特集 news pickup アスリート

衝撃NEWS!!ボディビル界の英雄、相澤隼人が“俳優の道へ”「不安もあるけど、だから何?」

「俳優業に挑戦します」
12月22日、『ゴールドジムジャパンカップ2024』の会場で衝撃の発表をした相澤隼人選手。場内はどよめき、観客から「え?」という声が多数聞こえる。ボディビル業界のスターは、自身の新たな可能性を切り拓いていた。

取材・文:小笠拡子 撮影:中島康介

ボディビルとの関係性
俳優活動の背景を紐解く

ボディビルは人生を生きる上での生き様なので、完全に縁を切ることは考えていません。一旦、今後のJBBFの選手登録はしない方向で進みますが、審査員としては携わらせてもらおうと思っています。現時点で、東京で開催される大会の審査員のお話はいただいていますし、ボディビルから完全に離れるわけではありません。10あったボディビルから9は離れるけど、1は残っているみたいな感覚です。俳優業へシフトしたいと思った大きな理由は2つあって、腰の怪我と3月に娘が産まれたことです。

7年ほど前、高校生ぐらいのときに腰を怪我してしまい、そこからヘルニアになっては症状が和らぎ、再発しては和らぎ……を繰り返していました。CTやMRIなどの検査をすると、腰部が結構なダメージを受けていたことが分かり、自分の中でも「いい潮時なのかな」と思っていたんです。自分自身、逆算しながら人生設計を立てていくのが好きで、ずっとそうやって生きてきました。自分の人生を振り返ったときに筋トレしか残っていないというのは、何か違う。ずっと筋トレとトレーナーだけ、という生き方をしていたくないですし、死ぬときに自分自身で「いい人生だったな」って思いたいんです。そう思うためには、自分がやりたいと思ったことを精一杯やりきる必要がある。

ボディビルでは日本一になることが大きな目標でしたし、3年連続で日本チャンピオンという形でボディビルに携わらせていただいたことで、達成感とやりきった感覚はありました。加えて、3月に娘が産まれたことで、家族や周りの人たちに、自分が挑戦し続ける姿を見せて何か感じてもらいたいなと強く思うようになったのも大切な理由の一つ。

これは自己満足の世界ですが、誰もやったことがないことに挑戦するのがすごく好きな性分というのもあり、娘が誕生した3月から自分なりに俳優活動への準備を始めていたんです。

もともと俳優への憧れは、ボディビルを知るずっと前、小学生のころからありました。ジャッキー・チェーンやブルース・リーを見て、すごくかっこいい、こんな強い男になりたいなと。また、ネットフリックスで配信されているドキュメンタリー『アーノルド』に、ものすごく影響を受けました。あれくらい波乱万丈な人生を送りたい、という方が適切かもしれません。自分の根底に「人生においていろんな経験をしたい」という思いがあり、その経験の一つとして、ボディビルや俳優業がある。これまではボディビルが中心軸でしたが、今自分がやりたいと思っているのが俳優業で、その道を歩み始めている、ということです。

これまではトレーナー業を中心に仕事をしていて、半年先の予定も決まっていました。ですが、今は俳優業のスケジュールを優先させるためにかなり抑えています。トレーナーとしての活動はまだ続けていきますが、新規の予約はいったん全部止めていて。ゆくゆくは俳優の道で食べていけるようになれればいいな、と思っています。

ある意味でこの行動は「今まで築いてきたものを捨てる」ことにもなっていて、もちろん葛藤はありました。ただ、不安と不満どっちを取るかというときに、自分は「不安を取ってでも、やりたいことをやる」という選択をした。その方が、自分の生き方において腑に落ちるからです。これは、どちらが正解という話ではなく、あくまで自分の選択基準です。

自分は知識や経験を資産だと思っていて、人生の中でいろいろな経験をして価値観を広げていきたいから、不安だけど俳優業に挑戦することを決めました。妻や仲間が影で支えてくれていますし、どうなっても大丈夫というか。不安だけど、「だから何?」っていうぐらいの気持ちでしか捉えてないですね。

『ゴールドジムジャパンカップ2024』のステージで衝撃発表。相澤選手の新たな挑戦に大きな拍手が送られた

「落ちる」のが当たり前だからこそ気持ちがいい

挑戦するとはいえ、業界について無知だったので最初は何からやればいいか分かりませんでした。とりあえず映画監督さんがされている勉強会やレッスンに行って、演技や作品を学ぶようになりました。同時進行でオーディションにも行きました。ジャンルを選ばず自分で探したり、紹介で行ってみたり。正直、1年や2年で花が咲く世界ではないと完全に分かっているので、10年、20年ぐらいかけて自分のブランディングを作っていこうと考えています。

ボディビルの大会では全く緊張しないんですが、オーディションではマジで緊張します(笑)。小さいころ、好きな女の子に告白するときのような心臓のバクバク感や、手の汗が出るってこんな感じなんだ、とか。普段、平常心で過ごしているので、オーディションを通して「新しいことに挑戦するってすごいな」と思いました。

オーディションでは選ばれずに落ちるのが普通なんで、本当に負け腰です。選ばれることに理由はあれど、落ちることに理由はない。これはボディビルの世界と全く逆なんですよね。例えばボディビルでは「落とす理由」を考えて決める方が早いのですが、オーディションの場合は、「選ぶ理由」を決める方が早い。さらに、自分の実力やスキルだけでなく、ペアを組んだ人との運的要素もあるので、オーディション当日の一発逆転も起こり得ることだと思います。昔していた柔道の試合と似たような感覚がありますし、落とされるというのは懐かしいし、なんだか気持ちいいですね。

俳優としての未来設計目指すは唯一無二の存在

学生が作る小さい作品への出演予定はありますが、大きな番組は決まっていません。だからこそ発表したんです。決まってから発表するのは自分の中でちょっと腹落ちしなくて。事務所にも入っておらず、1年ぐらいは自分の力でやってみようと考えて行動しています。2025年以降は、まず作品に携わったという実績を残し、こういう活動の中で共にお仕事をしてもらえる仲間がいれば、どんどん挑戦していきたいです。

これまで何か一つ言われたことを徹底的に続けることができました。やり続けた先にしか見えない景色って絶対にある。ボディビルの次、俳優の世界に入り込んだときに視野2ミリになって突き進んでいこうと思っています。イメージで言うなら甲子園の高校球児たちです。ヒットを打って一塁まで走っているけど、アウトになる。そう分かっていてもヘッドスライディングしに行くというか。ダメだと思っていても突っ込める人はごく少数でしょう。でも、そういうことをしないと、何もこの先変わらないと思っています。

相澤隼人といえば筋肉というのは譲れないですし、筋肉があるのは大きな武器だと捉えています。時間は減りましたが、トレーニング自体は続けていますよ。さらに筋トレだけでなく、柔術や柔道に行き始めました。私が10年以上取り組んできたものが、自分自身の今後に生きると思っているからです。それ以外にも打撃などのアクションの練習も行っています。こういった学びも踏まえて成長し、いずれは「この役は相澤しかいないよね」みたいな唯一無二の存在になりたいですね。俳優という枠組みを超えたスターのような存在に。自分にしか作れない世界観を築き上げて、最終的にはボディビルの裾野を広げる一助になれば、と思っています。

本記事を掲載している『IRONMAN 20252月号』のご購入はamazonが便利です!

-特集, news, pickup, アスリート
-, , ,


おすすめトピック



佐藤奈々子選手
佐藤奈々子選手