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ベンチプレスは筋肉の柔軟性を損なう可能性がある?アスリートが実践したいベンチプレスとは?

筋力トレーニングエクササイズには一つの分類の方法として、両側性のエクササイズと片側性のエクササイズに分けられることがあります。ベンチプレスに例えると、両側性エクササイズはベンチプレス、片側性エクササイズはシングルアームベンチプレスになります。この2種類の分類は使い分けることができます。2種類の違いを井上先生に聞いてみました。

文:井上大輔 <NPO法人 日本ファンクショナルトレーニング協会>

両側性のベンチプレスと片側性のベンチプレスについて

両側性エクササイズ(写真1‒1)は、エクササイズ自体が安定した姿勢で行われるため、高重量が扱えます。したがってボディメイクを目的としたトレーニーのトレーニングプログラムはほとんどのエクササイズで両側性エクササイズが採用されると思います。

写真1ー1 ベンチプレス(両側性エクササイズ)
長所:高重量を扱うことが可能、筋肥大に効果的
短所:スポーツに転化することが難しい、身体が硬くなりやすい

しかし問題もあります。両側性のエクササイズは神経系の混乱が起こるといわれ、俗にいう「力み癖、筋肉の供縮」が引きおこり、筋肉の柔軟性が損なわれる可能性があるのではないかといわれています。これは人間の動作においてほとんどが、片側性、または交差パターンであるということが起因となるようです。歩くとき、走るとき、ボールを蹴るとき、投げるときなど、ほとんどの動作は片手、片足で行われます。言われてみれば人間の生活や、スポーツの中で両側性の運動はほとんどなく、両側性の動作は人間の中枢神経においてあまり得意な動作としてプログラミングされていないので硬くなってしまうのではないかということです。

写真1ー2 シングルアームベンチプレス(片側性エクササイズ)
長所:体幹の動員率が高い、スポーツに転化することがイメージしやすい
短所:両側性に比べ筋肥大が容易でない

片側性エクササイズ(写真1‒2)は、エクササイズのフォームが不安定な姿勢で行われるため高重量を扱うことは難しくなります。したがって筋肥大や筋力向上への期待は少なくなります。しかし不安定な姿勢を維持するため、体幹を始め沢山の筋肉を動員することができます。これは両側性の運動に比べて日常やスポーツの動きに近くなるので、スポーツを行っているトレーニーには取り入れたいエクササイズだと言えます。

結論を言うと、それぞれ長所、短所があるので、使い分けることが大事です。今回はシングルアームダンベルベンチプレスについて解説していきます。

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シングルアームダンベルベンチプレスの行い方

片手にダンベルを持ち、ベンチに仰向けに寝ます。両足は地面に下ろして身体がベンチから落ちないように保持します。ダンベルを持たない方の腕は頭の横のベンチを掴み安定させます。(写真2‒1)

写真2 ー1 シングルアームベンチプレスのスタートポジション

写真2 ー2 シングルアームベンチプレスのフィニッシュポジション

そのままバランスを取り、ダンベルをゆっくりコントロールしながら、下ろしていきます。(写真2‒2)

慣れてきたら、ダンベルを持たない方の手を天井に伸ばします。(写真2‒3)

写真2 ー3  片方の手を上方に伸ばした、より難しいフォーム

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●リグレッション(エクササイズを簡単にするには)
■オルタネイティッドダンベルプレス(写真3‒1)(写真3‒2)

写真3 ー1 オルタネイティッドダンベルプレスのスタートポジション

写真3 ー2 オルタネイティッドダンベルプレスのフィニッシュポジション

両手でダンベルを持ちベンチに仰向けになります。両方のダンベルをあげた状態で片方ずつ交互にダンベルを下ろしていきます。このエクササイズは両手でダンベルを保つため、片方のダンベルが「カウンターウエイト」になるため、シングルアームに比べて高重量は扱いやすくなります。両側性と片側性のエクササイズのどちらを採用するかは、目的によって変わりますが、特にスポーツを行っている場合は両方行うのが良いと思います。なぜなら筋力トレーニングをスポーツパフォーマンス向上に転化させるには、どの種目を行うかよりも、スポーツの場面とどのように動きや感覚を結びつけるかという、本人の感覚やセンスによる要因が大きいからです。

したがって両側性のエクササイズを行っても本人次第でスポーツパフォーマンス向上に役立てることは可能なのです。ただ、スポーツのように予測できない動きやバランスを崩された状況で力を発揮するためには、多様なエクササイズを行い多様な感覚を身体に入力することも必要なので、どうすればわからない場合はとりあえず、両側性、片側性の両方のエクササイズを行うのも良いと思います。

井上 大輔(いのうえ・だいすけ)
兵庫県神戸市出身。滋慶学園大阪ハイテクノロジー専門学校スポーツ科学科トレーニング理論実習講師/整体&パーソナルトレーニングジムを経営(兵庫県明石市)/ NSCACSCS/NPO 法人JFTA 理事長/17歳よりトレーニング開始。大学卒業後、スポーツクラブに就職、スポーツコンサルティング事業にかかわる。同時に操整体トレーナー学院学長松下邦義氏に師事、操整体について学ぶ。/2006年NBBF 全日本選手権 第6位。
NPO法人 日本ファンクショナルトレーニング協会 TEL:078-707-3111

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