさまざまなものがある。今回、ここでは9つの種目を紹介するので、この中からいくつかを選択してワークアウトを組み立ててみよう。膝を伸ばして行う種目は主に腓腹筋を刺激するので、セットあたり8~12レップを目標にする。膝を曲げて行う種目は主にヒラメ筋を刺激するので、セットあたり最低でも12レップ以上は行いたい。

スタンディングカーフレイズ

膝を伸ばした姿勢で行うこの種目は腓腹筋を主に刺激する。ウエイトを使わずに、自重だけを負荷にして行うのであれば、できるだけたくさんのレップ数をこなして追い込むようにしよう。膝は伸ばすが、膝関節をロックさせるわけではない。膝を伸ばすと膝関節がロックされてしまうという人は、ほんの少しだけ膝を曲げる意識で行うようにしてみよう。

[やり方]

①ブロック台につま先を乗せる。拇指球でブロック台を押し込むつもりで、かかとをできるだけ高く持ち上げる。これ以上高く持ち上げられない地点まできたら、それがトップポジションだ。
②トップポジションではカーフをできるだけ強く収縮させ、その状態を1、2秒ほど保持する。
③かかとを下ろす際は、きるだけ深く下ろすように意識し、カーフを最大限に伸展させよう。
④この種目は専用のマシンがあるので、ジムではそれを活用して高重量で行うことができる。また、ブロック台さえあればジム以外の場所でもできるので、自宅などで自重を負荷にして行う場合は、セットあたり12レップ以上は行うようにしよう。

ダンベルカーフレイズ

自重を使って行うスタンディングカーフレイズは、ブロック台さえあれば自宅でもできるが、もしダンベルがあるなら、負荷をかけたスタンディングカーフレイズが自宅でも行える。ダンベルを用いる場合は両手にそれぞれ握って体側に下ろし、ブロック台の上に立ってかかとの上げ下ろしを行う。トップでは必ず一旦停止すること。ダンベルの代わりにチンニングベルトを活用してプレートを股の間にぶら下げたり、ケトルベルを用いて行うこともできる。ただし、ダンベルを両手で持って行うとバランスがとりにくい。万一ふらついたときに、すぐにウエイトを手から放しても問題がないように、足下には衝撃を吸収するマットを敷いたり、庭で行うなど工夫しよう。

バーベルカーフレイズ

スクワットを行うように肩にバーベルを担いでカーフレイズを行う。ただし、この場合もバーベルを肩の位置に安定させるために両手で支える必要があるので、万一、バランスを崩したときに、すぐに肩からバーベルを後方に投げ出せるように、やはり屋外で行うなどの工夫が必要だ。安全第一で行うようにしよう。

傾斜台を使ったカーフレイズ

傾斜台を使ってスタンディングカーフレイズを行うと、通常のブロック台よりもボトムで強烈なストレッチが得られる。運動強度を高めたいが重量は増やせないという場合は傾斜台を使ったカーフレイズを試してみよう。傾斜台を使うことで、足首にも強いストレッチがもたらされるので、カーフを構成する筋肉(腓腹筋とヒラメ筋)の終点部分にかなり効くはずだ。

片脚カーフレイズ

片手にケトルベルやダンベルを持ち、もう片方の手で柱や壁などに手をついて姿勢を安定させれば、安全に行えるだけでなく、限界まで確実にカーフを追い込むことができる。 片側だけで行う運動はユニラテラルと呼ばれていて、両側で行うバイラテラル運動に比べて対象筋への意識を高めやすい。それが運動強度にも比例するので、軽い重量でも対象筋をしっかり刺激することができる。また、左右で筋力のアンバランスがあっても、ユニラテラル種目を行うことで矯正することが可能になる。これまで両脚を同時に動かす種目では利き脚ばかりに効いてしまいがちだったという人は、ぜひ片側ずつを刺激するユニラテラル種目でアンバランスを解消しよう。

ドンキーカーフレイズ

ドンキーカーフレイズは、ボトムポジションでカーフを完全にストレッチさせられるため、昔からカーフの発達に最も貢献する種目として認識されてきた。自重の負荷だけでもカーフを刺激できるが、昔のトレーニーは自分の背中にパートナーを乗せ、それを負荷にして行っていた。もちろん、いきなり人を乗せるほどの負荷をかけなくても、腰の位置にバーベルやプレートを乗せて行うこともできる。この種目では、上体を前屈させてその角度を保って動作を行う必要がある。そのため、体の正面にベンチ台などを置き、それに手をつくなどして上体の屈曲角度を終始一定に保つように工夫しよう。トップポジションではカーフを最大限に収縮させ、一旦停止した後、かかとをできるだけ深く下ろして最大限にストレッチさせる。動作中、膝は伸ばすが、膝関節をロックさせないこと。膝を伸ばすと膝がロックされてしまうという人は、少しだけ膝を曲げる意識で行ってみよう。

シーテッドカーフレイズ

腓腹筋の深部にあるヒラメ筋を効率よく刺激するなら、膝を曲げ、シートに座って行うシーテッドカーフレイズが最適だ。この種目は専用のマシン以外でも行うことができるので、ホームトレーニーの人も試してみよう。用意するのはダンベル、頑丈なイス、そしてブロック台だ。

[やり方]

①イスに座って膝を直角に曲げ、つま先をブロック台に乗せる。両足は腰幅程度に開いて、つま先を正面に向ける。ダンベルを縦にし、プレート面を膝より少し上の位置に乗せ、手でダンベルをしっかり支えて安定させる。
②かかとを持ち上げる際は、拇指球でブロック台を押し込むようにしよう。これ以上高くかかとを持ち上げられなくなったところがトップポジションだ。
③トップではカーフを最大限に収縮させ、その状態を1、2秒ほど保持する。
④その後、かかとをできるだけ深く下ろし、カーフを最大限にストレッチさせる。
⑤かかとを押し下げた状態でダンベルをできるだけ下方に押し込んで負荷を強めよう。
⑥再びかかとをできるだけ高く持ち上げ、この動作を繰り返す。

マシン・シーテッドカーフレイズ

多くのジムには、シーテッドカーフレイズのための専用のマシンがある。マシンを使えばフォームを固定することができ、確実にカーフだけを刺激することができる。このマシンを使うと、それまで行っていたシーテッドカーフレイズとまるで別物にさえ思える。それくらい、正確なフォームを維持して行うとカーフに猛烈な刺激をもたらしてくれる。

[やり方]

①シートに座り、膝を押さえるパッドをセットする。
②両足を腰幅程度に開き、ブロック台につま先を乗せる。つま先は正面に向けておく。
③準備ができたら、拇指球でブロック台を押し込むようにしてパッドを押し上げ、かかともしっかり持ち上げる。
④これ以上、かかとが持ち上がらなくなった地点がトップポジションだ。トップで一旦停止し、カーフの収縮を十分に感じよう。
⑤ゆっくりかかとを下ろす。かかとはブロック台より下方に下ろすようにすること。

カーフ強化に役立つその他の種目

ここで紹介したカーフをダイレクトに刺激するウエイトトレーニング種目の他に、たとえば縄跳びは有酸素運動にもなるし、カーフにも刺激をもたらしてくれる。もちろん、ランニングやハイキングなどもそうだし、多くの有酸素運動がカーフを刺激する運動になる。実は水泳もカーフの発達に貢献する。特にケガからの復帰過程にある人は、水泳を行うことで総合的なリハビリ運動になり、衰えてしまったカーフの筋力を元のレベルに戻すための準備運動になる。

最後に

カーフは他の部位以上に発達させるのが難しい部位だ。刺激に対して頑固な部位だからこそ、確実に強い刺激を与えることが必要になる。そのためには選択した種目を限りなく正確に行いたい。完全収縮とストレッチを得るために、可動域を広く使って動作を行うこと。ハイレップスもローレップスも行って、カーフを構成するすべての筋線維に刺激を行きわたらせること。そして何より、途中で投げ出さず、忍耐強くカーフの発達のためのワークアウトを続けることである。

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佐藤奈々子選手
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