トレーニング mens

赤ちゃんのハイハイから考える機能的な身体づくり

人は歩くときは当然、右足と左足を交互に踏み出します。スポーツなどスピードや反動の要素が加わる場合、片足の方での筋力発揮が起こりやすいのです。つまり、対角線に体を動かすことが機能的な体の条件であると言えます。体を交互に動かす方が、スポーツでの筋力発揮が起こりやすい理由の一つは、筋膜の走行にあるのです。

文:井上大輔 <NPO法人 日本ファンクショナルトレーニング協会>

【おすすめ記事】特集:Tシャツがかわいそうになるくらいの剛腕の作り方

●機能的な体は対角線に動かす

人間の体は手足を左右交互に、動かすようにできています。赤ちゃんがハイハイするときから、左右交互に腕を動かして前に進んで行くことを覚えます。歩くときも当然、右足と左足を交互に踏み出します。そして腕は対角に反対の方向に振るのです。当たり前のことですが、その当たり前のことが行われていないのが、従来の「筋トレ」です。ジムを見回すとほとんどの人が、左右同時に腕や脚を押し出すことに必死になっています。「両側性欠損」という言葉があるのですが、両側での力発揮は片手片足に比べて弱いという意味です。 ボディメークの場合は、両側性のトレーニングの方が安定して力発揮が起こりやすい場合もあるのですが、スポーツなどスピードや反動の要素が加わる場合、片足の方での筋力発揮が起こりやすいのです。つまり、対角線に体を動かすことが機能的な体の条件であると言えます。

●体を交互に動かす方が、スポーツでの筋力発揮が起こりやすい理由の一つは、筋膜の走行にあります。

筋膜の走行

優秀なアスリートは主に筋肉だけに頼らず、筋膜の弾力を利用して、ダイナミックな動きを行います。筋肉の収縮に頼りすぎると力みが生じて競技の途中で疲労してしまうからです。スポーツで効率的に強く、速く動くには筋膜を有効に利用するべきであると言われています。筋膜の走行にはいろいろな流れがありますが、その中でも歩行やランニングなどでも使われるのが「ポステリア(後ろ)オブリーク(斜め)サブシステム」という走行です。 殿筋から、胸腰筋膜が連結して、反対側の広背筋に続く斜めに走る筋膜の走行です。(写真1 −1)今回のトレーニングはこの「ポステリア オブリーク サブシステム」を使う、1アーム、1レッグダンベルロウイングについて説明していきます。

●1アーム1レッグダンベルロウイングの効用

・ポステリア オブリーク サブシステムの強化
・体幹の安定性の向上
・広背筋の強化

●1アーム1レッグダンベルロウイングの行い方(写真2−1、2−2)

1アーム1レッグロウイングのスタートポジション

1アーム1レッグロウイングのフィニッシュポジション

骨盤が開いた良くないフォーム

右手でベンチを支えた状態で、左足を軸に片手、片脚でベントオーバーの姿勢を取ります。体幹が床と平行の状態を維持したままロウイングを行います。エクササイズ中は(写真2−3)のように体が傾いてしまうので(ヒップオープン)床と平行になるように意識します。また、広背筋を最大限に動かすため、肩甲骨を動かないように固定しておきます。

●リグレッション(原点回帰)とプログレッション(エクササイズの発展)

◎1アーム1レッグダンベルロウイングのリグレッション
①1アーム2レッグダンベルロウイング(写真3−1)

1アーム2レッグダンベルロウイング

両足立ちで1アームダンベルロウイングを行います。このとき骨盤の後方移 動を意識して、ハムストリングスに張 力がある状態で行います。
ハムストリングスと殿筋に張力を与えると、ポステリア オブリーク サブシ ステムが働きやすくなります。

◎1アーム1レッグダンベルロウイングのプログレッション
①1アーム1レッグダンベルロウイング(オンザベンチ)(写真3−2)

1アーム1レッグダンベルロウイング(オンザベンチ)

ベンチの上でバランスを保ちながら行います。左右の支持面の幅が狭くなるのでより、体幹のバランスが必要になります。基底支持面が小さくなればなるほど、体幹の支持力は必要になりますが、広背筋にかかる負荷は減ってしまうので、広背筋を肥大することだけが目的であるならば、適当でないエクササイズになります。

スポーツは筋膜を使って筋肉を使わないと言ってしまうと、筋トレが必要ないように感じるかもしれませんが、車にたとえたら「エンジンを大きくして馬力を上げる」のが従来の筋トレの役割で、筋膜を利用するのは「ドライビングテクニックの向上」体の使い方になると思います。今回紹介したエクササイズのような基底支持面の小さいトレーニング(ドライビングテクニックの向上)ばかりを行うのではなく、従来のトレーニング(エンジンを大きくする)と併用することが、スポーツでは大切なのです。

\合わせて読みたい/
▶スポーツアスリートにおすすめしたいベンチプレス
▶いわゆる「使えない筋肉」を作ってしまうトレーニングとは?

井上 大輔(いのうえ・だいすけ)
兵庫県神戸市出身。滋慶学園大阪ハイテクノロジー専門学校スポーツ科学科トレーニング理論実習講師/整体&パーソナルトレーニングジムを経営(兵庫県明石市)/ NSCACSCS/NPO 法人JFTA 理事長/17歳よりトレーニング開始。大学卒業後、スポーツクラブに就職、スポーツコンサルティング事業にかかわる。同時に操整体トレーナー学院学長松下邦義氏に師事、操整体について学ぶ。/2006年NBBF 全日本選手権 第6位。
NPO法人 日本ファンクショナルトレーニング協会 TEL:078-707-3111


-トレーニング, mens
-, ,