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「朝2時半に起床」ミスターバリバリ!筋肉琉球戦士の減量生活とは

仕上がりの厳しさでは他の追随を許さない。カットの鋭さは国内屈指、いや、世界屈指と評して過言ではないだろう。極限まで絞ったその姿には、同じ舞台に立ち競う選手たちですら、驚嘆のため息を漏らすほどだ。沖縄で鍛える仲泊兼也選手に、その「バリバリ」の秘訣を尋ねた。(IRONMAN2019年8月号より引用)

取材:木村卓二 撮影:中島康介(大会写真)、仲泊兼也

「平日のトレーニングは昼、仕事の合間に45分間行います」

――年間計画としての、オンとオフの設定を教えてください。
仲泊 オフはミスター日本終了からお正月までの2カ月少々です。ただし、国際大会に出場するかしないかで変わります。例えば、2017年は11月にルーマニアで世界マスターズに出場しましたので、オフ期間が短くなりました。
――どのような計画で減量を進めるのでしょうか?
仲泊 いくつかの段階に分けて減量を進めていきます。まず、第1段階の目標は「80㎏を切ること」です。低い設定目標ですが、実際には、これが一番の大きな壁になっています。この目標を達成したら、チートデーを設けるようにしています。第2段階からは、2㎏ずつ、細かく目標をセットします。2㎏順調に落ちたら、土曜日に週に一度のチート、またさらに2㎏減を目指す、そんな感じで進めます。私の場合は、80㎏を切れば、あとは停滞期なく目標体重までスムーズに落ちていきます。
――減量幅は、どのぐらいになるのでしょうか?
仲泊 85㎏から71㎏で見ていますので、約15㎏ですね。ただ、今回のオフは、年末年始の家族旅行での食事が原因となり、90㎏までいってしまいましたが(笑)。
――ご家族のお話が出ました。ご家庭をお持ちの選手は、家庭とコンテストの両立というテーマを抱えていると思います。生活のリズムなど、ご家庭の影響はいかがでしょうか?
仲泊 子どもが3人いるのですが、上の2人が高校生になってからは、時間のゆとりがなくなりました。高校では給食がないので、朝早く起きて弁当をつくる必要があるからです。有酸素運動をやらなくなりました。
――有酸素をやらなくなった影響はありますか?
仲泊 特にありません。以前は4時に起きてウォーキングをやっていましたが、今はできるときにステップウォークを20分くらいやる程度です。
――もっと早く起きるようになったのでしょうか?
仲泊 驚かれることが多いのですが、朝2時半に起床しています。息子2人と自分の分の計3つの弁当、それと朝ご飯をつくるところから1日がスタートします。自分の職場も息子の学校も遠いので、5時半には家を出ます。平日のトレーニングは昼、仕事の合間に45分間行います。夕方に帰宅してからも、夕飯の準備や洗濯など、家事でドタバタです。家事がカーディオトレーニングみたいなものです(笑)。就寝は夜10時です。
――睡眠4時間半ですか。体の仕上がり同様、生活もハードなのですね。ご自身でおつくりになっているお食事ですが、オンとオフで違った内容になるのでしょうか?
仲泊 基本的には同じですが、減量期に入ると、好きなもの、例えばジャンク的なものをやめて、減量食を増やします。摂取カロリーを減らすことを先に行い、そして体を見てトレーニングをハードにし、消費カロリーを増やすようにしています。
――基本的な食事内容について教えてください。
仲泊 タンパク質は、主に自家製の鶏ハムと魚ハム、そして卵白で摂取しています。牛肉など、高い食材は食べません(笑)。野菜やキノコ類は決めておらず、店でその日に安いものを買います。私の食事は「安い食材」が基本です。子どもたちの食事でお金がかかりますから(笑)。炭水化物は、もち麦、玄米、白米を混ぜて炊いて、これをおにぎりにしています。他、オートミール、芋、カボチャなども食べています。
――ハムも自家製というのが驚きです。調理の際に、油や調味料など、何か気をつけていることはありますか?
仲泊 油は一切使いません。全て蒸したり、湯がいたりして調理しています。味付けは塩胡椒のみです。子どもたちとは別のメニューになります。
――いくつか具体的な食事内容を教えて下さい。

仲泊 写真①は、ササミハム2つ、ブナシメジ、えのき、玉ねぎ、ピーマン、アボカド少し、カボチャ少し、ナッツ少し、ヒジキです。この日は玉ねぎとピーマンですが、野菜は固定しておらず、何でも食べます。写真②はマグロの魚ハム、③はササミの鶏ハムです。その他、卵白も1食に3~4個食べます。安いときは芋も買ってタッパーに入れますが、その場合はカボチャを減らします。食事の回数は1日計3回で、これらを詰めたタッパーを、朝、トレーニングの1時間前、そして午後3時に取ります。あとは、プロテインとBCAAを夕方と寝る30分前に飲んでいます。
――何か、沖縄ならではの食品を食べることはありますか?
仲泊 季節の野菜、ゴーヤ、ジーマミ豆腐やおからなども食べます。それと、もずくが好きで、黒酢で食べています。
――減量が順調に進むと、チートデーを設けるとのお話でした。何を食べるのですか?
仲泊 チートというか、炭水化物の爆上げですね(笑)。白米、オートミール、パンなどを、カーボアップでドカ食いします。純粋に、カーボを好きなだけ食べまくる感じです。その代わり、チートデーは脂質をカットします。

――油を使わずに調理なさるとのことでしたが、どのあたりで脂質をカットするのでしょうか?
仲泊 納豆、アボカド、ナッツなどで脂質を摂っているのですが、こうした食品を減らします。逆に脂質を多く摂りたいときは、これらを増やして炭水化物を少し減らしています。
――減量中、どのくらい炭水化物を摂取するのでしょうか?
仲泊 基本は低炭水化物で減量を進めます。小さなおにぎりを1つ2つトレーニング前後に食べる程度です。体重を見てゼロにすることもあります。
――減量中のサプリメントについて教えてください。
仲泊 決めていませんが、セール品があれば、カルニチンやコエンザイムQ10、CLA、グルコサミン、マルチビタミンなどを買うようにしています。これらとは別に、オンとオフを問わず、定番で使っているものもあります。ビーレジェンドのプロテイン、BCAA、グルタミン、クレアチンなどです。
――減量が停滞してきたら、どんなことをして乗り越えていらっしゃいますか?
仲泊 私の場合、80㎏を切るのがすごく大変で、そこに2~3カ月くらいかかります。そのときは焦らず、カーボを上げたり下げたりしています。トレーニングにも変化をつけ、ジャイアントセット、スーパーセット、あるいはドロップセットなどを取り入れるようにしています。そうすると、数カ月かかりはしますが、体重は動いてきます。
――ご自身の減量について、他の選手のやり方と比較したりすることはありますでしょうか?
仲泊 何かを他の選手と比べたことはないです。体も違うし、部位の発達の仕方も形も何もかも違います。よって、私が意識しているライバルは、常に過去の自分です。先輩からアドバイスを聞くときも、参考にしてそのまま受け入れるのではなく、自分なりのアレンジや改良を加えるようにしています。
――過去に減量で失敗したことはありますか?
仲泊 あります! 2014年に、須藤孝三さん(1974年と76年のミスター日本)たちの時代のやり方を実践してみました。1日にササミだけ2㎏食べる、水はトレーニング中しか飲まない、食事に塩はかけない、ゼロカーボにするなど、極端な方法です。このときは味のついたハムではなく、ただ湯がいただけの鶏肉を無理やり飲み込んでいました(笑)。正直、ただただ辛いだけでした。周りからは、「今の時代にそんなやり方するなんてアホか!」と言われました(笑)。結果、お腹を壊して下痢になり、食べることが嫌になってしまいました。どうしたらいいのか考え、口に入れるものを、プロテイン、野菜ジュース、スムージーなど、ほぼ液体物だけにしたんです。そうしたら体重は減るのですが、目標の設定体重になっても何か「スムース?」というか「フラット?」な感じで、ゴツゴツハードではなくソフトになってしまいました。その前年の2013年に、モンゴルでの世界マスターズの40代70㎏級で2位になっていたのですが、そのときを見ている審査委員たちから、「今年はダメだ!」とボロカスに言われました。なぜ失敗したのか、はじめは分かりませんでしたが、後々いろいろ考えて追求し、「咀嚼をしてない!」ということに行き着きました。噛むって大切なんだと理解できました。今は、咀嚼することを意識して食べています。同じタンパク質でも、飲み物と固形物では吸収率が違うのではないかと思います。その経験があるので、ローカーボは楽です。
――そうしたご経験を重ねて、変化した部分はありますでしょうか?
仲泊 昔と比べたら、減量のやり方がうまくなったと思います。昔は、ただただがむしゃらにやっていた感じでした。トレーニングもうまくなったと思います。ケガをしなくなったことと、「脳とつなげる意識」を常に考えられるようになったと思うからです。
――ちなみに、ボディビルを始める前は、どういった体型だったのでしょうか?
仲泊 細かったです。ただ、体重の変動幅は大きかったです。少しベンチプレッサーだったことがあるのですが、そのころは95㎏まで増えました。逆に、ボクササイズをやっていたときもあるのですが、そのときは57㎏ぐらいまで減りました。今にして思えば、絞りやすい体質なのかもしれません。
――最後に、減量のモチベーションを維持する方法があれば教えてください。
仲泊 これと言ってないですね。減量に対して、モチベーションが落ちないんです。ボディビル歴は20年以上になりますが、毎年のことなので、いつものように食事してトレーニングする、それが生活の一部、リズムになっています。ただ、トレーニングに対するモチベーションが下がるときはありますね。そんなときは、「とりあえずジムに行って、軽めでもいいから筋肉を動かす!」、これです。休むとどんどん気持ちが下がるので、そこは絶対休まないです。意地でも(笑)。


仲泊兼也(なかどまり・ともや)
1973年2月17日生まれ。沖縄県北中城村出身。身長169cm、体重71kg(オン)85kg(オフ)、ボディビル歴25年。
主な戦績:
2013年世界マスターズ選手権大会男子40~49歳70kg級2位
2014年世界マスターズ選手権大会男子40~49歳70kg級5位
2014年世界クラシックボディビル選手権大会男子171cm以下級7位
2017年世界マスターズ選手権大会男子クラシック40~44歳級5位


執筆者:木村卓二
TVディレクター、記者として活動。複数言語に通じ、「究極のトレーニング」を求め、研究と取材に勤しむ。有資格パーソナルトレーナーとして、格闘家などへの指導も行う。

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