「ダイエットの理由は2つあります。1つ目は、病院勤務時代、糖尿病の患者さんをご指導するなかで、自分が太っていては説得力がないと思いました。患者さんにも、『どっちが患者かわからない』と言われました(笑)」
「2つ目が、愛読している雑誌に出てくる選手の方たちへの憧れです。自分もあんな身体になりたいと思いました。ウエイトトレーニング専門誌の『IRONMAN』、『月刊ボディビルディング』が好きで、鈴木雅選手や木澤大祐選手、伊吹主税選手は特に好きで、記事を参考にトレーニング法を取り入れています」
「わんぱくでぶでぶ侍」と呼ばれ、100kgを超す巨体からスタートを切った渡部昂平(わたなべ・こうへい)さんのボディコンテスト上位入賞を飾るまでの軌跡を辿ってみよう。
渡部さんはまず、トップ選手のメニューを参考に、5分割法でまずはトレーニング技術の上達、基礎体力の向上を図った。同時に始めた食事では、最初に失敗も経験したという。
「大会出場初年、焦ってベリーローカロリーでの食事制限と有酸素運動を併用した結果、筋肉ごと持っていかれてしまって、当然、全く成績も振るいませんでした。その反省を活かして、偏った食事をせず高タンパク、中糖質、低脂質の和食のようなバランスの取れた食事法に修正しました。現在は、無理に食べる量や種類を減らさず、同じ成分でも食べごたえのあるものにするなど、バリエーションを工夫しています」
また、医療従事とトレーニングの両立は苦労も多い。
「ジム日、オフ日は事前に決めていても、残業が多く24時からトレーニングを始めるようなときもあり、かなり時間の確保が難しい上に、仕事でも体力をかなりつかうので、トレーニングでダレないようにするには精神力が必要でした」
しかし、着実に変わっていく自分を見て、考え方が前向きになり、行動力も上がっていったという。
「美容院や服屋にいくのも躊躇するレベルで自分に自信がなかったんです。それが、おしゃれに興味を持つようになって、今までしてこなかったさまざまな挑戦をしようと思えました」
そして5年の月日をかけ今年、JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)主催の『西日本メンズフィジーク選手権大会』176cm以下級で4位という上位の成績を収めた。
「最終目標はオールジャパン選手権で活躍して、トップ選手になることです。また、以前からボディビルにも興味があり、そちらにも挑戦してみたいという気持ちになりました」
しかし、渡部さんには、選手としての思い以上に大きな目標があるという。
「僕は今、医療従事者と兼務してトレーナーもしています。それは、患者さんからの声がきっかけです。病気にかかられた皆さんは口々に、“もっと運動しておけばよかった”とおっしゃいます。でも、高齢者の方だと、どこでどんな運動をしたらいいかもわからない、女性の方だと過度な間違ったダイエットで身体の機能自体に不具合を起こしてしまったりもしている」
「じゃあ、僕がその窓口になろうと。自分自身がボディメイクで得てきた経験だけでなく、感動や人生の好転まで伝えていける人間になれば、もっと皆さんの人生が豊かになるんじゃないかと思っています。ボディメイクって人生を本当に変えてくれるので、精一杯そのお手伝いがしたいです」
取材:にしかわ花 写真提供:渡部昂平さん