「白米9合食べた」鈴木雅選手に見る、炭水化物の重要性
ボディビルダーの鈴木雅選手は過去のインタビューでこう語っています。
「学生時代は油物や肉よりも“お米”をたくさん食べました。1日9合ほどで、間食でもおに
ぎりや菓子パンを食べていました。」
【増量筋肉飯】身体を大きくするなら肉よりご飯!ポテチはふりかけ!昔は白米を1日9合食べていた=鈴木雅 | FITNESS LOVE(フィットネスラブ)
トップ選手たちが共通して強調するのは、“質の良い炭水化物”の重要性。では、その「質の良い炭水化物」とは何でしょうか?

炭水化物とは?すぐ使われるけど貯めにくいエネルギー
炭水化物は「糖質」と「食物繊維」で構成され、3大栄養素の中で最も即効性のあるエネ
ルギー源です。
しかし、体内にため込める量は限られています。
・肝グリコーゲン:約80~100g
・筋グリコーゲン:約200~300g
参考:【炭水化物の摂り方・選び方パーフェクト事典】ナツメ社、2022年
つまり、炭水化物は「すぐ使えるが、貯めにくい」栄養素。筋トレ中や競技中にエネルギー切れを起こさないためには、こまめな補給が欠かせません。
糖質の種類と吸収速度の違い
糖質は構成分子の数によって以下の3種類に分けられます。
分類 | 例 | 吸収速度 |
| 単糖類 | ブドウ糖・果糖 | 早い |
| 二糖類 | 砂糖・乳糖・麦芽糖 | やや早い |
| 多糖類 | デンプン | 緩やか |
多糖類は一般的には吸収が緩やかですが、白米やうどんなどの“精製デンプン”は例外で、多糖類の中では吸収が速い食品です。
炭水化物が筋肉に必要な理由
炭水化物を取ると、血糖値を下げるために「インスリン」が分泌されます。インスリンはたんぱく質の吸収を高め、筋合成を促します。また、炭水化物が不足した状態でトレーニングを行うと、筋肉を分解して糖を作り出す「糖新生」が起こり、筋肉量の減少につながります。
つまり炭水化物は「筋肉を作る・守る」両方に関わる、極めて重要な栄養素なのです。

白米がボディビルダーから支持される理由
①脂質が少なく、クリーンな炭水化物
白米1合(330g)に含まれる脂質はわずか約1g。
一方、同じ炭水化物量をパンで取ろうとすると、食パン6枚切り4.5枚(脂質約11g)も必要
になります。パンにはマーガリン・ショートニングなどのトランス脂肪酸が含まれることもあり、疲労回復を妨げる可能性があります。
参考:「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
②アミノ酸スコアが高い
白米のアミノ酸スコアは93、一方で食パンは51。白米は必須アミノ酸のバランスが良く、たんぱく質の利用効率が高い主食です。また白米1合で約8.3gのたんぱく質が含まれ、これは卵1個分(約7g)に匹敵します。
参考:264-293_新カラーチャートアミノ酸成分表.indd
③精製デンプンのため吸収が速く、エネルギー補給に適する
白米のGI値は 約86(高GI食品)。多糖類は一般に吸収が緩やかですが、白米は精製されているため例外的に吸収が速く、運動前後に適しています。白米のGI値は約86。吸収が速く、トレーニング前後のエネルギー補給にも適しています。
参考:【炭水化物の摂り方・選び方パーフェクト事典】ナツメ社、2022年
冷やすとGI値が下がる「レジスタントスターチ効果」
白米を冷ますとデンプンの一部が「レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)」 に変化し、
・血糖値の上昇が緩やかに
・腹持ちが良い
・食物繊維のように働く
というメリットがあります。
【使い分けの例】
・増量期・運動前後 →温かい白米(吸収が速い)
・減量期、ダイエット中→冷めた白米(腹持ちUP・血糖コントロール)
白米の摂取ポイント
白米の適量は、体格やトレーニング量、目的によって変わります。
以下のような“シーン別の使い方”を意識すると良いでしょう。
・トレーニング前後:おにぎりや白米を中心に、エネルギー補給を意識する
・増量期:主食としての量をやや増やし、間食でもこまめに補う
・減量期:夜や活動量の少ない時間帯は控えめに
まとめ
・炭水化物は筋合成と筋分解予防に欠かせない
・白米は「低脂質」「高アミノ酸スコア」「エネルギー吸収効率」が高い
・パンよりも“質の良い炭水化物”として、白米がボディビルダーに支持されるのは理にか
なっている
■参考文献
・【増量筋肉飯】身体を大きくするなら肉よりご飯!ポテチはふりかけ!昔は白米を1日9合食べていた=鈴木雅 | FITNESS LOVE(フィットネスラブ)
・竹内 恵里ほか【炭水化物の摂り方・選び方パーフェクト事典】ナツメ社、2022年
・文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
■著者プロフィール
申泰鎮(シン・テジン)
管理栄養士・健康運動指導士。高校時代のボクシング経験をきっかけにスポーツ栄養士を志す。現在はボクシングジムや大学ラグビー部で、増量・減量・コンディショニングに対応した栄養サポートを実施。競技者から一般層までを対象に、食事・サプリメント・身体づくりに関する実践的な支援を行う。執筆や講演活動も多数。










