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「90分を超えるようなトレーニングはテストステロンレベルが低下する」トレーニングを行う上で最低限必要なこと

週どのくらいトレーニングすればいいのか、どんな内容が効果的なのか。トレーニーなら知っておきたい疑問の数々をボディビル世界チャンピオンの鈴木雅選手に答えてもらった。

取材・文:藤本かずまさ 撮影:中島康介(大会写真)

Q:トレーニング時間が長すぎることのデメリットってありますか?

A:私たちの身体では常に筋肉を合成する作用(同化作用=アナボリック)と分解する作用(異化作用=カタボリック)が起こっています。ハードなトレーニングを開始すると、徐々に同化作用が高まり、約20分ほど経過したあたりから同化作用のピークになります。それはトレーニング開始後40分後から60分後ほどまで続くと言われています。そこから今度は次第に異化作用に傾いていきます。60分を大幅に超えるトレーニングが無駄だというわけではありませんが、筋肉を発達させるという面では効率は悪いと考えられます。
それに加えてトレーニング時間が90分を超えたあたりから、テストステロンのレベルが落ちてくると言われています。テストステロンとは筋肉の発達に大きく関わる男性ホルモンで、そのレベルが低下するとなると、90分を超える長いトレーニングはデメリットがあると考えられます。
また、トレーニング時間が長くなると、集中力も低下してくるはずです。集中力の低下は、当然のことながらトレーニングの質の低下を招きます。

Q:あと1レップ多く挙げるには精神力しかないのですか?

A:限界値というものは人それぞれです。また、トレーニングというものは他人と比べるものではなく、自分自身をアップデートしていくものです。
前回のトレーニングよりも回数だったり重さだったり感覚だったりを向上させていけば筋肉は発達していきます。前回8回しか挙げられなかったとしたら次は9回を目指すなど、自分自身を更新していくことが大事です。

Q:バーベルとダンベル、どっちがいいのですか?

A:どちらにもメリットとデメリットがあります。まずバーベルのメリットは、ダンベルほどバランスを取る必要がありません。よって挙上重量を伸ばしていきやすいと言えます。また、バーベルは細かく重さを調整できます。例えばベンチプレスとダンベルプレスを比較した場合、ダンベルでは2㎏もしくは1kg刻みでダンベルの重さが上がっていくと思います。ダンベルは2つ持って行うので、最低でも2kg刻みで上げていくことになります。バーベルの場合は500gから上げることが可能です。一気に重量を上げるのではなく、筋発達に必要なだけの微増な負荷を与えられるのがバーベルのいいところです。
ダンベルのメリットはある程度、軌道を自分で調整できます。また、自分の関節にとって負担のかからない角度で動かすことができます。例えばベンチプレスの場合は肩関節が内旋した状態で固定され、肩を痛めてしまう場合もあります。ダンベルの場合は肩関節に負担がかかりづらい持ち方にもできます。関節に負担がかからず、軌道を自分で調整して対象筋を狙いやすいのがダンベルのメリットです。

Q:プレスとフライのトレーニング効果の違いはありますか?

A:ダンベルプレスとダンベルフライを比較した場合、ダンベルプレスは親指同士が向き合うオーバーグリップでダンベルを握りプレス動作を行います。これは胸に対してストレッチがかかりづらく、どちらかといえば押す動作のほうが力を発揮しやすいです。そのため、重量を伸ばしていくには適しています。
ダンベルフライは手のひらが向き合うパラレルグリップでダンベルを保持します。これは胸をストレッチしやすく、ダンベルを下ろしたところから途中まで上げたポジション(中間位)までの刺激が強くなります。
特に胸の筋肉はストレッチをすると、筋発達に必要な筋破壊が起こりやすいと言われています。重量を伸ばすダンベルプレス、筋破壊を狙ったダンベルフライを並行してメニューに組み込んでいいと思います。なお、プレス系種目はコンパウンド種目と言われていて、ダンベルプレスでは上腕三頭筋や三角筋前部も動員されます。つまり、動員される筋肉が多い、力をしっかりと出せる種目です。なので、両方をやる場合はプレス系を先に行ったほうがいいでしょう。そのあとにダンベルフライで胸を的確に刺激していくという順番が効率がいいと思います。

Q:マシンとフリーウエイト、トレーニング効果は違いますか?

A:これもそれぞれにメリットとデメリットがあります。マシンは対象筋を意識しやすいというのがメリットです。一方、フリーウエイトのトレーニングは、例えば上肢の種目ならインナーマッスルを使って肩の関節を安定させるなど、「安定させる」という要素があるため、その分筋肉の動員数が多くなります。ですので、どちらか一方だけをやるというよりも、例えばフリーウエイトで意識しづらい部位はマシンを使うなど、両方を行ったほうが効果は出しやすいです。これからトレーニングを始めるという初心者の方であれば、最初はマシンで筋肉の動かし方を覚えて、それが安定してきたらフリーウエイトに移っていくのがいいと思います。


鈴木 雅(すずき・まさし)
1980年12月4日生まれ。福島県出身。身長167cm、体重80kg ~83kg。株式会社THINKフィットネス勤務。ゴールドジム事業部、トレーニング研究所所長。2004年にボディビルコンテストに初出場。翌2005年、デビュー2年目にして東京選手権大会で優勝。2010年からJBBF日本選手権で優勝を重ね、2018年に9連覇を達成。2016年にはアーノルドクラシック・アマチュア選手権80㎏級、世界選手権80㎏級と2つの世界大会でも優勝を果たした。DMM オンラインサロン“ 鈴木雅塾”は好評を博している。


執筆者:藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。

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