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「減量」「ダイエット」のために!5つのポイントを理解して効率的に絞ろう!

栄養・サプリメントは減量に欠かせない要素。ここでは、本分野のスペシャリストである桑原弘樹氏に挫折しない、効果的な減量法を教えてもらった。

取材・文:飯塚さき 

1.明確な目標を立てよう

今回は、減量の根本的な原則についてお話ししていきたいと思います。そもそも減量がなぜうまくいかないか。ひとつは、シンプルにつらいからです。楽しいことやワクワクすることは、放っておいてもうまくいきますが、つらいことやきついことは、ハードルが上がります。方法として、どういうサプリメントを飲むか、どんな有酸素運動をするかといったことはありますが、まず考えるべきは、どうやってつらさのハードルを下げるかです。特にビギナーの人は、そこの努力をしておくと、思いのほか例年以上に頑張れます。
では、いかにつらさをなくすか。ひとつは、明確な目標を立てることです。目標を立てたからといってつらくなくなるわけではないのですが、明らかに達成率が上がります。目標が明確であればあるほど、脳はそれを実現しようと動き出すので、より高い次元で実現できます。例えば、高校球児がなぜあれだけつらい練習に耐えられるかといえば、それは甲子園に出たいという明確な目標があるからです。受験生が、寝る間も惜しんで取り組む勉強も、受験する学校が決まっているから頑張れること。もっというと、結婚式に向けての花嫁さんの美への追及もそうです。お金に余裕があるなしにかかわらず、ダイエットをしたりエステに行ったりしてきれいにするのは、結婚式という目標があるからであって、それが結婚後10年も続くわけではありません。
減量も同じく、まずは明確な目標を作ること。コンテストに出るというのは明確な目標ですから、ダイエットの成功確率を上げることになります。そこからさらに上を目指すなら、入賞する、3位以内に入るなど、さらに目標を明確にしていくと、成功確率を高められます。

2.プレ減量期間を作ろう

もうひとつ、そもそもなぜ減量がつらいかを考えてみましょう。お腹が空くからという理由もありますが、1日のうちでお腹が空くシーンはたくさんあります。飢餓の歴史を背負った人類にとって、空腹はつらいメッセージになるので楽しくはないはずですが、だからといって日々空腹は経験していることでもあります。
減量中は、カロリーを含め様々な栄養素を制限することになります。すると、ATP(エネルギー)を作る効率が落ちます。大きな栄養素という点では脂質・糖質などを抑えて、全体の栄養バランスを意図的に崩していますし、逆にタンパク質はそれを補うかのように大量に摂取をしなくてはなりません。減量をしていくうえではやむを得ない、ある意味正しい取り組みではありますが、これは確実にATP産生にはマイナスに働いています。つまりエネルギーが作られにくい状況になっているのです。このATPを作る効率を落とすことが、実はつらさの主たる原因です。単にお腹が空いているだけではなく、ATPを作る効率が下がっている。ATPは体内に蓄えておけないので、人は死ぬまでATPを作り続けなくてはなりません。逆に言えば、ATPを作らなくなることは死を意味します。それが、減量のつらさの原因であることを理解しておくといいでしょう。
では、このつらさを取り除くためには何をしたらいいのでしょうか。解決策もあります。私が提案したいのは、「プレ減量期間」を設けることです。全体の減量期間がどれくらいかにもよりますが、およそ2週間~1か月くらいの減量手前の期間を作るのです。減量に入ったからといっていきなりストイックなカロリー制限を始めるのではなく、プレ減量期間ではいったんものすごくバランスのいい食生活をするのです。まずはPFCバランスを整えて、ミネラルもビタミンもしっかりと充足させて、水分をしっかりと取り、睡眠時間もきちんと確保するようにします。それによって最大限ATPを作りやすい状態を作ってやるのです。
PFCバランスとは三大栄養素のバランスのことですが、いまは「エネルギー産生栄養素バランス」と呼ぶようになりました。一見、長くて分かりにくい名称のように感じるかもしれませんが、エネルギー産生がされやすいバランスであるという本来の意味を表しているのです。本格的な減量に入ると代謝が下がり、結果としてATPを作る効率も落ちますが、プレ減量期間を設けてしっかりとそこの部分の底上げしておくと、減量突入時においては代謝の高いときの勢いで入っていけるので、直後の効果が出やすくなり、ひいては結果が見えることでモチベーションも上がってくれるでしょう。
脂質や糖質を抑えて、いきなりある日を境に本格的な減量に入る人もいますが、必ずしもオフに代謝の高い状態でいるとは限りません。トップビルダーのようにオフから食生活に最新の注意を払い、ATP産生がされやすい状況を作っている場合にはいきなりの減量は問題ありませんが、多くのケースを見る限りでは一度理想の食生活にもっていき、そこから本格的な減量に入ることが望ましいでしょう。結果として減量期間は予定よりも2週間~1ケ月多めに計画しておくといいということになります。

◆プチアドバイス➀
プレ減量期間はより代謝を上げておこうという試みですが、ここに取り入れておくと良いルーチンがあります。ひとつは少しだけ早起きをして起床時にグルタミンを100CC程の水で飲む事です。グルタミンは非必須アミノ酸ではありますが、小腸のエネルギー源となったり胃粘膜の修復にも効果があるアミノ酸です。実際、胃薬などにもしばしば配合されているほどです。減量時にグルタミンを飲むのは、筋肉の分解を防ぎたいということからアンチカタボリック(抗異化作用)を期待してというケースが多いかと思いますが、(もちろんそれも間違いではありませんが)むしろ内臓を活発化させて代謝を上げるという効果に着目するといいと思います。起床時は起きている間の中ではもっとも代謝が低いタイミングなので、グルタミンを飲むタイミングとしてもうってつけなのです。
そしてもうひとつ、肩甲骨を動かすエクササイズをしてみてください。両手を前後にスイングさせたり、あるいは身体の前でクロスさせたりすれば、自然と肩甲骨が動かされます。ここには褐色脂肪細胞という細胞があって、代謝をあげて脂肪の燃焼を促進させる効果があります。もちろん朝からウォーキングをしたり、軽い朝トレなども効果がありますが、疲労の問題や継続性の事を考えるとあまり意識を高くもってやるエクササイズでないほうがむしろよかったりします。
至って小さな努力ですので、当たり前の行為として、すなわち朝のルーチンとして習慣化させていければ塵も積もれば山となる方式で少しずつ減量のリータンを大きくしてくれると思います。

3.計画的に減量しよう 

続いての減量の原則は、いかに計画的に行うか!ということです。ある日突然始める、頭打ちがきてしまったから急に何かやり方を変えてみる、停滞期に入ると焦って色々な人にアドバイスをもらって、あれやこれや試していくというケースを見かけますが、残念ながらまず失敗します。やり方については、例えば今年はこの人のやり方でいくんだと決めたら、貫き通さないといけません(もちろん信頼できる人のやり方でなくてはなりませんが)。
減量は山登りと似ていてやり方はひとつではなく、いくつものルートがあります。Aのルートで山を登り始めたのに、急にBのルートに変えたら、なかなか山頂にたどり着けませんよね。それは、言い換えれば計画性がないということ。船頭多くして船山に上るという諺がありますが、減量で失敗する典型的なケースかもしれません。
脂質カットをしていて停滞期に入ってしまった。我慢できずに糖質制限で上手くいっている人のアドバイスを求め、糖質制限を始める。最終段階に入って塩分カットをし始めたけれど自分のイメージのようにうまく仕上がっていかない。すると不安になって、普段塩分カットを取り入れていない人の意見を聞いて塩分カットを中止する。これは何が正しいかという問題ではなく、効果が現れるのにはある程度の時間を要するという事と、どんな取り組みも身体が適応した時点で一定の停滞期が訪れるという点を理解した上で取り組んでいく必要があるという事です。
減量は計画的に行うことと、そのなかで、プレ減量のように、PFCバランス、睡眠、水分などを整える期間をつくることが大切です。計画性に加えて、自分がもっている減量の「カード」をいっぺんに出さないこともお勧めします。停滞期に入ったからといって、ひたすら耐えるという意味ではないのです。当然、停滞期を想定していくつかのカードを準備していく必要がありますが、これを一度にすべて出してしまわないという事も計画的という原則に含まれます。
ビギナーの方は、あれもこれも我慢して、あれもこれも頑張ってと、一気にやってしまう傾向があります。しかし、必ず身体は適応して停滞します。減量の場合は、糖質も脂質も抑えて、トレーニングも有酸素運動も頑張ってと、いっぺんにやると、身体に大きな負荷がかかってしまいます。さらに、頭打ちがきたときにもう開ける引き出しがなくなって終わってしまうのです。そこで、例えば有酸素運動は最初はやらないでおいて、ほかのカードで取り組んで、減量の後半から有酸素運動を取り入れるとか、カードを小出しにしていかないと、後からやることがなくなってしまいます。
減量を進めていけば必ず途中何度もの停滞期が訪れます。これは減量という負荷に身体が適応した合図でもありますから、その時点で新たな効果的な負荷を与えていかなくてはならないのです。チートディなどはその一例とも言えます。計画性の元、このあたりで停滞したら有酸素を始めるとか、このあたりから週に一回のチートディを導入するとか、はたまたサプリメントをこのあたりで投入するなど、計画性をもったうえでカードを温存しながら進めていってください。

4.メカニズムを理解しよう

もう一つのコツは、メカニズムを理解すること。作用機序といいますが、例えばサプリメントにしてもなんのためにそれを飲むのか、なぜこれが筋肉の分解を抑えるのか、どの成分がどんな作用機序で働いてくれるのかを理解しましょう。トレーニングも一緒です。なぜこの類のウエイトをするのか、有酸素をするのか。自分が取り組むすべてのことをなるべく理解した上で行うと、不思議なことにつらさが軽減されます。普通だったら「やりたくないな」と思うことも、やる理由がわかればやる気が出るからです。理解できれば、前向きな気持ちになるし、飲み忘れもなくなり、自分なりのチェックポイントも見えてきます。
ボディビルは最近でこそSNSなどの影響もあって随分と情報を手にしやすくなりましたが、以前はボディビルジムで諸先輩や会長から指導を受けなくては何をやっていいのか分からない世界でもありました。それはトレーニングのみならず、減量にしても同様です。単に体重を落とすという減量ではなく、見映えを最大限によくするための減量でもあり、またその見映えというもの世間一般のいい身体という次元ではなく大会当日に最大限見映えするようにと、実にマニアックな世界でもあります。
それが故に一般的なマニュアルや参考書的なものはほとんど存在せず、結果として経験者から教えを乞うという流れになっていました。それはそれで大変意義深いのですが、気を付けなくてはいけないのはメカニズムを理解しないまま、言われたからやるというケースが生まれる点です。計画性ともかかわってきますが、なぜそれをするのかという理由を自分なりに理解して納得して取り組む事が好結果にもつながっていきます。

5.睡眠を十分取ろう

最後は睡眠。昼寝も含めて、睡眠をどれだけ味方につけるかが大切です。睡眠をとることのメリットは、大きく分けて2つあります。ATPをしっかりと作ることと、疲労をとることです。減量は、最後の最後までいくと、我慢比べ的な様相を呈する場合がありますが、そうすると失敗の確率があがっていきます。
減量がうまくいった人に聞くと、最後もつらくなかったと言うものです。あるいは減量がうまくいったときは、思ったよりもつらくなかったという感想を聞きます。これは代謝が高いままで、疲労が溜まりにくく、いい循環になっていることが考えられます。毎日、これからトレーニングするぞというときに、前向きに頑張れて楽しめているのでしょう。
逆に、我慢しなきゃいけないと思うと、自ら疲れる方向にいってしまいます。特に減量のときは気をつけてください。最後の最後で敵になるのは疲労です。睡眠を上手に味方につけると、溜まった疲労がリセットされて、次の日も元気に活動できます。

◆プチアドバイス②
睡眠には脂肪を燃やしてくれるという実に嬉しい効果もあります。
この効果を最大限に発揮するためには空腹という状態で睡眠に入る事です。では何をもって空腹とするのかですが、厳密な意味においての空腹ではありませんがざっと2時間カロリーのあるものを食べなければ空腹に近くなりますので、減量に入った際には睡眠から逆算して2時間(理想は3時間)前になったらカロリーの摂取は控える事です。
カタボリックを抑える目的で就寝前にプロテインを飲む人もいるかと思いますが、残念ながらプロテイン摂取は空腹という条件を破ってしまう事になります。就寝中のカタボリックが心配な場合は、アミノ酸で代替するといいでしょう。就寝前には起床時と同様にグルタミンを飲むといいですし、プロテインの代わりであればEAA(必須アミノ酸)がお勧めです。
空腹で寝るという事も、減量に入った際のルーチンに取り入れるといいでしょう。

サプリメントのススメ

サプリメントは頼るのではなく活用するというのが鉄則ではありますが、やはり減量期のサプリメントは心強い味方になりますし、カードのひとつにもなります。
まずサプリメントでいうと、ファットバーン系を活用するといいと思います。これは、先ほどお話しした小出しの引き出しのひとつとして持っておいてください。その上で、減量期の前半から摂ったほうがいいと思います。大概のファットバーン系の素材や成分は、その効果を測定するときにBMIが高めの人で設定しています。体脂肪率が一桁で、さらにもうひと絞りしたい人が飲んでも、残念ながらそこまで効かないのです。効かせるためには、自分のなかで最もオフに近い状態のときのほうが、効果は高く出ます。つまりファットバーン系のサプリメントは前半型。ただし、複数飲む場合にはここのタイミングで全部飲むのではなく、それ以降まで摂っておきましょう。
では、体脂肪率が一桁になったら何を飲めばいいのかですが、ひとつお勧めなのはエルゴジェニック・エイド的な効果をもつカフェインの類はいいかもしれません。またカフェインと非常に相性のいいHCAは、セットにして中盤~後半にとっておくサプリメントの組み合わせかもしれませんので、頭打ちになったときに摂っておいてもいいでしょう。もうひとつ、ファットバーン系以外のサプリメントも大切です。減量中は、脂肪を落とそう、体重を減らそうとそちらへ意識がいきますが実は非常に疲労が溜まります。摂取カロリーが減り、栄養素のバランスが崩れているにもかかわらず、身体は動かして消費カロリーは上がっているわけです。そうすると、活性酸素も増えてしまってますます効率が悪い。
そこで、これは個人的なアドバイスですが、ヘム鉄と還元型CoQ10をお勧めします。作用機序はまちまちですが、どちらもATPを作りやすくする栄養素なので、減量時のようにエネルギーが足りないときに向いています。これは、減量期間中ずっと摂ってもいいかもしれません。次の引き出しということではなく、減量に入ったら、その疲れが押し寄せる前に準備しておくイメージです。もしよかったら試してみてください。
最後に、減量中でも筋肉への意識を大切にしてください。減量中は、どうしても意識が体重や脂肪を落とすことにいってしまいます。しかし、体内ではアナボリックとカタボリックは常に連動していて、それがうまく回らなくなると、筋肉が犠牲になり、ガリガリな印象に仕上がってしまいます。ですから、減量に入ったときこそ、筋肉の同化(アナボリック)に意識を向けておくこと。脂肪だけに意識が行くか筋肉にも意識が行くかでは、最終的に大きな違いが出てきます。筋肉を維持するために、BCAA、HMBなどを取り入れるのもいいでしょう。HMBはバルクアップよりも減量のときに入れたほうがいいと思うくらいです。

◆プチアドバイス③
今回は減量時の原則というテーマにつきサプリメントの詳細については触れませんでしたが、減量時においては特にトレーニングに絡めてのカロリーも含めた栄養摂取が重要になります。そこへの意識のギアをひとつ上げていってください。またそこではサプリメントが非常に役に立つはずです。
一例をあげれば、トレ前にファットバーン系、EAA、トレ中にCCD+BCAA、トレ後にEAA+エナジージェル(MDなど)+ホエイプロテイン、といった具合です。


くわばら・ひろき
1961年4月6日生まれ。競技やプロ・アマチュアといった垣根を越えるコンディショニング情報の提供を目指し、活動している「桑原塾」を主宰。江崎グリコで、スポーツサプリメントブランド「パワープロダクション」を立ち上げ、これまで世に送り出された、全アイテムの企画・開発に携わる。


飯塚さき
1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーランスの記者として『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(報知新聞社)、『IRONMAN』(フィットネススポーツ)、スポーツ庁広報ウェブマガジン『Deportare』などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。

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