トレーニング mens

「友達以上コーチ未満」筋トレのパートナーがいれば限界を超えられる

何をするにしても、パートナーがいるのといないのとでは心強さが違う。ましてや、ジムの中で冷たくて重い鉄の塊に立ち向かうような状況ではなおさらだ。より高いレベルを目指してワークアウトに励むトレーニーにとって、パートナーの存在はたとえようもないほど頼もしく、安心して限界まで挑戦することができる。あのアーノルド・シュワルツェネッガーのトレーニングパートナーはフランコ・コロンブだった。リー・ヘイニーとリッチ・ギャスパリもトレーニングを一緒にしていたし、ブランチ・ウォーレンとジョニー・ジャクソンのペアはトレーニング動画を見たことがある人なら誰でも知っているはずだ。どちらかが限界に挑戦しているとき、パートナーはいざというときにすぐ手助けができるように緊張した面持ちで構えている。追い込みに負けそうになるトレーニーを叱咤激励して奮起させる。動作を補助するだけでなく、精神的に支えるのもパートナーの役割なのだ。

文:William Litz 翻訳:ゴンズプロダクション

トレーニングパートナーの利点

トレーニングパートナーがいることの利点はたくさんあるが、中でも特に魅力的な点をいくつか紹介しておきたい。

【問答無用】
午後5時を過ぎて仕事が終わった。この日は朝の8時からオフィスに詰めていて心身ともに疲労困憊だ。それでも、すぐに家に帰って犬の散歩をし、子供らの宿題を見て軽く食事をしたら、ジムに行かなければならない。いや、今日はいつもより疲れているしジムは明日にしようか……と心が折れてしまい休んでしまう。

ところが、翌日も同じような一日で、やはりジムに行けなかった。そうこうしているうちに一週間が過ぎ、何となくトレーニング意欲が低下してしまったという話はたくさん耳にする。

自室でシットアップを少しやって罪悪感を薄めようとするかもしれないが、そんな日々が続けば、ジムに行って追い込もうという気力は徐々に失せてしまう。

しかし、トレーニングパートナーがいるとそういうわけにはいかない。パートナーがジムで待っていると思うと、行かずにはいられないはずだ。パートナーは自分を信用して、予定どおりにジムに向かっているのだ。築き上げてきた信頼関係を壊すわけにはいかないのである。自分がサボればパートナーのワークアウトにも支障が出る。彼もまた追い込むための術を失うのだ。自分の勝手な都合は許されないのである。

そうやって強引にでもジムに行けば、パートナーのワークアウトを支えるだけでなく、あれだけ気弱になっていた自分にも活が入る。互いに限界まで追い込み、爽快な気分でワークアウトを終える。来て良かった、予定どおりにワークアウトができて本当に良かったと心から思う。改めて、パートナーがいてくれたことに感謝する瞬間だ。

パートナーがいるのといないのとでは行動力に差が出るものだ。実際、行くのをためらいながらも、パートナーの存在があったからジムに行き、予定どおりのワークアウトをこなしたとき、過去最高のワークアウトができたと興奮気味に語る人は多いのである。

【友達以上コーチ未満】
トレーニングパートナーは、ただのトレーニング仲間ではない。組む相手によってはメンターだったりコーチだったりするケースもあるからだ。そして、そういう相手がパートナーの場合、たくさんのことを教えてもらうことができる。

初級者の頃に、知識と経験が豊富な先輩トレーニーとパートナーを組むことができたという人は幸運だ。コーチ兼任のパートナーを見つけることができれば、まさに鬼に金棒なのだ。

ボディビルの世界では、小さな違いが結果を大きく左右することもある。どんなパートナーと組むかも結果に影響することが多く、安易に決めるべきものではないはずだ。

このことをわかりやすく例えれば、手首の角度が違うだけで挙上重量が変わったり、足のスタンスの違いでターゲット部位が変わるようなものだ。見た目にはそれほど大きな違いはないのに、得られる結果や効果が大きく変わる。このことはパートナー選びも同じなので、ぜひ慎重に判断していこう。

自分は初級者で相手が上級者であれば理想的だが、中にはふたりとも上級者だったりすることもあり、その場合はお互いに切磋琢磨してレベルを高めていくことができる。

たとえばアーノルドとフランコのペアは、互いに最上級のパートナーだったはずだ。知識も経験も豊富なふたりだから、互いに助け合い、競い合いながら高みを目指すことができたに違いない。映画『パンピングアイアン』 の未収録部分を集めたYouTube動画(アウトテイク)の中で、アーノルドがフランコにサイドチェストポーズについて意見を述べているシーンがある。ふたりの関係はまさに理想的なトレーニングパートナーであり、それこそが勝利へのチケットだったに違いない。

パートナー必須の極限ワークアウト

トレーニングパートナーがいれば徹底的に追い込むワークアウトが可能だ。ひとりではなかなか追い込めるものではないが、パートナーがいればギリギリの崖っぷちまで自分を追い詰めることができる。つまり、超高強度のワークアウトを試したいという人はパートナーの助けは必須なのである。
具体的にどのようなものがパートナー必須のワークアウトなのか。参考までにプログラムを紹介しておきたい。

【1日目:脚】
①ブリージングスクワット
20レップ×1セット
※1セット以上は行わない
②アップ&ダウン・ラックレッグプレス
1セット
③フォースドネガティブ・レッグエクステンション
限界レップ×1、2セット
④シシースクワット
ポジティブの限界レップ×1、2セット
⑤シーテッドレッグカール
ポジティブの限界レップ×2セット
⑥フォースドネガティブ・レッグカール
限界レップ×1、2セット
⑦ドンキーカーフレイズ
25レップ×4セット
⑧シーテッド・カーフレイズ
100レップ×1セット(途中で休憩を入れてもOK)
⑨スクワット・カーフレイズ(しゃがんだ姿勢で行うカーフレイズ)
50レップ×1セット
※⑧と⑨はスーパーセットで行う。

【2日目:胸、肩、上腕三頭筋、腹筋】
①フォースドレップ・インクライン・スミスマシンプレス
2セット
※セットの最後に必ずフォースドレップを2~4レップ加える。
②マシン・フラットプレス
1セット
※セットの最後にアイソメトリックホールドを加える。
③ケーブル・クロスオーバー
20レップ×2、3セット
④サイドレイズ
限界レップス×1セット
※フォースドレップとドロップセットを取り入れる。
⑤ネガティブオンリー・オーバーヘッド・マシンプレス
限界レップ×1セット
⑥リアデルトマシン(またはベントオーバー・ダンベルサイドレイズ)
10~15レップ×2、3セット
⑦トライセップスプッシュダウン
限界レップス×2セット
⑧オーバーヘッド・ダンベルエクステンション
限界レップス×1、2セット
※ドロップセットを取り入れる。
⑩クロースグリップ・ベンチプレス
限界レップス×1セット
※フォースドレップとネガティブを取り入れる。
⑪ライイングレッグレイズ
限界レップス×2、3セット
※パートナーに負荷をかけてもらう。
【3日目:背中、上腕二頭筋、前腕】
①チンアップ
限界レップス×2、3セット
②ジョン・ミードウ流フォースド・ストレッチ・プルダウン
限界レップス×2セット
③Tバーロー
6~8レップ×2セット
※トップで一旦停止を加える
④ケーブルロウ
1セット
※セットの途中で重量を2回減らすドロップセットを取り入れる。
⑤チンアップ
限界レップ×1セット
※ネガティブオンリーで行う。
⑥ビハインドバックシュラッグ(またはアップライトロウ)
限界レップ×1、2セット
⑦ノーチラスカール
限界レップ×1セット
※フォースドレップとネガティブを取り入れる。
⑧スタンディングEZバーカール
限界レップ×1セット
※フォースドレップを取り入れる。
⑨コンセントレーションカール
15レップ×2セット
⑩ハンマーカール
1セット
※セットの途中で重量を2回減らすドロップセットを取り入れる。
⑪リストカール
20レップ×2セット
⑫リバースリストカール
20レップ×2セット

種目とテクニックの解説

●ブリージングスクワット
アイアンマインド社のオーナーであるランドール・ストロッセンの著書『スーパースクワット』で紹介され広まったこの種目は、筋量アップのための伝統的なスクワットである。

ブリージングスクワットは、筋発達が得られずに苦悩する多くのハードゲイナーたちを救ってきた種目であり、しっかりした食事計画と合わせて実践することで、確実な筋量増加が期待できる。

まずはスクワットで10~15レップが行える重量をセットする。準備ができたら、通常のやり方でスクワットを開始する。ただし、1レップを終えるごとに2、3回の深呼吸をしてから次のレップを開始する。このやり方で15レップ目まで行い、16レップ目からはレップ間の深呼吸回数を5回に増やしてさらに5レップを行う。

通常なら10~15レップしか上がらない重量だが、深呼吸を挟むことで20レップを目指すことも可能になってくる。

ちなみに、このブリージングスクワットのやり方はレスト&ポーズ法とは違う。というのもフリージングスクワットでは、レップ間の深呼吸の間はバーを肩に担いだままの姿勢を保つからだ。レスト&ポーズ法はウエイトを一度ラックに戻して短い休憩を挟んでからレップを再開するやり方である。

レップ間に深呼吸を挟みながら行うブリージングスクワットは、1セットだけでも拷問に近いほどきつい。それでも、昔から多くのボディビルダーがこのやり方で筋量を増やし、壁を越えてきたのだ。

何年も前のことだが、あるリフターがブリージングスクワットを行ったときの感覚についてこう語っていた。

「10レップ目で神様が見えた。15レップ目でまた神様が目の前に現れた。神様は心配そうな顔で私を見ていたんだ」と。

大げさな! と思うかもしれないが、やってみれば彼の表現に偽りがなかったことがわかるはずだ。

不可欠というわけではないが、過酷なスクワットなのでパートナーにはそばについていてもらいたい。特に最後の5レップは相当にきついはずだ。もし潰れそうになってもパートナーがいれば安心である。もし、20レップ目に到達する前に立ち上がれなくなってしまったら、パートナーに補助してもらい、フォースドレップの要領で最後の20レップ目までやり遂げよう。

●アップ&ダウン・ラックレッグプレス
以前から本誌を愛読してきた人なら、ロン・ハリスの連載記事「ボディビルダー誕生」を覚えているのではないだろうか。アップ&ダウン・ラックレッグプレスはロンが解説していた種目だ。

まずはレッグプレスマシンにプレートを左右1枚ずつ付けて10レップを行う。トレーニーはマシンに体をセットしたままで、パートナーにプレートを1枚(左右に)追加してもらい、さらに10レップを行う。これを繰り返していく。

通常は、使用重量を増やすごとにレップ数を減らしていくが、ここではプレートを追加しても必ず10レップ行う。そのため、パートナーがプレートを追加する間がトレーニーにとって唯一の休憩時間ということになる。

プレートを1枚ずつ増やしていき、ついに10レップまで到達できなくなっても終わりではない。今度は1枚ずつプレートを減らしてもらいながら10レップを続けていくのだ。

最終的にプレートが左右1枚ずつになるまで続け、これで1セットの終了だ。

●フォースドネガティブ・レッグエクステンション
ウエイトを上げる動作がポジティブ、下ろす動作がネガティブ。筋肉はネガティブ動作で最も出力レベルが高まり、筋線維も強いダメージを受ける。

この種目ではボトムからトップまでは自力でウエイトを持ち上げるが、トップからボトムに下ろす際は、パートナーが力を加減しながらフットローラーを下方に押し下げる力を加える。トレーニーはウエイトの重量とパートナーの負荷に抵抗しながら、ゆっくり脚を下ろしていく。これで1レップだ。

トップからボトムに下ろす動作には3~5秒かけるようにする。かなり強度の高いやり方だが、パートナーに適切な負荷をかけてもらいながら効果的なネガティブ動作を行おう。

●フォースドネガティブ・レッグカール
先のレッグエクステンションと同じように、レッグカールでもパートナーに負荷を加えてもらいながらフォースドネガティブを行う。

●アイソメトリックホールドを入れたマシン・フラットプレス
マイク・メンツァーの弟のレイがよく行っていた種目だ。ヘビーデューティーは高強度トレーニングとして有名だが、それを行っていたメンツァー兄弟の弟が好んで行っていた種目なので、かなり過酷な種目であることは間違いない。

まずはいつもどおりにフラットプレス(チェストプレスマシン)を限界レップまで行う。休憩を挟まず、パートナーに手伝ってもらい、腕をまっすぐ伸ばしたトップポジションまでバーを移動させ、そこから数センチ下ろした地点で一旦停止をする。力が尽きるまでこの状態を保持する。その後、今度はハンドルを全可動域の中間地点まで下ろして、そこで保持する。さらに限界が来たら、今度はボトムポジションから数センチだけ押し上げた地点で限界まで保持する。つまり、全可動域の中の3地点で限界まで一旦停止をするということだ。

一旦停止(アイソメトリックホールド)を加えたやり方で1レップを終えたら、さらに休みを挟まず、今度はパートナーにバーをトップまで押し上げてもらい、トレーニーはトップからボトムまでのネガティブオンリーの動作を行う。
つまり、1セットの流れとしては以下のようになる。
・限界まで通常のレップスをこなす。
・限界が来たら3地点でアイソメトリックホールドを行う。これは1レップのみ。
・最後にネガティブオンリーで1レップだけ行う。
このやり方で1セットを終えると、胸を抱えてうずくまりたくなるほど胸筋が破裂しそうになるはずだ。

●サイドレイズ
いつもどおりのサイドレイズやり方で限界まで行ったら、パートナーに補助してもらいながら2レップのフォースドレップを行う。

フォースドレップを終えたら、すぐに軽いダンベルに持ち替えてレップを再開する。

軽めのダンベルに持ち替えたら、まずは自力でトップまでダンベルを持ち上げ、トップからボトムまでの下ろす動作ではパートナーに負荷を加えてもらう。トレーニーはダンベルの負荷とパートナーの負荷に抵抗しながらダンベルを丁寧にボトムまで下ろす。

さらに限界が来たら、最後の力を振り絞って、自力でボトムから中間地点までダンベルを持ち上げ、そこで一旦停止したまま保持する。静止できなくなったら終了する。

●ネガティブオンリー・オーバーヘッドプレスマシン
オーバーヘッドプレスマシンを使って、ネガティブレップのみを行う。ボトムからトップまではパートナーに持ち上げてもらい、トップからボトムの動作をトレーニーが自力で行う。

ここでのネガティブレップでは10秒かけてゆっくり下ろしていく。下ろす動作をコントロールできなくなったらそこで終了だ。1レップでも多くのネガティブ動作を行うようにしよう。

●ライイング・レッグレイズ
トレーニーは床にあお向けになり、両脚をそろえて持ち上げる。パートナーはトレーニーをまたぐようにして床に立ち、トレーニーの両脚を床に押し込むようにする。トレーニーはそれに抵抗しながらゆっくり脚を下ろしていく。かかとが床につく直前で次のレップを開始する。トレーニーはパートナーの足首を握るようにすると姿勢が安定する。

●フォースドストレッチ・プルダウン
通常のプルダウンだが、バーがトップポジションに来たら、パートナーはバーにつながったウエイトスタックを下方に押し込むように力を加え、トレーニーの広背筋を強烈にストレッチさせる。この種目はジョン・ミードウが好んで行っていたやり方で、強度を著しく高めることができる。

まずはどのような感覚のものかを確認するために、パートナーは手加減をしながら負荷を加えるようにしよう。様子を見ながら、少しずつ負荷を強くしていくが、やり過ぎないように注意しよう。

●ネガティブオンリー・チンアップ
オーバーヘッドプレスと同じ要領でチンアップもネガティブオンリーで行ってみよう。

パートナーはトレーニーの体をトップポジションまで一気に押し上げる。トップからボトムまで体を下ろすネガティブ動作はトレーニーが自力で行う。ゆっくりとした動作で、ネガティブによる刺激を背中に受けるように意識しよう。

まとめ

今回紹介したワークアウトの中にはパートナーがいなくてもできる種目もある。しかし、目玉となるのはパートナーが必須の種目であり、これらはトレーニングの強度を劇的に高めてくれる。

深部の筋線維にまで目が覚めるほどの強い刺激を得たいなら、ぜひパートナーを見つけて、ここで紹介したワークアウトに挑戦してみてはどうだろうか。これまでパートナーとトレーニングしたことがないという人は、パートナーの有無の違いを特に痛感できるはずである。

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執筆者:William Litz
カナダのウィニペグで活動する有資格のパーソナルトレーナー。過去10年以上にわたり、フィットネス系雑誌やオンライン雑誌にトレーニング関連の記事を執筆してきた。ボディビルに精通しており、熱狂的なボディビルファンでもある。


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