1新型コロナウイルスの猛威は収まることを知らず、いまだ感染拡大が続いている。コロナ禍での免疫維持について、桑原弘樹氏に伺う。コロナ禍を乗り切るために、日常でできる基本的なことから始めよう。ワクチンのような「獲得免疫」ではなく、自分の意識を高めれば獲得することができる「自然免疫」を上げるには睡眠と食事バランスをしっかり取ることが大切です。これらは自然免疫を上げるための「ATP」が作られるからです。前回はATPを上げる食事について伺いました。今回は「サプリメント」について。
<本記事の内容>
筋肉を作るために必要な「ATP」を作りだすには?
1.ヘム徹
2.還元型コエンザイム10
3.LPS
免疫を落とさないようにコンディショニングを意識しよう
免疫を落さない「ATP」を作るのに役立つサプリメント
身体は、エネルギー通貨ともいわれるATPで動いています。酵素や筋肉、成長ホルモン、免疫細胞などが体内で合成される場合には、必ずATPが必要です。しかし、ATPは体内に貯めておけません。身体は常に作り続ける必要があり、作る能力が落ちると、免疫も落ちてしまいます。そこで、ATPを作るのに役立つサプリメントや食材をいくつか紹介します。
1.ヘム鉄
ATPを作る最終工程を「電子伝達系」と呼びますが、実はヘム鉄はその大事な材料になっています。また電子伝達系は酸素を必要とするので、酸素を運ぶヘモグロビン、つまりそこでもヘム鉄が不可欠なのです。ヘム鉄が足りないと、最後の最後でATP産生のスムーズさが損なわれます。
■前回の記事
2.還元型コエンザイム-10(CoQ10)
美容やダイエットの印象が強いかもしれませんが、こちらも電子伝達系での大事な役割があります。電子は必ず一旦CoQ10に渡さないと次の工程に進めないのです。CoQ10はもともと体内で作られるものですが、20歳くらいから早々に作る能力が落ちていくので、場合によってはサプリメントを活用するとよいでしょう。
近年話題の「5 -ALA」も、電子伝達系の素材です。なぜ、いま注目されているかというと、コロナに効くという発表があったためです。ウイルスには、スパイクというアンテナがたくさんあります。そのスパイクをふさがれると、受容体が分からなくなって細胞に入っていけなくなるのですが、そこに5 -ALAが寄与する可能性があるのです。 また、5 -ALAも、ATPを作る最終工程の材料であり、コロナのスパイクタンパクとは関係なしに、免疫維持にはいいもの。サプリメントの値段も数千円と、比較的高価ではないので、試す価値はあるかもしれません。
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3.LPS
最後は、免疫ビタミンと呼ばれているLPS(リポポリサッカライドの略)。脂質と多糖類がくっついたものです。身近な食べ物でいうと、玄米やソルガムキビに含まれています。なぜいいかというと、コロナを含めさまざまな菌を食べてくれるマクロファージという免疫細胞(大食細胞)が、LPSの受容体をたくさん持っていることが分かってきたからです。 LPSを摂ると、マクロファージが活性化し、コロナに限らずいろいろな菌をどんどん食べてくれます。玄米やソルガムキビといったスーパーグレインには、LPSが含まれているので、コロナによる危機感を利用して、自然免疫を維持するために取り入れてみてはどうでしょうか。
今回紹介した、自然免疫の土台を作った上で、グルタミンや乳酸菌などを応用として加えてみてください。シェイプアップは、コンテストレベルになると、ある意味、栄養や健康のバランスを崩してしまい、免疫が落ちるので、こうした知識を理解した上で行うこと。いまだからこそ、コンディショニングの優先順位を上げて、日々のトレーニングに取り組んでくださいね。
文:飯塚さき
桑原弘樹(Hiroki Kuwabara)
1961 年4月6日生まれ 愛知県出身。立教大学卒業後、江崎グリコに入社。スポーツサプリメント事業を立ち上げ、スポーツフーズ営業部長などを歴任し、現在はアドバイザー。桑原塾を主宰し、100人以上のトップアスリートのコンディショニング指導も行っている。