必ずしも高重量のトレーニングが必要なのか。ここでは高重量でなくても高重量を使ったような効果が得られるトレーニング方法について解説する。
文:William Litz 翻訳:ゴンズプロダクション
「弱音を吐くなら、とっとと家に帰れ!」という意味の「ゴーヘビー、オア、ゴーホーム」は、昔からトレーニングマニアたちの間でよく用いられてきた叱咤激励のフレーズだ。
しかし、本当に高重量でのトレーニングは筋発達に不可欠なのだろうか? 軽い重量では筋発達は不可能なのか? 軽いとまでは言わないまでも、自分にとって安全が確保できる範囲での重量を使って、高重量でのトレーニングと同じような効果は得られないのだろうか?
加齢に伴い、多くのトレーニーたちが慎重にトレーニングせざるを得ない現実がある。うかつに高重量に手を出せば筋肉や腱、靱帯などを断裂してしまうかもしれない。そんなリスクを負ってまで高重量トレーニングに執着するべきなのだろうか? そこまでしなければ筋発達は続かないのだろうか?
おそらく、若い人たちにこんな問いかけをしてもピンとこないかもしれないが、誰もが平等に年をとり、やがて誰もがぶち当たる問題なのだ。もちろん、若ければ疲労回復だけでなく、ケガの治癒にかかる期間も短いが、傷跡は後になって弱点になることが多く、無茶をしたことのツケは中高年になって払わされるものなのだ。
はっきり言って高重量でのワークアウトは楽しいし、達成感がある。自己記録が伸びればますます熱くなり気合いも入る。
確かに、パワーリフターやストロングマンの大会を目指す人たちにとって高重量トレーニングは必須だ。しかし、筋肉を肥大させて洗練されたフィジークを作りたいという人にとっては、必ずしも高重量が必要であるとは言えない。
特に、トレーニングを生涯にわたって続けたいと思っている人にとっては、高重量でのトレーニングは絶対に必要なものではないはずだ。今は問題なくても、将来はそれがあだになりかねない。
そこで今回は、高重量でなくても高重量を使ったような効果が得られるトレーニングのやり方について紹介していきたい。
フランク・ゼーンのケース
過去に3度のミスターオリンピアで頂点に立ったフランク・ゼーンは、現役時代から比較的軽めの重量でトレーニングし、洗練された肉体を作り上げた。それでもある一時期、高重量を使ったトレーニングを行っていたことがあり、それが原因でケガを招いてしまったそうだ。どうして高重量に手を出してしまったのかと、後年のゼーンはよく悔いていた。
若い頃のゼーンは、比較的軽い重量であってもゆっくりしたテンポでの動作を意識していた。周知のとおり、ウエイトを下ろす動作(ネガティブパート)では筋肉が最も強烈な刺激を受ける。このネガティブパートをゆっくり行うと筋緊張時間が延長されるので、筋発達の促進につながるとされている。
軽い負荷でもゆっくり下ろすやり方はケガのリスクを減らし、なおかつ筋発達のための刺激も得られる効果的なやり方なのである。
「軽い負荷=楽なトレーニング」ではない
軽い負荷でのトレーニングは楽だと誤解している人が大勢いる。筋発達には高強度トレーニングによる刺激が必要になるが、そのためには高重量しか選択肢がないというのは間違った思い込みだ。必要なのは強度の高い刺激であり、それは必ずしも高重量とは限らないのだ。