昨年マッスルゲートのビキニフィットネスで活躍した中村摩美(なかむら・まみ/33)さんは、1年ほど前から週1〜2回、エクサイズトレーニングスタジアム(愛知県)で柏木三樹トレーナーのパーソナルを受けてきた。
同ジムには日本を代表するような選手が多く通う。ドレスとワンピーススイムスーツを着用するフィットモデルカテゴリーで活躍する川口知子選手(JBBFオールジャパンフィットモデルチャンピオンシップス 2024・158cm以下級2位)もその一人だ。
「川口選手が2023年に着用して活躍されたスイムスーツを『ぜひ、摩美ちゃんに着てもらいたい』と、譲っていただきました。オールジャパンで知子さんの思い入れのあるスイムスーツを着てIウォークを披露したい、と思いました」
中村さんは今シーズン、フィットモデルへ挑戦することを決めた。
「自分から『エクサイズの所属選手にさせてください。絶対に頑張ります』と伝え、柏木先生は快く面倒を見てくれていたのですが、初戦の愛知県フィットネス選手権(愛知県ボディビル・フィットネス連盟主催)までなかなか本腰が入りませんでした。『やっぱりエントリーをやめます。間に合わないし、こんな身体で大会に出ては先生に恥をかかすだけになってしまう』と伝えたところ、柏木先生に怒られてしまいました」
「自分で決めたことを諦めたり、手を抜くようなことは絶対にしないで欲しい。努力の先に結果は伴う。そこに至るまでの過程を自分で振り返ったとき、自分自身で認めてあげ、褒めてあげることができるよう、強くなれ。『今日の自分は、昨日の自分に勝てたか』」
柏木トレーナーのこの言葉によって、中村さんの身体と気持ちは大きく変わったという。
「まず生活スタイルから見直していき、有酸素運動やポージング練習も、できない理由を作らず、むしろ効率的にスケジュールを組むように努力をしました。すると減量も一気に進み、先生がおっしゃった通り、徐々に自信がつくように。以前の私だと、大会当日は緊張でガチガチだったのに、今年は毎大会、『やっと自分が努力してきた姿を見てもらえる。とっても楽しみだなぁ』と思えるようになったのです。その楽しんでいる姿が審査員の方々にも伝わって、結果に表れたシーズンだった、と思っています。有酸素運動はしんどかったはずなのに、今では毎朝のトレッキングが趣味となりました」
トレーニングと食事に関しても、大きく変化した。
「以前は独自のトレーニングと食事方法で過ごしていました。身体は女性らしいプロポーションとは程遠く、ダイエット=炭水化物を抜くモノという違った認識もあった程です。今現在の増量は、来シーズンにむけての※マクロ指示もあり順調に進んでおります。オフ=何でも食べて良い休養期間、というよりも、後悔や悔いの残らないように、『昨日の自分に勝てたなぁ。偉いぞ』のマインドで過ごし、シーズンを迎える。オフ期の過ごし方が実はとっても大事だと、選手としてこの1年を柏木先生の元で教わり、そして自身が成長できた部分です」
※マクロ管理法とも呼ぶ
炭水化物や脂質など必要な栄養素を制限する、無理なダイエット方法とは異なり、適切な量を理解し管理することで目指す身体を作る。
P.F.Cバランスを長期的なスパンで管理。PFCバランスを意識した内容の食事を摂取し、オフシーズンはバルクアップ、短期間の減量期は身体を綺麗に絞っていく。必要な栄養をバランスよく摂取するため、中村さんは仕事や日々の活動パフォーマンスが上がるのはもちろん、肌艶がよくなったことが衝撃だったという。
今シーズンの中村さんの成績は、愛知県フィットネス選手権エントリーモデル-158㎝優勝、三重県オープンフィットモデル大会オーバーオール優勝、オールジャパンフィットモデルチャンピオンシップス158cm以下級7位。適切な指導と、努力が結果に結びついた。
この結果には、もちろん家族のサポートも欠かせないものだった。
「主人とは長く、高校一年生のころからずっと一緒にいて、私以上に私のことを理解してくれています。自分も選手でありながら、自分を犠牲にしてまで私のためだけに今シーズンを支えてくれました。オールジャパン後、『来シーズンは何があろうと俺も今以上に全力でサポートしていくから』そんなことも言ってくれました。主人はまだシーズン中なので、今度はわたしが一番の味方でありたいし、それこそ全力でサポートしたいです。本当に感謝しかないです」
「来シーズンもフィットモデルをメインに考えている」という中村さんに今後、目標とする姿を聞いた。
「選手としてだけでなく、妻としても、母親としても、そして人として指標となれる、そんな女性になりたいと思っております」
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピンク講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
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取材:あまのともこ 撮影:中島康介、上村倫代