無理なダイエットや食事制限、過度なトレーニングなど、我慢を続けるには、かなりのモチベーションが必要だ。仕事や家事、人間関係においても同じ。しかし「本当の自分」を知れば、それらすべての悩みを解消できる。
本当の自分の体質、心の傾向を知ることで、無理なく身体を整えていくのが「アーユルヴェーダ(インドの古典医学)」だ。ダイエットやトレーニングも見た目が変わるだけでなく、心の変化も実感できる。アーユルヴェーダの体質診断表(記事後半)をチェックしよう。
あなたの「心地良い」はどんなとき?
仕事や人間関係などによってイライラやモヤモヤしたとき、それは身体の内側にトラブルが起きているサイン。東洋医学では、健康は「成る」ものではなく、すでにあるものだと考える。すでに持っているものを「知る」。世間の型にはめた理想を求めるのではなく、今の身体の状態を知り、自分に合っているものを選んでいけば、自然と身体は心地良い状態に向かう。自分の中の心地良さはどんな状態だろう?
アーユルヴェーダ|本当の自分を知る
アーユルヴェーダとは?
アーユルヴェーダは約5000年前にインドで生まれた伝統医学。宇宙を構成する5つの元素(地、水、火、風、空)が人間の身体や心にも影響を与え、これらのバランスを整えることで健康を維持できると考える。
5つの元素
空 空間、無限の可能性
風 動きを生み出す力
火 変換の力
水 流動性持つ変化の力
土 土台を築く働きを持つ
ドーシャ(体質)
5つの元素の組み合わせによって、ヴァータ、ピッタ、カパと3つのタイプに分けたもので、どれが優勢かによって体質が決まる。肉体だけでなく、思考や性格の傾向もドーシャによって左右される。
ヴァータ=風・空
ピッタ=火・水
カパ=土・水
※ドーシャ:増えやすいもの(サンスクリット語)
インドの古典医学であるアーユルヴェーダは日本人の身体に合わないこと部分もある。そのため、治療に使う食材やハーブは日本のものを使用する必要がある。
体質診断表|生まれつきの体質
古代伝統医療を現代の日本人に合わせたやり方で、日本人に広めているのが新倉亜希さん(アーユルヴェーダビューティーカレッジ学長)。新倉さんは多くのプロスポーツ選手にもコンサルティングを行い、『アーユルヴェーダが変えた!トレーニングの常識』も執筆。今回は新倉さんにもご協力いただき、体質診断表を作成した。
生まれつきの体質(プラクリティ)は、「自分らしさ」の指針や、遺伝的にかかりやすい病気を知るためにも役に立つ。子どものころの自分を思い出し、当てはまる項目にチェックしていこう。
A | B | C | |
体格 | 痩せ型、華奢 | 中肉中背 | ぽっちゃり、骨太 |
体重 | 変化しやすい | 暴飲暴食時のみ太りやすい | 太りやすく痩せにくい |
目 | 小さい | 鋭い目つき | 丸くて大きい |
歯 | 歯並びが不均一 | 歯茎に炎症が起きやすい | 大きい、丈夫、整っている |
指 | 細長い | 中間 | 短い、硬い |
爪 | でこぼこ、割れやすい | 柔らかい、ピンク | 強い、大きい |
髪の毛 | パサパサ、癖毛、切れ毛 | 抜け毛、柔らかくて細い、白髪 | 太い、多い、黒髪、オイリー |
肌質 | 乾燥肌、薄い、冷たい | 汗っかき、ニキビができやすい | しっとり、柔らかい |
肌の色 | 色黒 | 赤、黄、そばかす、ホクロ | 色白 |
体温 | 手足が冷たい | 暖かい | 暑さを嫌う |
排泄 | 便秘、不規則 | 軟便ぎみ、便秘は滅多にしない | 大きく太い、1日に1回 |
食事 | 不規則・消化が不安定 | 食欲旺盛・消化が早い | 食べ方も消化力もゆっくり |
睡眠 | 寝つきが悪い、浅い、不規則 | 短い | 深い、寝すぎる |
運動 | 活発、すぐ疲れる | 激しい | 運動を避ける、鈍い |
歩調 | いつも早い、軽快、不規則 | キビキビ | ゆっくり、のんびり |
喋り方 | おしゃべり、早口 | はっきり、簡潔、口調が強い | 静か、ゆっくり |
記憶力 | 覚えが早い、すぐ忘れる | 優れている | 覚えが遅い、忘れない |
気候 | 温暖を好む、冷えに弱い | 秋から冬を好む、暑さを嫌う | 湿気を嫌う |
習慣 | 刺激を求める、習慣を嫌う | 計画的 | 習慣性を好む |
決断 | 気分屋、優柔不断 | 素早い | 時間をかけて決める |
思考 | 想像力豊か、柔軟 | 効率的、独創的 | 着実、丁寧、柔軟性がない |
気質 | 飽きっぽい | 嫉妬深い | 執着する |
性格 | 用心深い、せっかち | 情熱的、知的、勇敢 | 穏やか、大雑把 |
不調の表れ方 | 情緒不安定、喜怒哀楽が激しい | 怒りっぽい、消化器系が弱い | めんどくさがり、頑固 |
人への接し方 | 話しかける、影響されやすい | 導く(リーダー)、厳しい、欠点が目につく | 献身的、穏やか、寛大 |
診断結果
A▶︎ヴァータ
B▶︎ピッタ
C▶︎カパ
・A、B、Cのうち、多いものがあなたの本来の体質
・同数の場合、両方の特徴を持つ(複合体質)
A ヴァータ(風・空)タイプの気質
風のように活発で想像力豊かなヴァータタイプは、変化に柔軟に対応できるけど冷えと乾燥に弱く、調子を崩すと心配症や寝つきの悪くなりやすい。三半規管も弱く、ストレスがかかるとめまいや耳鳴りも起こりやすい。変化を楽しみつつも、基本的には安定感を意識すると良い。食事をや睡眠、運動する時間などは、コロコロ変えずリズムを整えると良い。
B ピッタ(火と水)タイプの気質
火のようにエネルギッシュなピッタタイプはやる気に溢れ、目標に向かって突き進む。負けず嫌いで競争心に燃えるが、常に「競争モード」だと、下痢や皮膚疾患、怒りなど、炎症系の症状が出やすい。胃腸が弱点。休みを後回しにせずに、しっかり休養することが大事。他人への「言葉」にも気をつけて。
C カパ(水と土)タイプの気質
水と土は結合のエネルギーを持つカパタイプは「溜め込みやすい」のが特徴。筋肉もつきやすいけれど脂肪もつきやすく、太りやすく痩せにくい。寝過ぎたり、頭痛や咳、鼻水、浮腫などの症状が出やすい。力や持久力があるのでしっかり運動することで、カパタイプは調子が整う。
上記の生まれつき変わらない体質(プラクリティ)ともう一つ、現在の生活習慣や環境によってバランスが乱れた状態(プラクリティじゃない状態)を「ヴィクリティ」と呼ぶ。現在、不調がある場合はヴィクリティ診断も行い身体を整えよう。ヴィクリティを診断するには、問診のほかに、脈診や舌診など、専門家に見てもらうことが確実だ。
監修: 新倉亜希
アーユルヴェーダビューティーカレッジ学長。メニエール病がアーユルヴェーダ医師による治療で全快したことをきっかけに、インドへ渡る。チャクラパニ病院で数年間の修行を経て、アーユルヴェーダ ヘルスコンサルタントのライセンスを取得。沖縄で自然栽培農園を開始し、日本人の体質にあった日本産のアーユルヴェーダプロダクツを開発、リトリート施設「アーユルウェルネスリゾート沖縄」にてアスリート専門プログラムも実施中。サッカー日本代表選手の体質も改善している。
取材:松本実奈美
執筆:松本実奈美(まつもと・みなみ)
元Yoga&Fitness編集部。退職後、ヨガ修行と一人旅を兼ねて約2カ月間インド生活を送る。WORLD PEACE YOGA SCHOOLの『200 Hour Yoga Teacher Training』講座修了