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【筋トレ1分コラム】呼吸と胸郭でショルダープレスのトレーニング効果が変わる!

ボディビル世界チャンピオンの鈴木雅選手(撮影:北岡一浩)ゴールドジムアドバンストレーナーでボディビル世界チャンピオンの鈴木雅選手がトレーニングをひも解いていくIRONMAN誌の人気連載『トレーニングアップデート術』から、1分で読めるトレーニングワンポイント解説を紹介するこのコーナー。今回は「呼吸」とトレーニングの関係と、その活用法を解説します。無関係のように思えますが、しっかりと呼吸をすることで、体づくりにとってのさまざまなメリットを得られます。

【写真】鈴木雅選手ほか、歴代のボディビル日本チャンピオン

今回の「トレーニングアップデート術」連載は筋肉からではなく、骨格、骨からの筋肉へのアプローチになります。筋肉はそのほとんどが骨からつながっており、筋肉が伸び縮みすることで関節の動きにおける伸展収縮が可能となり、強度が高くなります。今回のテーマは「呼吸と胸郭」です。

「呼吸」にはさまざまな役割があります。もちろんそれは生きるための手段であり、他にも中枢神経の活性化(脳のニューロンの活性化)、自律神経のコントロール、血圧の急な上昇の緩和などなど。中枢神経が活性化すると酸素が脳に行き渡るので脳が活性化します。

神経系が活性化すると、挙上重量が上がっていきます。自律神経のコントロール、これは交感神経と副交感神経のバランスですが、交感神経が優位なときはアドレナリンを上げて脂肪燃焼を促したり、気持ちや体が活動的になったりします。副交感神経が優位なときは、体は回復へと向かいます。また、例えば興奮した状態でスクワットをするなど、より高重量を扱うという点ではいいかもしれませんが、筋肉の発達にはあまり結びつきません。落ちついて動作をしないと、主導筋に負荷は乗ってきません。しっかりと呼吸ができるということは、体づくりにとってメリットがあります。

今回は、呼吸が体幹部(肋骨に付着している筋肉)の伸展収縮、さらには肩関節や股関節の動きにまで影響すること、またそれらのトレーニングへの活用方法を解説していきます。呼吸器である肺は胸郭で覆われています。胸郭は胸骨、肋骨などで構成され、それらは広背筋や腹直筋などアウターの筋肉ともつながっていますが、呼吸のときに働く筋肉は肋骨の中にある内・外肋間筋、それを補助して働く胸鎖乳突筋、斜角筋、さらに呼吸筋として横隔膜などがあります。

呼吸で横隔膜をコントロールできるということは、骨盤底筋群も働きやすくなるということになります。また肋骨の開閉は腹直筋、広背筋、大胸筋などにも密接に関わっており、胸郭は骨盤と並ぶ体幹部の軸と言えます。メカニズムとしては、息を吐くと横隔膜が上がって肋骨が閉まり、腹圧をかけやすくなります。息を吸うと横隔膜が下がって肋骨が開き、腹圧はかけづらくなりますが、各筋をストレッチしやすくなります。

肋骨は、閉めるだけではなく、開閉の両方をできないといけません。「吐く」「吸う」によってコントロールすることが大切です。実際にアウターの筋肉は強いが骨盤、股関節など体の機能が弱く、肋骨が開いている人は多いです。

特にコンテストに出場している選手には広背筋、殿筋が強く背面の筋肉に引っ張られて肋骨が開きやすい傾向にあります。肋骨が開くと股関節は外転、外旋します。こういった現象が顕著に表れるのがデッドリフトです。レップを重ねるたびに、しだいに肋骨が開いていきます。

肋骨が開くと腹圧をかけづらくなり、体幹部に効かせることができず、また腰を痛める危険性もあります。ショルダープレスでも、負荷の重さに押されて肋骨が開いていくことがあります。

これまでに解説した「骨盤」「股関節」、そして今回の「呼吸」で肋骨の開閉をコントロールできるようになると、トレーニングの“効き”も変わってきます。

それではショルダープレスによる動作の違いをみてみましょう。

ショルダープレスでの違い

ショルダープレスによる動作の違い

・肋骨を閉めた状態
しっかりと肘を伸ばせて、フィニッシュで三角筋を収縮できる。

・肋骨が開いた状態
肩甲骨が寄って肘をしっかりと伸ばすことができず、フィニッシュでの負荷が抜ける。

鈴木 雅(すずき・まさし)
1980年12月4日生まれ。福島県出身。身長167cm、体重80kg ~83kg。株式会社THINKフィットネス勤務。ゴールドジム事業部、トレーニング研究所所長。2004年にボディビルコンテストに初出場。翌2005年、デビュー2年目にして東京選手権大会で優勝。2010年からJBBF日本選手権で優勝を重ね、2018年に9連覇を達成。2016年にはアーノルドクラシック・アマチュア選手権80㎏級、世界選手権80㎏級と2つの世界大会でも優勝を果たした。

取材:藤本かずまさ 撮影:北岡一浩 構成:FITNESS LOVE編集部


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