本気でトレーニングしている人は、誰よりも秀でた身体になりたいと思って、常に何かしらの「秘訣」を求めている。大きな差をつけたいわけではなく、ちょっとの差でいいのだ。ただし、1ミリであっても周りよりも勝った身体を作りたいのだ。(IRONMAN2021年2月号より修正引用)
文:William Litz 翻訳:ゴンズプロダクション
闘志を燃やし続けているアスリートは、トレーニングだけでなく食事にも細心の注意を払っている。結果につながる食材があるなら、まずは試してみたいと思っているのではないだろうか。それなら、ぜひカボチャを試してほしい。なぜなら、カボチャはおいしいだけでなく、筋肉にパワーと筋力をもたらす隠れた食材だからだ。
アスリートに勧められない食材を挙げたらキリがない。しかし、カボチャはそのリストで言うと下位なのだ。信じられないかもしれないが、多くのアスリートにとってバルクアップシーズンである秋や冬でも積極的に食べることができる食材なのである。
カボチャの種に含まれるアミノ酸がすごい
筋発達を目的にしている人たちの中で、カボチャを積極的に食べているという人は少ないかもしれない。アスリートの食事では「好きな食材」よりも「目標に近づくために役立つ食材」でメニューが構成されることが多いわけだが、その中でカボチャが選択されることはあまりなかったはずだ。
しかし、これからはその考えが変わるかもしれない。なぜなら、カボチャはアミノ酸を豊富に含む食材だからだ。
2012年発行の『コリアン・ニュートリション・ソサイエティ&ザ・コリアン・ソサイエティ・オブ・コミュニティ・ニュートリション』誌によると、カボチャの種には9種類のアミノ酸からなる必須アミノ酸が全て含まれているそうだ。
つまり、カボチャの種には体内で作られない9種類の必須アミノ酸が全て含まれていて、特にヒスチジン、ロイシン、そしてバリンの含有率は他の必須アミノ酸よりも高かったことが分かったのである。
そうだとするなら、おやつにカボチャの種を食べるようにすれば、筋発達に不可欠な必須アミノ酸を十分に取り込むことができるはずだ。特にロイシンの含有量が多い点も、筋発達を望むボディビルダーには非常に大きな魅力だろう。
カナダのマックマスター大学では40名の男性を被験者にし、ホエイプロテインとロイシンが筋発達にどのような効果をもたらすかを調べる実験が行われた。実験の結果、少ない量しか摂取しなかったグループは、量の多いグループに比べて筋発達の度合いが低かった。
しかし、何よりも驚かされたのは、6・25gのホエイプロテインに5gのロイシンを加えて摂取したグループは、25gのホエイプロテインを摂取したグループと同じレベルのタンパク同化率が得られたことである。これは明らかにロイシンがもたらす筋発達への効力が大きいことが分かる結果だったのだ。
この実験から分かることは、もし食事から十分なタンパク質が得られない場合があったとしても、ロイシンを含む食材やサプリメントを加えることで、筋肉の発達反応を積極的に促すことができるということだ。
例えば、タンパク質が不足した食事しかできなかったとしても、カボチャの種をスナック代わりに食べるといい。カボチャの種の中のロイシンが不足しているタンパク質を補ってくれるはずだ。
カボチャに含まれる亜鉛がすごい
カボチャには亜鉛が多く含まれている。これまでに行われてきた多くの研究から、体内テストステロン値の低い患者に亜鉛が多く含まれる食事を摂ってもらうと、状況の改善が見られることが分かっている。
体内のテストステロン値が低い状態が続くと、筋発達を妨げるだけでなく性欲や意欲の低下が招かれやすくなる。男性で、特に筋発達を目的にトレーニングしてる人なら、できるだけこのような事態に陥りたくないはずだ。
では、簡単に予防できる方法は何か。それは、カボチャやカボチャの種を積極的に食事に取り入れることである。
カボチャの筋力アップ効果がすごい
握力が弱くてデッドリフトやチンニングで追い込めず、それを補うためにリストストラップを利用している人は多いはずだ。もちろん、ストラップを使うことは間違った選択ではないが、理想から言えばどの部位の筋力も強くありたいものだ。
握力に限らず、どの部位の筋力も積極的に伸ばしたいと思うなら、ここでもやはりカボチャやカボチャの種が役立ってくれるはずだ。 2012年に台湾のプロビデンス大学で行われた実験では、ハツカネズミにカボチャの抽出液を与えて筋持久力や握力に変化が見られるかどうかが調べられた。カボチャの抽出液を加えた食餌は14日間続けられた。
実験の結果、ハツカネズミの前足の握力が顕著に増加したことが分かった。また、持久力についても、疲労困憊するまでハツカネズミを泳がせた結果、カボチャの抽出液を食べたグループは、食べなかったグループよりも大幅に持久力が向上したことが分かった。
これらの実験結果から、カボチャの抽出液は抗疲労に役立ち、運動能力を補助してくれる可能性が高いと研究者たちは結論づけたのである。
まとめ
これまで、カボチャとアスリートを結びつける話題はほとんどなかったわけだが、これからはカボチャもアスリートが選択すべき食材のひとつとして理解されていくだろう。
カボチャだけでなく、カボチャの種もまたアスリートの能力向上に役立つ栄養素がふんだんに含まれているので、スナックとして利用したり、ヨーグルトやサラダなどに加えてみてはどうだろうか。
【カボチャの栄養素】※100g あたり(日本かぼちゃ)
●カロリー:49キロカロリー ●炭水化物:12g
●食物繊維:3g ●タンパク質:2g
●ビタミンK:一日推奨量の49%に相当
●ビタミンC:一日推奨量の19%に相当
●カリウム:一日推奨量の16%に相当
●銅、マンガン、リボフラビン:一日推奨量の11%に相当
●ビタミンE:一日推奨量の10%に相当
●鉄:一日推奨量の8%に相当
●葉酸:一日推奨量の6%に相当
●ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、チアミン(ビタミンB1):
一日推奨量の5%に相当
【カボチャの種の栄養素】※カボチャの種28gあたり
●カロリー:151キロカロリー ●食物繊維:1.7g
●炭水化物:5g ●タンパク質:7g
●脂質:13g(そのうち6gはオメガ6)
●ビタミンK:一日推奨量の18%に相当
●リン:一日推奨量の33%に相当
●マンガン:一日推奨量の42%に相当
●マグネシウム:一日推奨量の37%に相当
●鉄:一日推奨量の23%に相当
●亜鉛:一日推奨量の14%に相当
●銅:一日推奨量の19%に相当
William Litz
カナダのウィニペグで活動する有資格のパーソナルトレーナー。過去10年以上にわたり、フィットネス系雑誌やオンライン雑誌にトレーニング関連の記事を執筆してきた。ボディビルに精通しており、熱狂的なボディビルファンでもある。