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安井友梨が昨年の骨折後に感じた「世界チャンピオンと自分の差」【特別手記#3】

安井友梨選手(アーノルドクラシックヨーロッパ2023)昨年、左足基節骨粉砕骨折という大怪我に見舞われながらも奇跡の復活を果たし、世界大会で快挙となる優勝を成し遂げた安井友梨選手。大怪我を経て、安井選手は“支えてくれている方々”への気持ちが溢れ、競技への向き合い方も変化した。大きな試練を与えられた安井選手が感じた想い、そして分かった「世界チャンピオンと自分の差」とは?安井選手自らが綴る、奇跡のドラマの舞台裏。(発売中の雑誌『月刊ボディビルディング2024年3月号』から一部抜粋)

【大会写真】3冠を達成した国際大会で魅せたバックポーズ

失って、手に入れたものとは?

この骨折は、失ったものばかりではなく、まだまだ足りなかった大きなものを私に気付かせてくれました。試練の中からまた色々なことを学んで、人として成長する機会を神さまから与えられたのだと。神様が私にこのタイミングでなにかを伝えようとしてくださっているんだとずっと思っておりました。苦しみを乗り越えるたびに、“強さと感謝”を感じる日々でした。

それは、支えてくださる皆さまへの「感謝」と、競技を“やらせていただける”「喜び」です。 まさに「怪我の功名」でした。もういつからだろうか……。

5年前くらいからトレーニングが好きではなくなり、ビキニが好きではなくなり、ただただ使命感と義務感だけで競技をなんとかして普及しなければと必死でした。そこには自分の気持ちはなく、自分がなんのために、自分がなにものなのかもよくわからなくなり、それを考える余裕も時間もなく、ただただ必死に毎日をがむしゃらに、焦りと漠然とした不安をかかえながら過ごす日々でした 。

怪我をして、トレーニングも出来ず、大会にも出られないとなり、 初めて気づいたことばかりでした。なんて自分は幸せなことをさせてもらえていたんだろうと。こんなにも温かく差し伸べてくださる手が、周りにあったのかと。もう消えかけていた炎が、再びしっかりと燃えはじめました。

試練の向こうにしか見られない光景が

今までの7回出場した世界選手権において、私は、“いつか優勝できたら”、もしくは、一昨年からは“優勝したい”と思うこと止まりで、ステージに上がっておりました。残念ながら、そんな私では、結果も世界2位止まりでした。そのとき世界チャンピオンは「私こそがチャンピオンだ」と思いながらステージに上がっていたはずです。ステージに上がる前から、すでに優勝者は決まっていました。

今年の私は、違いました。「何一つ私一人でできることなどなく、当たり前なことなど何もない。ビキニ競技をやらされているわけでもなく、ただ好きなだけでやっているだけでもなく、皆さまのお支えの下で“やらせていただいているんだ”」という感謝の気持ちにもう一度気付かせてくれました。

世界一になることは、決して簡単ではないと理解しています。あえて一言で、その難しさを表すならば、「強いだけでは、世界チャンピオンにはなれない」ということです。

2年連続で世界選手権準優勝となり、このことを身に染みて理解しておりました。私が思う、世界チャンピオンと私の差は、「“感謝”と“自信”〟の差」

ここまで、“ビキニ選手”安井友梨を育てて下さった日本ボディビル・フィットネス連盟、日本全国の業界関係者の皆さま、すばらしい選手の皆さま、そして、応援してくださる皆さまがいたからこそ、9年間にも及ぶビキニ選手を続けてくることができました。

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文:安井友梨 大会写真:Igor & Jakub

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