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女性らしさは“筋肉”が作る!前編[“筋肉博士”石井直方の筋トレ学]

雑誌『Woman'sSHAPE(ウーマンズシェイプ)』でお馴染みの石井先生と森弘子さんの対談。創刊とともに始まった対談も、節目となる20回目を迎えたWoman'sSHAPE vol.20(2020年2月号)。創刊からvol.20までの10年で女性のトレーニングを巡る意識と環境は大きく変化しました。今回は第1回の対談とvol.20までの10年を振り返りつつ、“女性らしさは筋肉が作る”という原点に立ち返り石井先生にお話をお伺いしていきます。

 

石井 直方(写真 左)
1955年、東京都出身。東京大学大学院教授、理学博士。全日本ボディビル選手権優勝(81・83年)、アジアボディビル選手権優勝(82年)ほか、ボディビル競技での輝かしい実績を誇る。トレーニングをテーマに次々にベストセラーを世に送り出す“筋肉博士”

森 弘子(写真 右)
ソライナ株式会社にて、プロテインや健康食品の企画・開発を行う。ボディフィットネスでは東京大会4連覇、2016年には8年ぶりに大会に復帰し、関東オープン・フィットネスビキニ163cm超級で優勝を飾る。

<本記事の内容>

10年前は女性の筋トレは当たり前ではなかった

“女性の筋トレブーム”は低迷する?

“女性らしさは筋肉が決定する”

筋トレのデメリットは?


10年前は女性の筋トレは当たり前ではなかった


ウーマンズシェイプも創刊から10年経ちました。先生とお話をさせていただくのも今回で20回目になります。ということで、今回はこの10年のフィットネスの歩みなど振り返りながら、お話を伺いたいと思っております。ウーマンズシェイプ創刊当時はまだ女性にとって筋トレが当たり前ではない時代で、ウーマンズシェイプは女性こそ筋トレをすべきだという啓発という使命があったと思います。1回目の先生との対談では「筋トレが女性らしさを作る」というテーマでお話を伺っていますが、この10年で女性が筋トレをするのがすっかり当たり前になってきました。10年前ならプロテインを飲んでいると、それこそ変わり者扱いされていましたが、今ではコンビニでプロテインが買えますし、ビジネス書なんかでも〝知的エリートは筋トレをするものだ〟というストーリーが語られています。知的エリート=筋トレという意味では、石井先生は本当にその先駆けで象徴的存在だと思います。
ところで、先生がトレーニングを始められた当時の社会的な状況として、ボディビルはどのように受け止められていたのでしょうか。

石井
私がボディビルを始めたのは高校生のころなのですが、当時ボディビルは薄暗い地下の施設でマニアックな人たちが呻きながらトレーニングをするというイメージで、とにかくアングラでした(笑)。本当にそういう独特の世界で、スポーツであるとか健康に結びつくとか、そういうイメージはありませんでしたね。


でも、もしかしたら一般の方は、それからずっと最近までそのアングラなイメージでボディビルを見ていたのかなって思います。近年はメンズフィジークのようにファッショナブルに体をモード化するようなイメージも生まれ多くの支持を集めていますが、かつては男性のボディビルでさえアングラ寄りだったことを考えると、女性がボディビルをすることの理解は一般的には得にくかったと思います(苦笑)。

石井
アメリカである時期ウーマンリブ、女性の権利を求める運動が出てきましたが、そうした思想に後押しされ、男女の生理的な区別すら飛び越えて、女性でも男性顔負けの筋肉をつける、そこを目的とする時期がありました。それこそ女性ながら、そのままミスター日本に出ても優勝するんじゃないかというくらいの人もいたりしていて、特殊な方向に進みかけた時代もあったのですが、さすがに何か違うんじゃないか?と思う人も多くて、ここ何年かで軌道修正されてきました。

“女性の筋トレブーム”は低迷する?


先生はボディビルがアングラ扱いされていた時代から見てこられて、現在の筋トレブーム、女性の体作りブームをどうご覧になってますか?

石井
今はカオスですね(笑)。良好な方向に発展してきて成熟しつつある、という段階では決してないと思います。過渡的な状況であって、このカオスのような状態がどういう風にこれから落ち着いていくかということではないでしょうか。


思想史を見ていくと、何か極端なムーブメントがあったときは、必ず反対側のベクトルに揺り戻すような思想が生まれてきたりもするので、体に対してフォーカスされている今の状況が、この後どう振れていくのかすごく興味深く見ています。

石井
女性のボディビルは、1980年代にとても盛んになった時期がありました。80年から85~86年ぐらいの短い間でしたが、パッと広まった時期があって、その後また萎んで長期低迷しました。それがここへ来て爆発的に人気が高まっているという状況を俯瞰すると、1980年代の感じに少し似ているところがあって、大きい盛り上がりの後に低迷するという危うさも感じます。だから、どうやって女性のトレーニングブームをポピュラーな状態で定着させていくかというのを考えないと、また一時的なもので終わってしまうと思います。


多分、かつてよりは“体作りっておしゃれで”かっこいい…というポジティブな受け止め方が広がってきてはいると思うのですが……。

石井
そのあたりは1980年代当時とはだいぶ違うので、フィットネスの一般化という意味では、好材料だと思います。健康を考えた場合、今は“筋肉をちゃんとつけることが大事だ”という認識が以前とは比べ物にならないほどに常識化してきましたし、お医者さんもごく当たり前に「筋肉をちゃんと作りましょう」と言うようになりました。それこそボディビルがアングラだった時代は、筋トレなんて趣味として好きな人がやるのはいいけど、〝筋肉をつけても健康にはプラスになりません〟とハッキリ言われました。とにかくジョギングなどエアロビック運動をやって心臓と血管さえ若くしていれば健康になるという発想でした。でも今は世界保健機関=WHOが「生涯健康に暮らすためには40歳から65歳までの壮年期に、週2回以上筋肉を強化する運動をやりましょう」と明確に打ち出していて、女性でも筋肉をしっかりつけることが大事だという情報を多くの人が理解するようになったのは大きいです。

“女性らしさは筋肉が決定する”


第1回の対談では“女性らしさ・男性らしさを決めるのは骨から筋肉です。脂肪ではありません”ということを先生がおっしゃっていて、それが読者の皆さんに強いインパクトを与えたという報告をもらっています。筋肉と女性らしさが紐付くことに驚きを持つほど、一般的にはボディメイクに対する理解は低かったと思います。じゃあ、今はみんなが正しい情報を共有できているかというと、ちょっと心配な側面もあるかなと思います。そこで、女性の筋トレブームの今だからこそ、改めて“女性らしさは筋肉が決定する”ということを先生からご教示いただきたいと思います。

石井
人の体から筋肉と脂肪をそぎ落として骨だけにすると、解剖学者でもない限り男性か女性か分からないかもしれませんね。骨の上に筋肉が乗って、その上に脂肪がついて肌で覆うことで性別の違いが明確になります。体の形を決める上で筋肉はとても大きな役割をしています。


これは以前も教えていただきましたが、上半身、特に肩周辺は女性より男性の方がテストステロンの受容体が多いため、女性がどんなにトレーニングを頑張っても逆三角形の男性的なアウトラインにはなりにくいと。

石井
そうですね。それでも、例えば女性であってもレスリングの選手などは、凄まじいトレーニングをして上半身を大きく強くするわけです。それは一般的に女性が発達しにくい部位を意識的に強くすることで、トップレベルの競技で勝てるアスリートになるというわけです。


ヒップや足に関しては、女性も男性と匹敵するぐらい鍛えられるものなのですか?

石井
上半身よりは男性に迫ることができると考えられます。男性の8割か9割、それぐらいまでは行くと思います。 これはトレーニングだけではなく、スポーツの場面でも言えます。例えばスピードスケートの女子選手の太ももやお尻は、男性顔負けなくらいたくましく発達していますね。下半身に関しては男女でそんなに大きな差はありません。

筋トレのデメリットは?


女性が体を鍛え進化させることでメリットはたくさんあると思うのですが、先生のご専門の生命科学の視点などから見た場合、何かデメリットも考えられるのでしょうか?

石井
デメリットはないと思います。女性も筋肉が発達することで強くなって、例えば環境の変化に対して抵抗力がつくとか、そういうことはあってもデメリットということは全くないと思います。基本的に女性のほうが寿命も長いし、子供を産んで子孫を残すという仕事が課せられた体としては男性より丈夫にできています。そういう意味では女性が体を鍛えるようになると、ますます男性より強くなり、男性の存在理由が限定的なものになってしまうかもしれませんね。遺伝子をつなぐ役目を終えたら、男性はいらないと(笑)。

取材・文 長谷川亮/撮影  t.SAKUMA 
(Woman'sSHAPE vol.20より掲載)


 




佐藤奈々子選手
佐藤奈々子選手

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