トレーニング開始1年でベストボディ・ジャパンを制し、現在はパーソナルトレーナーも務める柳本絵美さんを 『マッスルコンテスト東京』の翌日にキャッチ。
コンテストの楽しみ方から最高の自分の見つけ方まで伺いました。ポジティブなパワーワード満載です!
マッスルコンテスト東京出場で一番伝えたかったこと
──『マッスルコンテスト東京』から一夜明けて、今日の撮影に駆けつけていただきました。まず、大会出場のホットな感想をぜひ。
一言でいうと、楽しかった! ですね。今回、出場にあたってブログやインスタグラムに書いていたのは、「結果にとらわれずに、大会を人生の起点にする」ということでした。
──「起点」とはスタートライン?
そうですね、スタートラインだったり、何かのきっかけだったり。
例えば、そこに向かってモチベーションをいつもより上げてみるとか、何かにチャレンジしてみるということをテーマに取り組みました。
結果は5位(ビキニ・オープンクラス C)ということで、今までと数字だけで比べると「1位を取れなかったな」となるんですが、今回は自分自身に嘘をつかないで生きていくという毎日の過ごし方ができたので、心の充実感はすごく大きかったです。
──大会出場や上位入賞を「目標」 に設定しがちですが、なぜ「起点」 にしようと考えたのですか?
普段、パーソナルトレーナーとしてたくさんの方と触れ合っていますが、
大会で1位を逃して苦しむ人がすごく多いんですよね。
でも、私は目の前でクライアントさんの努力や成長を見届けているので、
「1 位を取れなかったことは決して否定されているわけではないんですよ」と断言できるんです。
──確かに、上位入賞を逃すと「自分はダメだったんだ」とか「努力は 無意味だったんだ」と落ち込んでしまいがちです。
体の絞りなど審査基準はいろいろあるので、
入賞できなかったのは大会の基準に合っていなかっただけかもしれないし、
その人自体が否定されているわけでは決してないんです。今回は、それをすごく伝えたかったんですよ。私自身が大会への新しい取り組み方を見せたりしながら。
勉強との両立から三角ビキニまで挑戦してみて分かったこと
──ブログの中で「ひとりのアスリートと思い込み日々を送る」と書かれていましたが、それも新しい取り組みのひとつですか。
そう、「あと2カ月だから一気にやります!」じゃなくて、年間を通して本当にトレーニングが日常になったので、
アスリートが朝練をするようにトレーニングをしようとか。食事にしても、パンケーキが食べたいときもあるんですけど(笑)、
日ごろからPFCバランスをきちんと意識しようとか。
小さいチャレンジかもしれませんが、そんな意識改革にも取り組みましたね。
──コンテストに出始めたころは減量も手探りで「大会前日に泣きながら氷をなめた」とも…
そのころに比べたら成長しましたね(笑)。
今回、私にとっては試験勉強と両立させながら体を作っていったこともチャレンジのひとつでした。
12 月にパーソナルトレーナーの資格試験を受けたのですが、
とにかく一定期間、勉強に集中しすぎて腱鞘炎になってしまったりして (苦笑)。
──腱鞘炎! 猛勉強の結果は?
周りの方にも本当に協力していただいて、無事合格! でした。
試験勉強って必ず「答えがある」もので、理解できて答えにたどりつければ自己肯定感も高まるし、
努力が必ず報われるという意味ではとても楽しかったです。
ただ、普段の仕事とトレーニング、そして勉強を同時進行でやっていくのは難しかったですね。
──どのように克服しましたか?
誰だってお仕事とプライベートの充実を両立させている、
だから自分も置かれている状況の中で最大限にやっていこうと意識しました。
言い訳する代わりに、大変だけど今の状況って幸せだなと発想を転換させる感じで。
例えば「3時間も勉強して、トレーニングも1時間半やっているなんて私、めっちゃ頑張ってるじゃん!」
という風に、自分を褒めながらやっていましたね。
──チャレンジといえば、ブログでは大会コスチュームを「思いきって三角ビキニにした」とも。
三角ビキニは盛れないからカップじゃないと無理!と避けていたんですが、ついに挑戦しました。
大会をきっかけにチャレンジしてみることを、自分や周りに宣言して行動していくことって恥ずかしいことじゃないし、
結果が出なかったからゼロでもない。絶対に成長できるから。だって、自分が三角ビキニを着る日が来るなんて思ってもいないですから。
──そんなに苦手意識が?
もう三角アレルギーでしたよ(笑)。
でも、やっぱりNPC(ナショナル・フィジーク・コミッティ) 系のビキニは三角なんですよ。
私はどんどん慣れていって、そういうことを知っていくけど、初めて出るときは大会って何なのか、どんな水着、アクセサリーなのか戸惑う人も多いと思うんです。それを伝えていく意味でも、まず私自身がやってみようと。今回も挑戦したからこそ断言できます。三角ビキニも盛れるよと (笑)
コンテスト出場の目的は「私の頑張りを見て!」でいい
──2月11 日には『マッスルコンテストジャパン』が控えています。ご自身にとって、この大会はどのような位置づけですか?
去年、ノービスクラス(ビキニノービスB)で優勝させていただき、その次となるとプロクオリファイになります。
だから「プロを目指しているんだね」と言われることも多いんですが、そうではなく私自身は本当に自己表現がしたいと思っているんです。
もちろん大会の基準に合わせて絞っていきますが、私なりのステージングをすることが、まず 一番。
順位は分からないですが、それを見てくれた人に何か響くものがあればいいなと思っています。
──大会は最高の自分を表現する場だと。
はい。「優勝したいと思っていないと大会にはチャレンジできないですよね」という人も多いですが、そんなことはないんです。
例えばマッスルコンテストと同時に開催される、コンテスト初心者向けの『マッスルゲート』だってありますし
「勝ちたい!」というだけでなく「私が頑張っているのを見て!」という人がもっともっと増えていいと思うんですよね。
その結果、みんなの日常が輝けば、大会がより生活に活かされると思っていて。
一昨年ラスベガスの大会に行ったときは1位になることがゴールだったので、燃え尽き症候群みたいになってしまってつらかった時期もあったんですけど。
──『 Musclemania World Fitne ss America Weekend 2018 』ですね。1位を目指して大会2カ月前に一度下見にも行ったという。
それなのに結果は2位(苦笑)。それで燃え尽きて、2週間くらいトレーニングを休んでしまったりして。
でも、そのときに思ったことが今、すごく活きてきていますね。
「自分を否定せず、誰よりも自分がコンテストを楽しもう」と。
誰に頼まれたわけではないですけど、私がまず実践したいし、それが誰かの勇気になればいいと勝手な使命感を持ってやっているんです。
──確かに、お話を聞いているうちにコンテスト挑戦の敷居が少し下がった気がします。
参加する人が増えるほど、いろいろな人が見られて楽しいし、
コンテスタント同士も「あなたのビキニいいね」なんて言い合えて、それもまた楽しいし。
そうやってコンテストを楽しむ人、好きになる人が増えていけば、トレーニングに触れること自体がもっと気軽になるのかなと思いますね。
──コンテストというと、どうしても舞台裏などのピリピリしたムードをイメージしてしまうけれど。
マッスルコンテストに去年出て感じたのは、助け合いがあったり、けっこうほんわかムードだったこと。 だから今年も出たいと思ったんですよ。
正直、私はビキニ向きの体かというと、筋肉のつきやすさなどから言っても決して向いていないと思うんですね。
でも、気持ちの面での楽しさを先行させたいと思ったので、「向いていない、じゃあやめておこう」じゃなくて、
「でも、とりあえ ずやってみよう」と。結果、出場して本当によかったです。
減量期の自分もかわいいと思える ポジティブマインドのルーツ
──大会までの過ごし方についても伺いたいのですが、減量期には思いつくままにノートに心境をつづって夜を過ごすこともあるとか。
減量すると感覚が研ぎ澄まされるのか、いろいろと言葉が浮かんでくるんですよね。
減量って苦しいだけのイメージが強いけれど、楽しいと思うこともあって、そのひとつが違う自分に出会えることなんです。
──違う自分に出会える?
減量期は食べたいものを食べられなくなったりして、気持ちの面 でちょっと余裕がなくなるじゃないですか。
そうなってくると、普段は怒らないポイントで心がモヤッとし たり、イラっとしたりするんですよ。
──よく分かります。
私もベストボディに初めて出たころは、周りにもイラッとしていましたけど、今はさすがに慣れましたし、
自分で望んでやっていることだからと表には出さなくなりました。
その代わり、「こんな自分がいたんだ」とか「これが素の自分なのか」と思えたり、そんな自分がかわいいなと思えるようになってきたりして (笑)。
そんな心境で夜にひとりで座っていると、いろんな感情や言葉が湧き出してくるんですよね。それを手書きにしたり日記につけたりするんです。
──自分の内面と対話できるチャンスととらえると、減量期もちょっと楽しめそうですね。
たくさんの人に大会を経験してほしいなと思うもうひとつの理由は、表現力が磨かれること。
ポージングなどの練習で表現力が上がると、日常生活でも役立つと思うんです。
うれしいものを本当にうれしいと表現できたり、悲しければ思いきり泣いたり。
大きくリアクションを取るというと芸人さんみたいですけど (笑)、そうできたほうがお互い気持ちよかったりするんですよね。
──実践してみます! それにして も、前回のインタビューで「昔はネガティブだった」と語っていましたが、それが信じられないくらい、お話をしていると元気が出ます。
本当ですか? うれしいです。
私は「えみりーがネガティブだったなら、自分もポジティブになれるんじゃないか」と思ってもらいたいし、
「もともとポジティブだけど、今はちょっと落ち込んでいる」という人 にも
「大丈夫だぜ!」と安心してもらいたい。私のSNSにしても、そんなエネルギーチャージができる場所でありたいと思っているんです。
──SNSで背中を押してもらって いる人も多いかもしれませんね。
そういえば、昨日の大会後に待っていてくれた方がいて。
インスタで質問コーナーを月に一度やっているんですが、
「職場で人格否定をされて」というメッセージをくれた女性がいらしたんですね。
私は「そういう人の言葉は聞かないほうがいいです。そもそも自分の物差しでしか人を測っていないから」という感じで返したら、数カ月後にお返事が来て。
「今は職場を辞めて新しいところで頑張っています」という。
──その方が大会観戦に?
そうなんです!
私のステー ジを見たいと、わざわざチケットを買って来てくださって。
お話を伺ったら、「私もえみりーみたいにネガティブからポジティブになれるかなと思ってやってみたら、めっちゃポジティブになっちゃいました!」と。
──それはうれしい言葉ですね。
そういう方がひとりでもいるということは、きっともっと増やせると思っているし、私にできることはきっとあるんだなと思えた瞬間でした。
自分の最高の人生を生きるとは?
──2020年の目標などあれば、ぜひ教えてください。
まず大テーマとしては「自分の最高の人生を生きる」というのが あります。
それをベースにして私生活やトレーニングなど、カテゴリーごとにやりたいことがまたあるという感じですね。
じつは『ウーマンズシェイプ』さんの表紙になることも、そのひとつだったんです。
──いきなり実現しましたね。
去年の年末に新しくなった夢ノートに4回くらい書いていました (笑)。
しかも、表紙になるという連絡をいただいた日は、勤めているスタジオで鶏胸肉を食べながら
「私がここに入ったらどうなるのかな」と、30 分くらい表紙を眺めてイメージングしていたときでした。
だから驚いたのとうれしいのとで自律神経が乱れました(笑)。
──目標や夢を書き出すと、やはり実現しやすい?
すごく思うのは、書くことによってそれに向かっていくんですよ。 自分が意識して行動できるようになるんだろうなと思っています。
──自分への決意表明になるのかもしれませんね。書いたものはよく見直すんですか。
気合いを入れたいときは1日おきに見返したりもします。
かといって、思い詰めすぎると疲れるので、ちょっとここは休もうというときは1~2週間空けて、また見返してみたりと、
何となく自分の中でリズムがあるんですよね。
──改めて、2020年のテーマで ある「最高の人生」とは?
イメージがぼんやりしていますかね。
あえて具体化していないのは、決して一人で生きているわけではないから。遭遇するどんな出来事も、たいていはいろいろな人と話したり出会ったりする中で起きますよね。
うれしい出来事や、予期せぬ出 来事…。だから「これしかない」と決めちゃうと、そうならなかったときに苦しくなる気がして。
──いろいろな人と関わっていく中で、いつも最高の自分でありたいと?
そう、自分が納得すること、満足することが大事だと思うんです。
人の価値観に左右されず、自分が最高だと思えば、誰が何と言おうと最高なんだと。
そういう発想が当たり 前になれば、周りにも最高な仲間が 増えていくじゃないですか。
──体作りに関しても、本来は自分にとって最高であればいいですよね。 人と比べてしまうと、どうしても満足できなくなってしまう…。
例えば「ビキニのあの選手になりたい」と思っても、完璧に同じにはならないですよね。
でも、どうしても比べてしまうから、うらやましかったり、ねたんだりしてしまう。 昔の私がそうでした(苦笑)。
その人とは全然違う人生を生きて、全然違う努力をしているのだから、むしろお互いをリスペクトして「あなたのここが素晴らしい」と言い合いたいし、「相手を褒める私って最高」と(笑)。
──まさに最高の連鎖ですね。その発想はどこから?
やっぱりラスベガスの大会がきっかけかもしれません。
バックステージでは選手がみんな「その髪型すごくいい!」とか「あなたの水着ステキね、見せて、見せて」と褒め合うんです。
そのあとに必ず「でも、私も超いいでしょ!」って(笑)。
あの雰囲気がとっても楽しかったので、マッスルコンテストでもその雰囲気を味わいたいなと。
──そういえば、昨日のバックステ ージでも、柳本さんの周りは笑顔が絶えない雰囲気でした。
コンテストは新たな自分に出会う手段。
そう思えば苦しくならないし、自分の成長に出会えて最高にしかならないんです。
私も今回の結果を2月の成長につなげたいです!
(やなぎもと・えみ)
1992年4月20日、東京都出身。
「ミスFLASH2009」4代目グランプリのほかアイドルグループやレースクイーンとして活躍。16年にトレーニングを開始後、ベストボディ・ジャパン2017グランプリ(ガールズクラス)、Musclemania World Fitness America Weekend 2018で2位(Ms.BIKINI Open/Short)、マッスルコンテスト2019女子ビキニノービスB優勝。2018年5月より「LOWMEL」でパーソナルトレーナーを務める。
取材・文_藤村幸代
撮影_AP,inc.
[Woman's SHAPE vol.20掲載]
-コンテスト
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