筋トレ フィットネス

ウェルネス世界2位の大谷美咲に聞く 1年足らずで厚みと高さのある圧巻のヒップを作り上げた驚きのメソッドとは? 

ボディフィットネス競技ではIFBB世界フィットネス選手権で日本人女子初の金メダルを獲得するなど、世界の頂点に君臨した大谷美咲(おおたに・みさき/37)さん。2024年シーズンには、より下半身の筋量やボリュームが重視される新競技「ウェルネス」に挑戦し、世界2位に輝いた。競技転向1年足らずで高さ、厚み共に圧巻のお尻を作り上げた大谷さんに、その秘密をうかがった。
[初出:Woman'sSHAPE vol.29]

【写真】大谷美咲さんの立体的なお尻&極太脚

下半身のボリュームアップ作戦
一番心配だったのはメンタル

━━ボディフィットネス世界チャンピオンの大谷さんですが、昨シーズンは新カテゴリー「ウェルネス」に挑戦しました。転向のきっかけは?

大谷 あれだけのボトムの大きさと立体的な丸みを筋肉で付けるような体型は、日本人ではなかなかいないですよね。一昨年のスペインでの世界選手権で、海外のウェルネスの選手を見たときにすごく憧れましたし、「自分も頑張ったら、あんなふうになれるのかな、下半身ってどこまで大きくなるんだろう」という好奇心もあって、このカテゴリーに挑戦してみようと思いました。

━━殿部や大腿部のボリュームを出していくにあたって、特にどんなところにポイントを置きましたか。

大谷 一番考えたのは、実はメンタル面。下半身のトレーニングは、体力はもちろん精神的にもかなり追い込まれるので、心も身体もすり減ってしまわないかという心配があったんですね。だから極力マイナス方向、消耗する方向に行かないようにというのが念頭にありました。

━━そのために、具体的にはどのようなトレーニング計画を?

大谷 下半身を前と後ろで分けていますが、今までと同じようなボリュームではなく、1セットの中では力を出し切りますが、疲れ切って回復する体力が残らないくらいまでやるのではなく、中3日くらいで次の下半身トレーニングができるような量にすることを意識しました。

━━下半身のボリュームアップには、100%出し切ることが一番の近道というイメージがありました。

大谷 究極まで追い込むことも当然、選択肢のひとつだと思います。ただ、私の場合、精神的に燃え尽きるのが怖かったのと、回復を重視したかったので、今回は破壊と再生をコンスタントに、できるだけ回数を多くするやり方を選びました。

━━コンスタントにメニューを回すために、これまでよりセット数や重量を減らしていった?

大谷 もともとセット数をあまり数えないので、数字というより、あくまで自分の感覚重視ですね。その日のトレーニングを通じて狙った部位をきちんと使いながら、しっかり出し切るわけですが、身体がへとへとになるまでは追い込まず、回復する余力を残しておく。その目安として、中3日で常に下半身に刺激を入れられるくらいの強度を意識しました。

厚みと高さのあるお尻づくり
効果抜群だったこの種目

━━今号の特集は「お尻」ですが、大谷さんにとって理想のお尻とは?

大谷 やはり、できるだけ高い位置から盛り上がっていることでしょうか。日本人の場合、横方向にはけっこうボリュームを付けられますが、私としては海外選手のような奥行きや厚みを目指したかったです。

━━大会では「Vカット」と言われる大谷さんのお尻下部、太腿との境目の盛り上がりも話題となりました。

大谷 流れるようなラインというより、明らかにウエストから高さが出せて、明確なセパレートやボリュームがあるようなお尻が理想ですね。

━━お尻の高さを出すために、一番効果的だった種目は?

大谷 片手にダンベルを持って行うブルガリアンスクワットは私としてはとても感覚がよくて、一番中殿筋が狙えたかなと思います。重量はそこまで追わず、両手でやるときの半分か半分以下。たとえば両手で40㎏持っていたら、片手では20㎏とか18㎏にするなど、きちんと動きをコントロールできる重さを心がけました。

━━試行錯誤の結果、片手のブルガリアンに落ち着いた感じですか。

大谷 海外の選手がやっている動画をSNSで見つけたのがきっかけですね。試してみたら中殿筋への細かい意識もできたので、中殿筋をポイントで強化する種目としてやっていました。今は全体的にボリュームをつけたいので、両手でダンベルを持つワンレッグスティフデッド、バーベルブルガリアンなどをやっています。成長の過程でまた中殿筋など部分的に狙いたいところが出てきたら、その都度種目を入れ替えていこうと思っています。

細部まで漏れなく大きくなる?
私がフリーウエイトを選ぶ理由

━━大谷さんは以前からフリーウエイトをメインにされていますね。

大谷 トレーニングを始めたときに通っていたのがフリーウエイト中心のジムということもありますが、フリーウエイトの場合、スタートポジションに入るところから身体全体でフォームを形作りますよね。自分が全然意識してない内側の筋肉まで全部使われていると思うので、そのプロセスの部分はすごく大事なんじゃないかなと思います。

━━しっかりスタートポジションを作ることで、インナーまでアプローチできると。

大谷 その作業がサイズ感にも関わってくるのではないかと。小さい筋肉まで漏れなく刺激していけば、全体としてボリュームアップできますからね。私自身、日頃からポジションを意識してフリーウエイトを行うことで、自分が思っているよりも成長しているところが多いんじゃないかなという気はしています。ただ単にフリーウエイトが好きなだけかもしれませんが(笑)。ただ、基本はフリーですが、たとえばレッグエクステンションなど、フリーウエイトで動きを出しづらい種目に関しては、必ずマシンを使っています。

━━スタートポジションのほかにも、高さや丸みのあるお尻づくりのコツがあれば、ぜひ教えて下さい。

大谷 自分が効かせたい筋肉の動くイメージを、頭の中で明確にイメージしながらやっていくことはとても大切だと思います。そのためにも、筋肉の構造をある程度知っておいたほうがいいと思いますし、それにやっぱり重さにこだわりすぎなくてもいいのかなと。ブルガリアンは特に重さを持ちたいと思ってしまいがちですが、私は適切な可動域と適切なスピード感のほうを重視しています。

━━たしかに、重さを狙いすぎて耐えるのが精一杯になりがちです。

大谷 どの種目にも共通していますが、重さに耐えることに精一杯で、筋肉をガチガチに硬くしながら下げる動作より、ゴムのようにしなやかに使えるようなイメージを持って動作を行っています。そうすれば、体力の消耗が目的ではなく、筋肉がちゃんと使えているかにも意識が自然と向くのではないでしょうか。

大谷さんの進化の歴史

【写真右】大会デビューの翌年。2019年オールジャパン・ビキニフィットネス(撮影:中島康介)
【写真中央】2021年グランドチャンピオンシップス・ボディフィットネス(撮影:中島康介)
【写真左】2024年IFBB世界フィットネス選手権・ウェルネス(撮影:中原義史)

大谷さんが出場した各カテゴリーの審査ポイント

【ビキニフィットネス】大谷さん出場2018年~
●プロポーションの良さだけでなく、トレーニングにより作り上げられた曲線的な美しさ
●特に、細くくびれたウエスト、丸みのあるヒップ、しっかり作られた脚
●腕の細さ、ナチュラルなVシェイプ、細く薄いウエストなど

【ボディフィットネス】大谷さん出場2021年~
●女子フィジークほどの筋肉量や密度は必要ないが、丸みのある立体感を感じる体型
●無駄な脂肪を落とした仕上がりで、各筋肉の鮮明なセパレーションが求められる
●上下左右のバランス

【ウェルネス】大谷さん出場2024年~
●バランスがとれ左右対称に発達し完成された、アスリートのようなフィジークであること
●上半身に比べ臀部、大腿部がやや大きいこと
●各部位はメリハリのある外観であること
●筋肉のセパレーションやストリエーションがないこと

大谷美咲さん流
圧巻ヒップをつくるトレーニングのポイント

フリーウエイトでのブルガリアンスクワットやルーマニアンデッドリフトなど基本の種目をメインに、世界に通じる圧巻ヒップを作り上げた大谷さんが、各種目の効かせるコツを公開!

【全種目に共通のポイント】

●スタートポジション重視!
フォームを丁寧に作り対象筋に負荷をしっかり乗せる。

●重さを負い過ぎない!
動作をコントロールできる程度の重量で行う。

●足裏でしっかり床を踏む!
足裏に床が吸い付くイメージで、足裏からの力を真上に伝えていく。

●筋肉の構造を把握!
対象筋の起始と停止などをある程度把握すると、ストレッチがイメージしやすい。

●自分の感覚を重視!
一般的なハウトゥにとらわれず、対象筋に適切に負荷がかかっているか、自身の感覚を最重要視して。

●足首を安定させる!
足首をしっかり安定させ、そこに重心を乗せて動作を行う。

TARGET 中殿筋
片手重量のブルガリアンスクワット


 

TARGET お尻全体・お尻下部
両手重量のブルガリアンスクワット


 

TARGET お尻全体
片脚でのルーマニアンデッドリフト

 

TARGET お尻全体
両脚でのルーマニアンデッドリフト

 

TARGET お尻全体
ワイドデッドリフト①

 

TARGET 内転筋
ワイドデッドリフト②

おおたに・みさき
1987年9月7日生まれ。新潟県出身。2018年JBBFビキニフィットネスでコンテストデビュー。2021年にボディフィットネスへ転向し、無敗のままオールジャパン、グランドチャンピオンシップスを制す。2022年、2023年も国内大会を全勝で飾り、2023年IFBB世界ボディビル&フィットネス選手権ボディフィットネス158㎝以下級優勝、マスターズ35~39歳級優勝、マスターズオーバーオール優勝の3冠を成し遂げた。2024年にウェルネスに転向し、スポルテックカップ、オールジャパンと全勝。アーノルドクラシックヨーロッパでも158㎝以下級&オーバーオールで優勝。IFBB世界フィットネス選手権では158㎝以下級&マスターズ35~39歳級で2位を獲得。

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取材・文:藤村幸代 撮影:中原義史 Web構成:中村聡美

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